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検索しても出てこない:Anizine

いまだに「SNSで宣伝したりするのってカッコ悪いでしょ」「興味がないからやってない」という言葉を、特に中年の人々から聞くことがあります。自分は自分のことをするだけなので他人が何をどう考えていようがいいのですが現状認識としてメモっておきます。以前、若い人と話したときのこと。広告業界では名の知られた人のことを彼は、聞いたことないですね、と言いました。クラシックをやっているのにショパンの名前がリストに載っていないくらいのラヴェルの発言に衝撃を受けました。

検索で育ってきた若い編集者やアートディレクターが、ググっても何も出てこない人を「存在が怪しい人」「無名な人」だと思ってしまうのも無理はありません。彼らの判断材料はそこにしかないからです。wikipediaを読んでいると、誰もが知っているような昔の芸術家がほんの数十行で、新人声優のページにはその何十倍もの記述があったりします。これは記録された時代のせいと、書き手の趣味とインターネットの親和性というか、「それについて書きたい人が多いから増える」ということで、ネット的な人についてネット的な人が語る、という単純な事実です。

そうなると「ネットでの露出のみを戦略的に考えている人」について、実際に持っているその人の能力を間違って信用してしまう弊害も生まれてきます。自分が属している狭い業界だけでの評価は、広く外部には伝わりませんから、私たちは製薬業界、配管業界、製鉄業界では名の知られたカリスマのことを一人も知りません。たとえば演劇業界で有名な人も一般には知られていませんが、観客にそんなことは関係ありません。そこで起きる誤解は「これだけ評価があるんだから黙っていても客は来るだろう」という奢りに直結してしまうのです。

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Anizine

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写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。