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Anizine

写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。
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2022年5月の記事一覧

一粒万倍日:Anizine

俺たちが若い頃って、たとえば「一粒万倍日」なんていうのにほとんどの若者が興味を持っていなかったよね。若者の口からその言葉を聞くたびに、なにか自分の能力じゃなくて「神秘的なもの」に頼っている傾向を感じる。お年寄りが宗教や神秘に傾いていくのは人生の機微を知り、自分に状況を打開する物理的なチカラがなくなっていくからだとわかるんだけど、ある頃から若い人の多くが老人趣味(言い方は失敬だけど)のようなものに感化されているように思えてきた。それはどんな変化なんだろう。 誤解がないように言

できあがっている人:Anizine

ある人の投稿を読んでいて「できあがっている人」という言葉が浮かんだ。その人はいつもそうなんだけど、世の中に名の知れた人と会った話ばかりする。それは前からわかっていたのだ。しかし、それを読むことに耐えきれなくなってフォローを外すことにした。

直りかけのレディオ:Anizine

徳永英明さんのあの名曲では、ラジオと言ったりレディオと言ったりしているんだよね。文章なら「表記揺れ」と指摘されて校正されてしまいそうだ。 俺はラジオを聴くのが好きなんだけど、何が魅力なのか考えてみた。数年ほどネットラジオの番組をやっていたことがあって、もうかなり前のことなのに「ラジオ聴いてましたよ」と言われて驚くことがある。土田晃之さんが何かで話していたが、あるラジオ番組のイベントの終了時間が遅く、それに参加するリスナーが終電に乗れないと言ったらしい。土田さんは「じゃあ、う

誰かと地続き:Anizine(無料記事)

こどもの頃から、誰かの熱狂的なファンになったことがない。同級生はジャニーズの誰がいい、あの歌手が素敵などと言っていたが俺にはどうしてもそういう感覚がわからなかった。ソーシャルメディアが発達して以前よりタレントなどとの距離が近くなったことで、よりそこに疑問が生まれている。 過去にいわゆるテレビに出ているような人にアクセスしたことは2回ある。『ビートたけしのオールナイトニッポン』にたまたま一度だけネタ葉書を出したのだが、それが番組で読まれたようで何かが送られてきた記憶がある。読

アポロシアターとYMO:Anizine

本人がこれを読んでいるだろうから、覚悟して書く。 渋谷の路上で声をかけられて振り向くと、若い頃の友人だった。彼とはどうして知り合ったか憶えていないし別の学校だったのだが、藤沢や茅ヶ崎で毎日のように遊んでいた。「中学生の娘ふたりと女房と連休だから東京に来たんだよ」という。今は奥さんの地元に住んでいるらしい。 奥さんたちはH&Mに買い物に行くと言うので俺たちはホテルのカフェで少し話すことにした。懐かしさが徐々に消えていく。「こいつ、こんなにつまらないやつだっただろうか」と感じ

世知甘い:Anizine(無料記事)

今朝、撮影の開始を待っていると、近くの自動販売機におばあさんがやってきた。500円玉を持っているんだけど、釣り銭切れのようで何度入れても戻ってくる。俺は自分の小銭をポケットから出して入れた。おばあさんは「すみませんね」と言いながら缶コーヒーを取り出すと、まだ500円投入にチャレンジしている。そうか。おじいさんか誰かの分も買うのか。俺はもう一度小銭を入れた。 というどうでもいい今朝の話なんだけど、これには伏線がある。 昨日カフェに行ったとき、俺の隣のカウンター席に座った女性