見出し画像

世知甘い:Anizine(無料記事)

今朝、撮影の開始を待っていると、近くの自動販売機におばあさんがやってきた。500円玉を持っているんだけど、釣り銭切れのようで何度入れても戻ってくる。俺は自分の小銭をポケットから出して入れた。おばあさんは「すみませんね」と言いながら缶コーヒーを取り出すと、まだ500円投入にチャレンジしている。そうか。おじいさんか誰かの分も買うのか。俺はもう一度小銭を入れた。

というどうでもいい今朝の話なんだけど、これには伏線がある。

画像1

昨日カフェに行ったとき、俺の隣のカウンター席に座った女性が店員にコーヒーを頼んでから、鞄の中をごそごそしていた。どうやら財布を忘れたみたいだ。PASMOは持っていたので店の人に「これは使えますか」と聞くと「現金のみです」と言われ、ではキャンセルして帰ります、と言って店を出て行った。

俺はそのあとずっと、なぜあそこで素早くその人のコーヒー代を払えなかったんだろう、と後悔した。誰にでもそういう小さい失敗はある。そのときに隣にいる人がチカラを貸すのはとても簡単なことだ。財布を忘れたんだからあなたの自業自得でしょう、と切り捨ててしまうのは世知辛い。世界はもっと世知甘くてもいいじゃないか。店の人が「支払いは次でいいよ」と言ってもいいし、俺や他の人が払ってもよかった。自分に瞬発力がなかったという後悔が心に残っていた。

そのことがあったから、今朝はおばあさんに素早く缶コーヒーを2本渡すことができたのだと思う。よかったよかった。

定期購読マガジン「Anizine
(無料記事は、『今回は無料だけど、定期購読するとこういうことが書いてあるから、マガジンのメンバー登録よろしくね、大人ならわかるよね』という意味です。世の中そんなに甘くないぞ。)

ここから先は

0字

Anizine

¥500 / 月

写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。