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#45保育士虐待事件から考える監視カメラ設置のメリット・デメリット

3人の保育士が虐待で逮捕、園長も隠蔽のため内部告発しないように誓約書まで書かせたという悪質な事件が起きてしまいました。

詳しくはコチラ↓

保育士Youtuberとして有名な、てぃ先生は以前から、監視カメラの設置を推奨していて(厳密には訪問シッターでの推奨ですが、)別件の事件についても以下のように述べています。

しかし、てぃ先生は有名になってしまったがゆえ、このように言わざる得ない立場で、ツイートの内容に関して、同じ保育者として半分賛成、半分反対です💦(元保育士。現在は学童保育指導員)

この記事では、てぃ先生やいろんな保育者の視点、私見なども踏まえて「監視カメラをつけるメリット・デメリット」を解説します。

事件が起きると、防ぐのに必要だ!と感情的にメリットが推奨されやすいという側面があるので、デメリットの方を多く解説していますが、カメラをつける「べき」・つける「べきではない」などの「べき」を推奨したいの訳ではありません。

いろんな視点を伝えることによって、子育てや保育で1番大切な「子どもの最善の利益」を考える大人が少しでも増えたら幸いです😊

監視カメラのメリットは証拠が残ること

防犯に役立つだけでなく、子どもは思いもよらない行動をします。(必ず理由はありますが)

1歳児では噛みつきなどのトラブルが多く起こる年齢です。カメラの記録を元に噛みつきが起きやすいシチュエーションはどんな時か?など保育の改善に使うこともできます。

また、監視カメラが保育士を守るためのツールにもなるというメリットもあります。

監視カメラのデメリット


  • 保育士不足が加速する

  • 発見が逆に遅れる場合もある

  • 保育者と保護者の信頼関係が築きにくくなる

保育士不足が加速し、業界が衰退する


厚生労働省によると、潜在保育士は95万人もいるそうです。(「潜在保育士」とは資格を持つが、働いていない人をいう)

保育の業界は、給料の平均額が他の業界と比べて約10万円少ない、海外に比べて少ない保育者で多くの子を保育しなくてはいけないなど、環境面は良くありません。

どんな理由があろうと虐待は違法ですが、事件が起きた背景には、処遇や環境の劣悪さも関係しています。
子どもを守るための手段の1つとして、カメラの導入は検討すべきことですが
監視カメラ導入を義務化したら、確実に潜在保育士は増え、保育士になりたいと思う学生も減るのは必須です。

子どもや真面目な保育士を守るためのカメラ(盾)が、知らぬ間に矛になる可能性を多く秘めています。

環境問題解決のために、【移動は自転車推奨(規定回数超えると罰金)】・【走行距離税を決定】と国会で決まった場合、国民は手放しで賛成できるでしょうか?

監視カメラをつけることで、事件を防ぎやすくなるが、保育者不足による不安定な運営から事故の増加や質の低下の懸念が考えられます。

発見が逆に遅れる場合もある

「死角に入ればなんでもできる」という指摘があるように、逮捕されるほど本当にヤバい人は隠れてやるようになり、発見が逆に難しくなる懸念もあります。

てぃ先生のツイートにはカメラがあったおかげで「発覚したからカメラの導入を考える必要がある」とは述べていますが、内部告発をしないように誓約書を書かせた園長もいるくらいなので、壊れたと録画を消してしまう可能性もあります。カメラを設置していたのにも関わらず事件が起きてしまったということは、防犯の観点では限定的な効果だということがわかります。

防犯と業界衰退のリスク:どっちを選ぶ⁉︎

てぃ先生は保育園に監視カメラが必要とは言っていない!?

相手の家に訪問するシッターサービスには他の人の目が全くないので監視カメラは必要ではないか?とてぃ先生はシッター会社に提案したことはあるとおっしゃっていました。(シッターサービス業者キッズラインの事件発覚時。事件の概要はコチラ↓)

しかし、保育園や幼稚園に必要とは、2014年発売の本(ほぉ、ここが地球の保育園か)から追っている私でも事件が発覚する前は言っていませんでした。

対策として監視カメラの導入を検討する(視野に入れる)ことは必要だけど、監視カメラ推進派とまでは言えないと私は感じました。

てぃ先生「ちゃんと仕事をしているなら導入すべき」という発言も、なんとなく嫌だから。みられては困る保育者層に対する牽制やこのまま何事もなく過ぎ去ってしまうことを防ぐためという意味が合いが強いと思っています。

保育者と保護者の信頼関係が築きにくくなる

個人的に1番のデメリットは、信頼関係を築きにくくなることです。

信用できない相手に監視カメラは有効です。保護者にとっては安心して預けられる材料になるかもしれませんが

  • クレームが増えて信頼関係が破綻する

  • 保護者同士がギスりそう

などのリスクも同時に発生します。

保育には【信頼関係の構築】と、共に育てているという【共育】の意識を共有することが大切です。

共育の例
①A君のお母さんは色々言ってくるけど、発達が遅れていることで過敏になっているのが原因かもしれないから、お迎え来たら良いエピソードを伝えるようにしよう。(信頼関係があるからこその支援)

②同じクラスのB君といつもケンカして怪我することもあるけど、友達だからケンカもある。怪我は困るけど、息子にとってケンカできる相手は貴重かもしれない。(同じクラスという共に育ち合う仲間としての意識)

要は、「お互い様」の関係を築くのが保育などの福祉の業界では超重要!という一面があります。(だからといって、子どもにリスクを負わせすぎるのはダメ)

子どもの安全第一で監視カメラを設置すると、保育の根幹となるお互い様の精神が破壊される。究極の選択だからこそ、多くの賛否両論があるのだと思います。

あなたは、どう思いますか?

監視カメラの是非に関する私の考え


どう思うか?と聞いておいて、自分の考えを示さないのはどうかと思うので、理由や妥協案などの提案も示して終わりにしたいと思います。

半分賛成・半分反対と冒頭では書きましたが、私の今の環境に置き換えるとしたら反対です。理由は以下の通り。(学童保育支援員)

  • 子どもの適正人数を保っている

  • 人数に対する保育者数は多いが、支援員が総数10人以下と規模が小さい

  • 保育日誌をICT化していて、どんな保育をしているか共有している

逆に初めて勤めた保育園は300人以上園児がいるモンスター保育園で勤めていたら賛成していたと思います。

要は環境次第で、社会保険の適用が従業員の人数によって代わる仕組みのように、規模が大きい保育施設は管理や丁寧な関わりが大変なので監視カメラを義務化するなど、一律ではなくある程度棲み分けると、保育者も保護者もニーズに合わせた園を利用できると思います。

または、入園したばかりの0〜1歳児クラスのみ、SIDS(シズ:乳児突然死症候群)や噛みつきなどのトラブルが起きる可能性が高いので、信頼関係を築くための準備期間として監視カメラを部分的に導入するのが妥協点としてどうか?という想いもあります。

1番恐れていることは分断が進むこと


「モンスターペアレント」という言葉が生まれて久しいですが、今回の事件はいうなれば「モンスターティーチャー」というごく一部のモンスター先生が起こしたもの。モンスターを撃退することを最優先とする対策は、保育の根幹となるお互い様の精神と共育の概念が破壊され、信頼関係は築きづらくなり分断が加速します。

分断が加速して1番影響を受けるのは子どもたち自身です。保育者も人間なので疑われた状態では質の高い保育を維持することは難しく、保育は福祉ではなく子どもをただ預かるだけのサービス業に成り下がることが想像できます。

監視カメラの賛否両論はどちらの意見も気持ちはわかりますが、1番恐れているのは分断が進むことでサービス業に成り下がることです。

Twitterのさまざまな意見まとめ


制度の改善が最優先

「保育業界に自浄作用がない」=監視カメラが必要と言っています。

つまり、根本的な問題は自浄作用がない制度に問題がある。それを改善しない限り、悲しい事件は今後も続くと予想されます。

保育園制度の厳しい現状

東京新聞webより引用

海外と比べると日本は保育士1人に対する子どもを保育する人数が2倍以上のところもあります。しかし、給料面は海外の2分の1程度という、保育者にとって厳しい現状があります。

学童保育制度の厳しい現状


学童保育指導員の配置基準

学童保育の配置基準(2020年)の現状はコチラ↓

ジョブメドレーより引用

保育園は法律として配置基準が定められていますが、学童保育はあくまでも参酌基準(目安)として、2人以上の指導員を配置が好ましいとされています。

指導員が1人という所は、145クラス(0.4%)と数字上では少ないですが、怪我で救急車が必要な時や災害で避難する場合、どうするのでしょうか?😱

学童保育の適正人数の目安は40人

学童保育の人数の統計はコチラ↓

厚生労働省 R2.放課後児童健全育成事業の実施状況より引用

約36%の学童が40人の基準を守れていないことがわかります。
実はこの数字には抜け道があって、単位は別に申請しているけど保育室は隣接していて100人以上の子どもが過ごしているという所も珍しくありません。

学童保育業界の中にいる身としては、約半数は40人の基準を守りたくても守ることができないというのが現状だと感じています。

保育園の制度もヤバいけど、学童保育はもっとヤバい

保育園は法律として基準がありますが、学童保育は参酌基準という法的効力がないまま運営されているというのが学童保育業界の現状です。

抜本的な制度改革が必要

保育園と学童を比較しましたが、どちらの改革が必要か?という話ではなく、保育・教育業界には抜本的な改革が必要だということだけでも覚えてもらいたいです。(子ども家庭庁という新しい省庁もできましたよね😃)

自浄作用ができる制度づくりと潜在保育士の活用が改革のポイント

現在の保育業界は会社のように監査はあるものの、必要な書類は書けているか?など表面的なもので、中身はあまりみません。

研修も受けるだけでOKで、アウトプット作業はありません。保育のICT化も少しずつ進んでいて、業務の軽減も進んでくるはずです。

業務が軽減した分を自浄作用(質の高い保育)に繋げるために使うことが大切だと考えます。

例:以下のことをすると、国が支出する運営補助費を増額するなど特典をつける
・研修内容から得たものを監査の時に実践報告として提出する
・配置基準より手厚くする
・住宅手当て導入した園には一部を国が負担する

銃社会のアメリカが今更、銃禁止にしたところで、のさぼるのは法律を守らない悪いやつだけになるのと一緒で、配置基準を今更変えたら、閉園なんていう本末転倒な所も出てきます。(学童が法律ではなく参酌基準になったのも同じ理由)

3つの例のように、質の高い保育をしようとしている所に、税金を使っていくことが無難な道筋だと私は考えます。

そして、潜在保育士が95万人もいるので、それをうまく活用できる制度づくりが保育業界改革のキーポイントになると考えています。


・ちょっとだけ働きたい潜在保育士をサポートする制度を国が作って、受け入れる
 園は早番・遅番・休憩時間の確保に使う。→職場が合えば本採用

・保育者と保護者の分断が進む理由には、保護者も忙しく園に任せきりになるという背景があるので、海外のようにシッター業を活性化させ、保護者と保育園の負担を軽減させる

保護者にお願いしたいことは些細なことでも伝えてもらいたい

  • 保育園で気になる対応があった

  • 子どもがお家で保育園での出来事を嬉しそうに話していた

上記2つのことを保育者として言われたこともあるし、保護者として言ったこともあります。物語はアクションが起こらないとストーリーが進まないのと一緒で、良いことも悪いことも伝える(質問する)ことを大切にしてほしいです。(ただし、初めから攻撃的に質問すると高確率でバッドエンドになっています)

オススメの記事↓

東大卒という異色の経歴をもったジャムさんの記事です。学童保育だけでなく、保育園・幼稚園も同じなので参考にしてみてください。

保育者は発信力を求められる時代へ


お便りを作る保育者

「良いモノ」を作れば売れるという時代から、インフルエンサーと呼ばれる発信力がある人が重宝される時代になりました。(どちらも大切ですが)保育業界も同じで、質の高い保育をするのは前提条件として、それを保護者などに伝える努力が更に求められる時代になってきます。

「保護者に些細なことでも伝えてもらいたい」と書きましたが、伝えてもらうためには、保育者の方から伝えていかないと難しいです。

うちの学童では、補助金のおかげ伝え方も変化してきました。1番大きかったのは公式LINEの導入です。

公式LINEのメリットは以下の通り

  • グループラインと違って、返信のやり取りは管理者しか見れない

  • 好きな時間にサッと保護者は欠席の連絡・保育士は確認ができる

  • 動画も配信できる

※デメリットや注意点は割愛しますが、興味ある!とコメント欄に書いてもらえれば、返答します。

1番大きかったのは動画を配信できること。ちょっとした日常をスマホで撮影して、無料アプリでちょっと編集して配信しています。(行事用としてPCでガッツリ編集することもあります)

そうすることで、今までお便りで【何をしているか?】を書いていた部分は動画で伝わるので、【私たちが今何を想って保育をしているか?】という心の内面(専門性)を伝えられるスペースができました。

ICT化が難しくても、連絡帳を「?」で終わらせて、やりとりになるように繋げたり、良いエピソードを親に伝える、積極的に挨拶するなど、方法はいろいろあります。

子どものため、保護者のため、保育士自身を守るためにも、子育「ち」支援だけでなく本気で子育「て」支援にも目を向けることが大事な時代になっている過渡期だと感じています。

こども家庭庁が、保育者が少しでも働きやすい環境に整えてくれることを願って、おわりにしたいと思います。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました🙇‍♂️

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Adoの「うっせぇわ」に対する、昭和と令和の子ども達の時代背景をまとめた記事になります。保育感にも通じるので保育者にもオススメです。

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