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自分の呼吸音がきこえる静けさよ

息を大きく吐いたつもりだけれども
すこしも吐き切った感じがしなかった
折り返して息を大きく吸おうと思ったけれど
どこかに穴でも開いているのか
吸いきった感じがしなかった

私の呼吸はいびつだ

息が切れない程度に息苦しさを感じる
いつもどこか息を潜めている
街のなかにいて
目を閉じてしまいたくなるかわりに
息を殺しているときがある
そのくせ何度も大きくため息をついてみせる

誰かと違う、私は特別だなんて言うつもりはない
ペシミスティックによる演出でもない
良く思われたいとか、そういう類の考えで
感じていることでは断じてない

それで何かが変わるわけではないし
誰かの何かが分かるわけでもない

こたえがはっきりと出ているのに
それをはっきりと理解した上で
そのこたえについて延々と考えつづけることは
苦痛であるけれど、それをやめたら
私のコアのようなものが
なくなってしまうような気がする

息苦しさと併せて感じる生き苦しさ

ひとの間にいることは自分自身をいつも
捻じ曲げる必要がある
硬くなった餅のかたまりを
その容量よりも小さな鋳型に押し込める
ようなことの繰り返し
そのうちに自分自身のかたちフォーム
忘れてしまう

社会的な存在である私たちは少なからず
そうだと思う
私だけが特別苦しいわけではない
それに、誰かの前にいる私も
別の誰かの前にいる私も
ひとりでいる私もすべて
違わず私自身であるし、どれも私の
「ありのまま」のエレメントであると思う

頑張って笑ってみせる私は私じゃないなんて
言ってしまったらその時の私が可哀想だもの

でもね、呼吸が嘘をついて
誤魔化していると息が切れてくる
激しく肩を震わせて息が切れているよりもずっと
息が切れてくる

誰かに救いを求めているのではなく
あるいは承認欲によるものでもなく

無感情にも近い静かな夜のあいだに
自分で吐いた息をもう一度吸い込むこと
自問自答でしかない


私も呼吸について考えた

たんなるにっき(その84)

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