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Anizine

写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。
¥500 / 月
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#watanabeani

おじさんと小籠包:Anizine

以前、イタリア、フランスでの仕事をしていたときは、4月と11月にロケに行っていた。だからその時期になるとFacebookで「何年前の今日」と、どちらかの写真が浮上することになる。4月と11月はヨーロッパの気候がいいときで、写真を見るとロケ場所の風景やそこで会った人のことを懐かしく思い出す。 最初にヨーロッパに行ったのはちょうど30年前くらいか。仕事でロンドンやアバディーンなどに行った。それから帰ってきてすぐに友人とロンドン、パリに遊びに行った。フランスはまだフランを使ってい

◎支援ご報告:Anizine

コロナで隔離中の人へ 10,000円 「青山ブックセンターで本を買おう」 5,000円×10名 50,000円 合計 60,000円を「Anizine」の定期購読料から支援しました。 定期購読メンバーの皆さん、いつもありがとうございます。 note「Anizine」 https://note.mu/aniwatanabe/m/m27b0f7a7a5cd

椅子の数が決まっている:Anizine

プロ野球の一軍選手は約300人、と聞いたことがある。つまり、300人の優秀な選手が新たに出てくれば、今の選手のすべてが職を失う可能性もあり得る。 こういう「椅子の数が決まっている仕事」がある一方で、いくら後発が増えても影響のない職業もある。松任谷由実、サザンオールスターズ、山下達郎、井上陽水さんなどは、どんなに新しい歌手やバンドが出てきてもその地位が揺るがない。いくら選択肢が増えても、音楽の市場には座るべき新しい椅子が用意される。 だから俺は周囲の若者が写真やデザインをや

ままならず生きていく:Anizine

先に書いておきます。 この話の結論は、Anizine定期購読メンバーに向けてだけ書くので、メンバー以外からのご意見はエレガントに無視します。 電車で隣の人の新聞が読めないからと言って、買っていない人が「もっとこっちに向けろ」と要求できるでしょうか。そう言われて断るのは「情報にお金を払っていない人」への排除や差別をしているのではありません。正当な権利ではないからです。ここまではご理解いただけると思います。 というように、比喩や単純な例を持ち出すと、意図が理解できずに表面的

知らない人と話す:Anizine

前にも書いたことがあるんですが、俺はかなりの人見知りでした。それを若い頃に意識的に克服したんですが、いまだに根っこは同じままです。 この克服にはとても単純なメソッドがあって、つまり社交的な人を演じる方法です。演じていると思うと責任が軽く、気が楽になります。人の性格なんてそう簡単には変わるものじゃありませんけど、演じる能力は訓練で上げることができる。 もしあなたが人見知りなら、この方法を試してみてください。うまくいかなくても元のままですし、何かのきっかけがつかめれば少しは気

小学生の頃と同じかな:Anizine

中学生くらいの時には、もうすぐ大人になってしまうという焦りを感じたものだ。ぼんやりと人生をサボって時間をやり過ごしているだけでよかったのが、子供という居心地のいい独房から釈放されるみたいに「責任が発生する大人」というシャバが目の前に近づいてくるのを恐れた。 子どもの頃は自分が大人になるなんて考えもしなかった。 そしてそれは57歳という、何食わぬ顔をして60歳に近いポジションにいる今でもまったく同じだ。50歳を過ぎ「映画の料金が割引になりますよ」とチケット売り場で知らされた

本を買おうぜ、第二弾:Anizine

1/11 追記 10人のサポートが終わりました。ありがとうございます! さっき、青山ブックセンターに行ってきました。4冊買いましたが、お客さんは緊急事態宣言の影響もあるのか、あまり多くはありませんでした。 俺は20代の初めから、毎日のように六本木の青山ブックセンターに通っていました。今はないですけど、渋谷の仕事場の近所に本店があります。その頃は自分が書いた本がそこで売られるとは夢にも思っていませんでしたけど、やはり、書店はずっとあり続けて欲しいのです。 Anizineの

贈り物を捨てる罪:Anizine

あるクリスチャンから「あなたはクリスチャンですか」と聞かれたことがある。その人はこのnoteを読んでくれているんだけど、俺がいつも書いていることの基盤が、キリスト教にあるのではないかと思ったそうだ。 子どもの頃に近所の教会に通っていた。難しくて意味はわからなかったけど、そこで聞く話は睡眠学習のように自分の考えの基礎を作っていたんじゃないかといまさら気づいた。外国に行くと特別な意識もなく、必ず教会の扉を開けて、その厳かな雰囲気に浸りたくなることも幼い頃からの習慣なのだろう。

定期購読マガジンについて。

あるベテラン俳優の撮影をしたときのこと。インタビューがある場合は、その人の話を聞いて、話している表情や雰囲気を知ったあとに撮影することにしているんですが、その日はどうしても別の撮影に行かなければいけなかったので、先に撮らせてもらうことにしました。 少しだけ話してから撮影。撮り終わって、失礼ですがインタビューを聞かずに失礼します、と伝えると、その俳優は「これからすごく面白い話をしようと思っていたのにな」とニッコリして言います。本当はもちろんお話を聞きたかったんですが、そのいた

◎支援ご報告:Anizine

パフォーマーのnote記事にサポート 10,000円 パソコンを始める保育園児に 18000円 美容に興味のある小学生へ化粧道具 50000円 パフォーマーのnote記事にサポート 10000円 本を出版した著者へのお祝い 10000円 山形の高校生「AI部」のクラウドファンディングへ 10000円 留学中の中学生へ 10000円 シリア難民の子どもたちのクラウドファンディングへ 10000円 写真展を開催したフォトグラファーに 33000円 note記事へ

文章をお金にする:Anizine

文章を書いてお金をもらうのがプロの作家なのだとしたら、俺はどうなんだろう、と考えることがある。 俺の仕事は写真やデザインなんだけど、いや、もうすでに変なことになってしまっている。この業界では写真かデザインしかやらないのが「普通」なのだ。まあどっちにしても、その専門分野で超一流ってことじゃないから聞き流してもらえばいい。 俺は会社に勤めていたときにはデザインをしていた。CMの演出もやっていたからこれもまたややこしい。面白そうでやりたいことは職種の垣根など無視してやればいいと

向かいの部屋:Anizine

ひとり暮らしの部屋。引っ越してきて数日が経った。 このフロアには4つの部屋がある。僕の部屋はA。 BとC、ふたつの部屋には挨拶にいき、住人と会った。向かいの部屋「D」だけがずっと留守なのか、インターホンを押しても返事がない。 深夜、コンビニに行こうと思ってドアを開けると、「D」のドアの奥からガチャリと音がした。開けようとしたがやめたような音。エレベーターを待つ間、様子を見ていたが人が出てくる気配はない。 翌日の夜、また同じことが起きた。僕がドアを開けるタイミングで向こ

変化のない変化:Anizine

この時期になると「今年はこんな一年だった」と書きたくなるものですが、2020年に関して言えば、世界中の人々が同じような感想を持つんじゃないでしょうか。 休日に昼寝をしていたつもりが気がついたら夜だった、ような時間経過。 何もしていないのに一年が終わるような焦燥感があります。時間は天体の動きに合わせて同じように過ぎていきますけど、私たちはなすべきことができぬまま、家の中にいました。数年の服役を体験したとすれば、こんな気持ちなのかもしれません。我々は今年の初めから自由を奪われ

空気の立方体:Anizine

前回の『ロバート・ツルッパゲとの対話』は27の断片からできている。どの項目にも関連はなく、共通点があるとすればその目次の中身を書いたのは俺だということくらいだ。長い無駄話をしているように話はあっちに飛びこっちに戻り、最終的には「いい時間つぶしだったけど、何の話をしたかは憶えていないね」という感じの本。 本当は順を追って丁寧に整合性を取ることもできた。でもそうしなかったのは「対話」にしたかったからだ。友だちと深夜のファミレスで起承転結の整った話をするヤツはいない。そんなヤツが