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『地球を31周』その4:Anizine

さて次はどこに行こうかな。今のところ行き先に決め手がありません。外国には目的なく行くことがほとんどなので、もともと決め手などないんですけど。昔、ゴールデンウィークの仕事の予定が急に変更になり、10日くらい休みができてしまったのでどこか外国に行こうと思いました。

旅行会社の窓口で聞いてみるとゴールデンウィーク直前でしたから、ParisやNY行きのチケットなどはもうありませんでした。モニタに向かって「あれもない、これもない」と窓口の女性が調べてくれているうちにだんだん悪いなと思い始め、「逆にあるのはどれですか」と聞いてみました。その人はモニタからこちらを向き「ホーチミンならあります」と言います。その一瞬を漫画のコマで喩えると、けっこう大きめだった気がします。

当時はあまりアジア全般に興味がなかったし、ベトナムに遊びに行くという感覚が想像できなかったので一旦は躊躇しましたが、過去の経験からこういう巡り合わせを絶対に断ったらダメだということくらいは知っていました。一度バッターボックスに立ったら、ストライクでもボールでも構わない。ラグビーのボールでもいい。とにかく、来た球を打つのです。

それまで何度もベトナム好きの友人たちから、いかにベトナムがいいかを聞かされてきました。食べ物や人の良さはもちろんですが、それぞれが自分だけの「ベトナムを愛した話」を持っていることから、さぞいい国なんだろうとは思っていました。そこにやっと自分が関わることになった。たまたまチケットが取れるのがそこだけだったという美しい理由で。

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Anizine

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写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。