大好きだったあの人⑥


ドキドキしながらお邪魔した彼の部屋。

単身赴任になのにファミリー向け賃貸マンションだった。
大手の子会社支社長様ともなると、借上社宅もこういうVIP待遇になるのか?なんて思った。

そしてコレまた単身者に似つかわしくないデッカい画面のテレビ。
そしてその両脇に外付けのスピーカーが2台。

さすがAV機器メーカー勤務。
単身赴任と言えど、ココは譲れないのだな。


ドキドキしてるアタシは少し居心地悪そうに、とりあえずは彼から距離を取りながら、部屋の端で映画を観た。

内容はなんとなく覚えてるケド、正直言って映画には集中できなかった。

映画が終わった後に
「いや〜、面白かったネ。
ハリソン・フォード、大統領役ハマってるネ」
と彼が言った。

「カッコ良かったデスね」

「あ!そうだ、あのね、とってもおもしろそうなモノをもらったんだけど…
3Dのアダルトビデオ」

それは3Dメガネを装着しなくても観れるモノらしい。

「観てみる?」

単純に興味が湧いたので「観たい観たい!」と言った。

観た率直な感想。
イマイチ…だなぁ。
どこの国の人なのかわからないケド、海外モノだった。

アタシ、セクシービデオは芸術作品だと思ってるので、そういう観点から観てしまう。
ストーリーの設定だとかも重要。
ソレらを総合的に考えて、飛び出すという効果は要らないナって思った。

「どうでしたか?」

「うーん、飛び出さなくてイイかな?
びよ〜んて伸びてくる脚とか、要らないヨネ」

「そうそう、ソレ、すごく気になった」

そこで彼と目が合う。

ジーッと見つめ合う2人。

おお?
コレはもしかしてそういうコトですヨネ?
行くしかありませんヨネ?
今このタイミングを逃してなるモノか!デスよね⁈

気がつくとアタシから彼に近づいていた。

イヤ、アレ、ホントに「進撃の小娘22歳」だった。

彼の胸に顔を付けたまま、
「アタシ、Sさんが好き」
と言った。


彼は
「僕はaneに初めて会った日から、アナタとそういう関係になりたいって思ってた。
だから、そんなコトをされたら僕は止めてあげられないヨ?」
と言った。

「Sさんが好き。Sさんと一緒にいたい」

「本当にこんなオジサンとそういうコトをしてもいいの?」

「イヤだったら、ココには来てない」


こんな場面でも自制できるって、やっぱオトナは違う、スゴイなって。

きっと彼はアタシが「イヤだ」と言ったら何もしなかったんだろう。

アタシはますますこの人のコトが大好きになっていく。

この記事が参加している募集

#眠れない夜に

69,653件

#忘れられない恋物語

9,169件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?