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Anizine

写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。
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2022年10月の記事一覧

シモキタへ:Anizine

笑うことは知識だと思っている。 たとえば渋谷からタクシーに乗って「新宿駅まで」と言ったとして、運転手のおじさんが「じゃあ大宮経由で行きます」と言ったら、客は「なんでやねん」とツッコむだろう。これが面白いか苛つくかはさておき、「渋谷から新宿への経路に大宮はあり得ない」と知っていなければ、笑うことも怒ることもできない。だから笑いと知識は大きく関係している。 「シモキタの駅前まで」と言って「私、青森出身なんですよ」と返されたときも同じだ。この場合はつまらないボケをかますドライバ

中からの返事:Anizine

デパートのトイレで俺は小をしていたんだけど、大の方のウンコするブースが三つ使用中で、待っていたおじさんが限界寸前の様子。クネクネしている。中からピコピコ音が聞こえてきて「おい、待ってるんだよ。ゲームやってんじゃねえよ」とおじさんは激怒した。 各ブースから「僕やってません」「僕もやってません」と返事が。 最後にゲームをしていたと思われる男はこう言った。

誤解される錬金術:Anizine

ウィンブルドンに出場した選手が空振りばかりしていたらどうだろうか。観客は「練習してから来いよ」と思うはず。という前に、ウィンブルドンのセンターコートに立つことが不可能だ。警備員に止められる。 世の中の経済活動は大きくふたつに分けられる。価値を上乗せする方法と、価値を作り出す方法。上乗せは1000円で仕入れたモノを1500円で売る商売のやり方で、差額の500円から経費を引いたものが利益になる。一方、作り出すやり方はゼロから錬金術のように1500円を生み出す。ウィンブルドンで「

死というもの:Anizine

仲本工事さんが亡くなったという、ドリフ世代にはつらいニュースがありました。病気ならともかく不慮の事故というのは寿命がまだ残っている気がして、ことさら勿体なく感じるものです。 今回はデリケートな話なので定期購読メンバーのみで。

知らないドア:Anizine

それは清潔感があり新しい「中の上」もしくは「上の下」くらいのホテルでの出来事だった。僕は仕事とも言えないような適当な用事でその街にいた。数回は訪れたことのあるアジアの国で、ホテル選びを失敗すると悲惨な目に遭うというのはわかっていたから、まあまあいいホテルを予約した。 滞在中は何も問題はなかった。ただひとつ「知らないドア」をのぞいて。 空港からそれほど遠くないホテルに昼頃着いた。初老の男性が私の予約ステータスと部屋の清掃状況をモニタで見ながら、「まだ時間は早いが彼をチェック

ここだけの秘密を:写真の部屋・Anizine

写真という概念には色々あって、レタッチしないとかトリミングなどけしからんとか、それぞれの正義で話をするものです。でも裏でどんな作業をしようと、一枚の写真を見たときに「何が加工されているか」なんて、見た人にとってはあまり関係ありません。 たとえば、この写真(と言えるかな)の元になった写真をご覧にいれましょうか。けっこう驚きますよ。元のは転載しないでね。

精神の旅:Anizine

大げさなタイトルですが、人と話していて何が一番面白いかというと、「この世には存在しないもの」を知ることだと感じます。 それを想像と呼んでも創造と呼んでもいいんですが、その人の独自の創作が見たいわけです。そうでなければその人本人と話す必要がありません。何かについての情報に詳しい人の話にウンザリするのはそこです。調べたいことがあれば今は情報が溢れていますから、自分で知ることができるのです。 ですから何かに詳しい人の価値はダダ下がりしています。ネットでは超一流の人が解説してくれ

一人旅:Anizine・写真の部屋(無料記事)

浅生鴨さんが一人旅の短編を、平林監督もたまたま一人旅について書いていた。俺も帰ってきたばかりなので書く。 国内もそうだけど、外国に遊びに行くときはできれば一人がいい。俺のスタイルはかなり衝動的なので自分の予定だけで決められた方がラクなのだ。二人のスケジュールを合わせるのも大変なのに4人とか5人ではほぼ無理だ。 行きたい場所も予定せずに行くから、誰かが「せっかく来たんだからあそこに行きたい。3時間で行けるから」などと言われると気絶しそうになる。せっかく、が厄介なのだ。とにか