th-soundと空の旅
続編の無花果の旅も参照。
歯摩擦音
英語には俗にth-sound(s)と呼ばれる2種の子音がある。
thunderの頭子音th [θ]とthatの頭子音th [ð]である。
舌先と歯裏の隙間から呼気の摩擦で実現される音であることから専門的には歯摩擦音という分類名があり、さらに声帯振動のない[θ]は無声歯摩擦音、振動を伴う[ð]は有声歯摩擦音と呼ばれる。
標準日本語の音素体系にない一方で英語ではthinkやtheのような高頻度語に使われる音であり、典型的な「外国語の音」という印象を持っている人も多いのではないだろうか。
しかし世界的に見ればこのθ/ðは比較的稀で不安定な子音ということが知られている。
英語にあって日本語にない音ということは世界的には一般的だが日本人(を含む少数の人々)だけが調音や認識を苦手としている音なのだろう、というイメージを持つ人もいるかもしれないが、実態は正反対でこの音が意味の区別に使われている言語は少数派なのである。
ただその少数派性も含めこの歯摩擦音の背景には興味深い話が多い。
それは一言でいえばこのθ/ð音がどのように生まれ認識され変化していくかといったテーマである。
今回はそんなth-soundsについて語っていきたい。
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