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そして、テオドールへ引き継がれた

呼吸に合わせて上下する腹を見ることに
ありたけの時間を使うべき
だと思うことは
何と美しいわがままだろう

両手で抱えた頭の付け根
指に触れた背骨はいつも斜め前を向かう

今眠ったらもう目覚めることができない
ような気がして眠りたくない
と思うときほど
よく眠れたりするのはどうしてだろうか

曖昧な感覚のまま時間を塗りつぶす
燃え木のひとつが崩れ落ちて旅立ちを知る

昨日との違いはきみがいないことだけだ
生死の決まりごとは願いの治外法権にある

戯れることはおろか
触れることすらできない
憂いのリフレインは
どこで鳴り続けているか
私には分からないままでいる

朝露のついた窓に手で触れると
じれったい気持ちが
青みがかったもやでひとり

誇らしげなエモーション
突然の雷雨よりも
たしかに聴こえた最期の鼓動

はなむけのような朝の晴れ
餞の代わりに水を飲み
餞のように花に水をかける

日記を書くのも忘れるくらいに
日々に夢中であれたらと思う
夢中の只中であれば
日々を書き留める必要など本当はないのだから

朝になって息をしなくなって
旅に出ていった
ここにいなくなっただけ


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