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シルバーライニングを探して

変わりゆく空気の色
発券機のひかりは早く灯ります
目を閉じて埋もれてゆくと
ものがなしさが滲み出てくる気がします

生きるためには必要なエレメント
なのかもしれなくっても
レプリカントにでもなれたならと思うほど
ものがなしさが私を壊していく気がします

傘を忘れて出かけた時に天を仰いで
もうどうにかなってしまえば良いのに
と思いながらも
せっせと靴下を濡らして歩いてゆくと
翼を濡らしても遠くに向かう鳥が見えました

きっと誰かを呼びに行っているのかもしれない
きっと逢いたい誰かがいるのかもしれない
と思いました
せっかく何かを負うのだとしたら
行った先に誰かがいる方よほど良いですからね

大切な人を残したままひとり
月に向かう心拍も
家出して疲れて家に帰るしかなくなった
夕方の心拍も
同じように繰り返されています

だけど
いつだって心配は少ない方が良いでしょう
独りきりじゃない方がもっと良いでしょう
降る前はあんなに考えていたのに
雨上がりにはもう忘れてしまう
それなのにいくら楽しいことがあっても
けして忘れることはないのでしょう

夏の木漏れ日に混ざって
空気中のひかりがきらめいたように
見えた蝶の羽ばたきはきっと
どこか別のせかいの隠し戸なのだろう
と思っていたのですが
勇気がないまま季節が過ぎてしまいました

雨を吸い込んでつま先が
鳥の声のように鳴きました
傘を左の肩と首の間に挟みながら
合わせ鏡のように手を重ねてみました

どこかでつながってることを信じて
あの鳥が飛んでいった方向に
私も歩いてゆきます



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