桐生くん:Anizine(無料記事)
桐生くんというガキ大将がいた。いわゆる「ジャイアン」だ。彼は僕らの街ではちょっと知られたお金持ちの子で、大人たちはその家を「桐生財閥」と呼んでいた。今となっては、「あれが財閥かよ」と冷静に思うのだが、田舎というのは、羽振りのいいセメント屋の倅が代議士になるような狭く古くさい価値観で動いているものだから仕方がない。
桐生くんは僕らの草野球チームのキャプテンでエースだったが、チームメイトにいつも鉄拳制裁をくわえていた。「桑名、なんであそこで盗塁したんだよ。あのあとにケンジがヒッ