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シンデレラ城に行きたかったのに、気がついたら1リットルのビールジョッキ -オクトーバーフェスト-

初めての海外ひとり旅は21歳のとき。
大学4年の夏休み、厳しかったテニスサークルの方針を完全無視し、夏の大会への出場を拒否。
4年生の夏は好きなように旅行する、と決めていたからだ。

その当時、ひとりの友人がドイツに留学していた。
フランクフルトの近くの街に住んでいた。
遊びにきてね、と言ってくれていた彼女の言葉をそのまま受け取り、夏休みに会いにいくことに。

フランクフルト空港に着き、迎えに来てくれていた彼女と合流。
彼女の引っ越しを手伝ったり、友人とのパーティに参加したり、サッカーを見に行ったり。
とても楽しく過ごした。
フランクフルトからベルリンまで一緒に小旅行をし、そこで彼女とはお別れ。

わたしはそこから南下。チェコのプラハ、オーストリアのウィーンを満喫し、またドイツへ入った。

向かった先はミュンヘン周辺。
目的は、ミュンヘンより少し南に下ったところにあるノイシュバンシュタイン城。

舌を噛みそうな名前だが、このお城はかの有名な東京ディズニーランドのシンデレラ城のモデルになったとして知られているところだ。

日本人観光客がドイツ旅行で外さない名所。
わたしもそれに漏れることなく、ノイシュバンシュタイン城を訪れる気でいた。

工事中で、外観を見ることはできない、ということは知っていた。それでも行くつもりだった。

ミュンヘン周辺の宿に入り、休もうとしたときだった。
同じ宿に泊まっていた旅人に話しかけられた。

「明日はどこに行く予定なの?」

「ノイシュバンシュタイン城だよ」

「ノイシュバンシュタイン城?あー、聞いたことあるけど、どうしてわざわざそこに行きたいの?
それより、明日ミュンヘンでオクトーバーフェストがあるの知ってる?そっちに行ったほうが楽しいと思うよ!ぼくも行くんだよ!」

今となっては超有名なオクトーバーフェスト。ご存知のとおり、ビール大国ドイツ最大のビール祭りだ。
当時まだ日本にオクトーバーフェストが上陸していなかったが、なんとなくオクトーバーフェストのことを知っていたわたしは、その旅人には適当に返事をしながら、内心揺れた。

オクトーバーフェストか。。。

ノイシュバンシュタイン城が日本人観光客にのみ有名で、欧米の旅人からは大して人気でないことは知っていた。

オクトーバーフェストの情報を調べれば調べれるほど、そっちに興味をひかれた。
ノイシュバンは外観見れないし。。。

ということで、オクトーバーフェストに行くことにした。
初めてのひとり旅だったわたしは、事前にしっかりと予定をたてていたのだが、こんな突然の変更も悪くない。なんか旅っぽい。

そして翌日、オクトーバーフェストに向かった。

電車の駅に着いたが、券売機でどの切符を買ったらいいのかわからない。
もたもたしていると、後ろからあるおじいちゃんが声をかけてくれた。

「オクトーバーフェストに行くのかい?じゃぁ切符はこれだよ。
僕も行くんだよ、よかったら一緒に行かないかい?」

ということで、おじいさんと一緒に行くことに。

電車に乗り、会場のある駅におりるとそこは人・人・人!!!
人の海だった。

ただのビールを飲みにきた人たちではない。
ドイツ中から集まった人たちが、自分たちの出身地の伝統的な衣装を着て集まっているのだ。

人をかき分けかき分け、中へ入っていく。

会場は巨大で、簡易遊園地のようになっている。
観覧車やジェットコースターもあれば、オクトーバーフェストでよく見るハート型のクッキーを売っているお店もたーーーくさんある。

そしてビール、ビール、ビール!!!

かわいい衣装をきたふっくらめの(遠回しに言ってます)おばちゃんが、1リットルのジョッキを片手に3つ、両手で6杯持ってサーブしている。

どの席にも空きはなく、人でいっぱい。
でも人々の衣装を見ているだけでたのしい。

一緒にきたおじいちゃんは、どうやらそういった衣装や会場の写真を撮る目的で来ていたそう。

通りすがるかわいらしい衣装をまとった人を呼び止めては、わたしと写真をとってくれた。

多少強引なところがあるおじいちゃんだったので、止められた人たちは正直めんどくさそうな顔をしていた。
申し訳ないと思いつつ、なかなかこんなたくさん写真を撮れる機会もないので、遠慮せずお世話になった。

警戒心の強いわたしは、1リットルのジョッキのビールを飲んだら確実に酔っぱらって、危険を察知できなくなるだろうと思い、残念ながらビールは飲まなかった。

オクトーバーフェスト行ったのにビールを飲まないなんて!と今となっては思わなくはないが、おじいちゃんの優しさと、その後送ってくれた大量の写真でじゅうぶんお腹いっぱいになったからいいんだ。

その後、おじいちゃんとは解散し、わたしはまた事前に決めていた旅程どおりに旅を続けた。
オクトーバーフェストで買ったハートのクッキーを眺めながら、ロマンティック街道を北上していった。


おわり。

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