メモリーズ・オブ・トーキョー
記憶に残す必要もなく
垂れ流した感覚のあとで
蕾に水が滴る瞬間に
いろが拡がるような時間を
頂戴できた
◇
鬱屈した気持ちを抱えていても
街も日常も止まりはしない
群衆のなかの交差点
車も人も止まっては進んで
目の前を通り過ぎてゆく
明るいコンビニエンスストアを背に
人を見分けるために目を細める
横断歩道の青を挟んで
お互いに気づき合う
束の間でも私は私を忘れることにする
◇
もう何度も行った場所だとしても
いつ誰と行くかによって感じ方は異なる
空に打ち上げられた想いは
どこにゆくのだろう
誰かの想いは誰かに届いて
誰かの想いは届くことがない
常夜灯にあつまる虫のように
人も願いも光に吸い寄せられる
雑踏のなかでマスク越しにうたう鼻唄
◇
ほんの少しのお酒とごはん
何よりも会話がいちばんのご馳走
使い古された表現を恥ずかしげもなく
使わないと言い表すことができない
私のことばの稚拙さもそうだけれど
大事なことは普遍で不変だ
縁に縛られ、救われて
人の間にあるからこそ私がある
鬱屈さにがんじがらめにされていても
生きてこそ
大袈裟に聞こえることを大真面目に
真正面から受け止める
全ての問題も答えも自分のなかにある
正義も悪もない
詭弁もきれいごともない
世間や誰かを人柱にしても
鏡に映るお前はいつも醜いものさ
見上げた月は満ち欠けても
見えなくなってもそこにある
誰かの記憶にあるかぎり
また会えると思える限り
鬱屈した日常の先にきっと
まだ別の私があると思える
ほんの少しだけ
お話しできてよかった
ありがとう
たんなるにっき(その74)
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