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空白容量の余白

ほんとうを失って
ないことをあるようにもせず
ないことをないものともせず
それをどうともしないように
生きることは逃亡劇に少しだけ似ている

粉末のように一斉に押し流れることはなく
PTP包装シートにひと粒ずつに
隔てられた1日をできるだけ
単一に見えるように過ごすこと
日々、時間切れを待ちながら
起きることのない劇的な希望を
僅かながら目指している

嗚呼
と漏らした声が誰に向けているのかも
考えないようにする
考えてしまいたくないから
咳払いで消波して
吸い込んだ拍子に入り込んでしまわぬように
注意を払う

誰にもそんなこと気づかれるわけもなく
誰も見てやしないのだけれど
ほんとうを失って
今もまだその瞬間と同じように
いないというというのに
それをどうしようもなく
持て余すという
失ったはずのことが重くのしかかる
それは逃亡劇に少しだけ似ている

PTP包装シートにひと粒ずつに
隔てられた1日をできるだけ
ほんとうに見せかけるのは
誰のためのことか
注意深く辺りを見回した
日々、時間切れを待ちながら
起きることのない劇的な希望を
僅かながら目指している

嗚呼

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