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政治素人がインボイス制度に反対してみた話ー豊島区『請願』『意見陳述』編⑥


いよいよ委員会当日。


私の請願が扱われるのは平日の昼の時間帯。

これ普通の会社員の人とか、出席するの絶対無理だよなあ…

なんて思いながら豊島区役所へ向かう。

平日の昼間なのに、傍聴の応援に駆けつけてくれたVOICTIONメンバーの皆さん。

そして塚田ひさこさんを通じて、わざわざ応援に来てくださった一般の方もいらっしゃいました。

なんと心強い…!

職員の方に軽く流れを説明してもらいつつ、委員会へ。

おおお…なかなかの人数がいらっしゃる…

議員だけでなく、職員の方も結構な人数同席している様子。

私は意見陳述人なので、一人だけ端っこの、ぼっち席に着席(寂しい…


それでは『消費税のインボイス制度の窮状に対する理解を求める請願』について、意見陳述者、前へどうぞ。


よし、あとはもう堂々と意見陳述するだけだ…!

目の前には委員長。

左右には議員。

真後ろには豊島区の職員たち。

なんか…裁判みたいだな。

でもさらに後ろでは、傍聴席で仲間も見守ってくれている。

こういうとき、仲間の存在というのは本当に心強い。


今回は少し長いですが、お付き合いください。
実際に意見陳述をした際の内容を、ほぼそのままお伝えいたします。

【消費税のインボイス制度の窮状に対する理解を求める請願】の意見陳述。


私は公認会計士であり、現役の声優・ナレーターとしても活動しております。本日はインボイス制度の窮状についてお伝えいたしますが、このお話を聞いていただくにあたって「国が決めたことだから」「豊島区ができることはない」といった考えは、一度取っ払っていただきたいと思います。なぜなら、この制度で影響を受けるのは、国民一人一人であり「豊島区民全員」に関係があるお話だからです。よろしくお願いします。

皆さんが何を一番おそれているのか。
それは「インボイスが発行できないことで仕事が無くなる」ことです。

インボイスを発行したくても事務負担が重く、税理士に頼むお金も厳しい。そのために補助金があるよと言われても、申請作業がそもそも大変です。補助金をずっともらえる訳ではありません。一度課税事業者に登録してしまえば、ずっと消費税の申告をしないといけません。単純に増税です。登録したくてもできない人がいっぱいいます。

さらに声優のように芸能活動をしている人は、本名や自宅住所などの個人情報が公表されるという問題があります。これは先日、衆議院会館で行われたヒアリングで、いまだに個人情報が見えてますよと我々が指摘をしましたが、「もともと公表していい内容で、本人が公表を希望しなければいいだけ」という回答でした。本人が公表を希望するしないではなくて、芸名を登録しないと、本名と芸名が違う人は請求書を出しても誰だか分からないので、請求書をもらう方が困ることになります。同じ名前の人がいたらどうするんでしょうか。住所を登録しないと本当にその人なのか判別できません。この状況で「本人が公表しないことを希望できる」と言えるのでしょうか。登録したくても危なくてできません。ストーカー被害による殺人事件があったばかりです。「問題が起きたら対処する」というのは、誰かが殺されてから、何をどう対処するんでしょうか。

声優は個人事業主で、声優事務所は基本的に課税事業者です。私はインボイスは発行できません、と言ったら、おそらく10月からお仕事がもらえません。声優事務所の関係者が「免税事業者には、自然とお仕事を振りにくくなっちゃうよね」と裏で言ってるのを聞いたこともあります。でも本当は、声優事務所もそんなことしたくありません。これもとても重要な問題で、免税事業者だけではなく、課税事業者側にもとても負担がかかります。インボイスを声優からもらえなければ、声優事務所側も増税になります。経理もとても大変です。交通費の立替や精算も、インボイスじゃないから自腹をきるしかない、というような混乱が必ず起きます。

我々のアンケート調査によると、声優事務所に所属している声優は約1万人、フリーの声優を含めたら何万人もいます。このうちの約7割が年間の売上300万円以下です。もし声優事務所が自分のところの7割の声優の消費税を全部負担したら、あっという間につぶれます。そもそもコロナ禍でどの事務所も今すごく大変です。だから免税事業者にはお仕事を振りにくいし、マネジメント料も当然上げます。ですが「あなたが免税事業者だからお仕事をあげない」なんて言いません。「たまたま合うお仕事が無いんだよね」と言うだけです。

そしてこれが声優業界だけではなく、たとえば建設業界では一人親方さんと建設会社との間でも起きてますし、全ての業界でこれと同じことが起きています。

これをみんなで穏便に解決できればいいんですが、悲しいことに、色んなところでケンカが起きています。長年付き合いがあったのに「インボイスの登録をしない人とはお取引しないことにしました」といった通知が送られています。独占禁止法違反なんてみんな知りません、周知が全然足りません。しかも、これを公正取引委員会に相談しても「お互いよく相談して決めてください」しか言いません。そもそも「あなたが免税事業者だから取引しない」と言ってくれたら通報もできますが、免税事業者のままでいいですよという顔をして、しれっとフェードアウトされたら、証拠が無いので通報すらできません。

先日のヒアリングの際には、山梨県からわざわざ農家の方が来て、公正取引委員会の方の目の前で「道の駅が4月から取引しないと言っています。どうしたらいいですか?」と聞きました。そしたら「一般的にはどうこう」みたいな一般論で返してきました。個別回答が、何もありません。財務省は「問題が起きたら対処する」とずっと言っていますが、何をどう対処するのか一向に示していただけません。そもそも問題は起きる「前」に対処するべきではないでしょうか。

インボイス制度でこういった窮状をお伝えすると「もともと食えてないんだったらそんな仕事やめればいいんじゃない」という人がいます。驚くべきことに、議員の方でもそういうマリーアントワネットみたいなことを言う人がいます。才能だったり努力だったりで健全に競争が行われて、それで淘汰されるなら仕方ないと思います。ですが、インボイス制度という税制のせいで、廃業する人がいるというのは、これは健全な競争でしょうか。私はそうは思いません。多様な働き方を実現すると言っておいて、逆のことをしていませんか? 競技人口の多いスポーツは世界に通用しますが、その競技人口が5年、10年でどんどん減っていきます。果たしてこれで地域は活性化するでしょうか。浜松の特産品のお土産屋さん、青森の津軽塗職人さん、堺市の計量器専門店さん、インボイス制度がきっかけで廃業するそうです。インボイス制度を考えるフリーランスの会の代表の方のご実家は、野菜の卸売業をやっていらっしゃいますが、配送業者の皆さんにインボイスの登録は求めないそうです。その代わり、野菜の値段を上げるしかない、とおっしゃっています。つまり物価の上昇です。豊島区でもこういったことが、たくさん起こると思います。

声優、アニメ業界、漫画家、演劇業界のアンケート調査では約3割の人が、インボイス制度が始まったら廃業を検討すると言っています。

豊島区は何をやっているのでしょうか。

消滅可能性都市と言われた豊島区は、どういうブランドでここまで立ち直ったのでしょうか。文化芸術のおかげではありませんか? 文化芸術へ、いま恩返しをするときではありませんか。5年10年かけて育ててきたものを、これから5年10年かけて衰退させていくのでしょうか。率先して国に意見を言うべきではありませんか。

皆さま今の私の言葉を聞いて、採択不採択を決めると思います。どちらでも構いません。ですが、会派の意向だとか、国政の話だとかいう理由で不採択にするなら、私は今後「あのとき豊島区は文化芸術を助けてくれなかった」と一生根に持つと思います。そんなこと思わせないでください。さすがは豊島区だ、と言わせてください。

財務省がよく口にする「複数税率のもとで適正な課税を確保する」という理由も、もう通用しません。今月の通常国会の答弁でも「預り金ではない、益税はないという認識で結構でございます」と認められております。不採択にするなら、それ相応の明確な理由をお示しください。

本日は私の仲間もたくさん見にきてくれています。今月財務省に提出した18万筆の署名は、18万5千筆に増えました。

皆さん、こちらを向いてください。皆さんが味方につけるべきなのは、会派ではなく、この地域に住む豊島区民の皆さんです。

よろしくお願いいたします。


私の意見陳述は、以上です。
長文をお読みくださいまして、ありがとうございました。

私の意見陳述のあとは、議員からの質問タイムに入るのですが、それは次回にしようと思います。


豊島区『請願』『意見陳述』編⑦に続く。

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