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獅子舞

我が家には4人の子どもがいる。小学2年生のしっかり者の長男を筆頭に、俊敏な次男(5歳)、お調子者の三男(4歳)、おてんばな長女(2歳)と続く。

我が家は一家を上げて『鬼滅の刃』の大ファンなのだが、唯一、三男だけは『ナマハゲ』や『雷さま』と言った正統派(?)の鬼好きである。どのくらい鬼好きかというと「あと何日で節分なの?」「節分のために豆まきの練習をしなきゃいけないね」と誕生日よりもクリスマスよりも節分を楽しみにしている程である。

そんな三男に、新たな運命の出会いがあった。
このお正月に家族で近くの初売りに出かけた時のことである。遠くから賑やかな音楽が聞こえてきたので足を止めていたら、獅子舞の一行がやってきた。生まれて初めて聞くお囃子に合わせてくねりながら近づいてくる真っ赤な獅子の被り物。驚いた三男は夫に抱きついて慌てて遠くへ逃げて行ったが、逃げ遅れてしまった末娘は抱きかかえている母(私)もろとも獅子にカプリと頭を噛まれてしまった(もちろん実際には噛むフリだったが)。

平和で楽しい買い物から一転、白昼の通り魔に出くわしたような展開に訳がわからず泣き出す娘。一方、やんちゃ盛りの長男と次男は獅子舞を追いかけてしばらく大はしゃぎであったが、まだ幼い三男と娘は帰りの車の中でも小さな物音にも怯える始末だった。

しかしだ。それからというもの、三男は某動画共有サイトで毎日朝から晩まで、事もあろうか獅子舞の映像を片っ端から見続けているのである。どういう風の吹き回しなのか。鬼と同様に怖いもの見たさということか。さらに近くに住む年下の従兄弟にまで、獅子舞に遭遇した時の武勇伝を語りだし、挙句「ボクは獅子舞が一番好きなんだ!」と豪語する始末。あの時の怖がりようは何処へ消えたのか。

そのうちにジイジが面白がってダンボールと風呂敷で獅子舞の被り物をこしらえてくれたのだが、こうなるともう誰も三男を止められない。お囃子のBGM(これもジイジが用意して下さった)とともに登場した三男は、緩急のある力強く堂々とした足取りで獅子舞を舞うのだ。その後ろには小太鼓をテンポ良く叩きながら澄ました顔で長女が付いて歩いている。待て待て、お嬢さんもあの時大概怖がっていたではないか。

時には長男次男も参加し、重厚な和太鼓(オモチャといえど本格的なのだ)に、あり合わせの鈴の音まで加わり、朝から晩まで家中を獅子舞一行は練り歩く。
それでも何か欠けていると気づいた三男、親にねだりにねだって篠笛までも手に入れてしまった。案の定ひとつも吹けていない三男だが、まったく意に介さず「プィ〜ヒョロロ〜」と奇妙な擬音を自ら声に出しながらご機嫌に踊っている。

こんなに獅子舞に夢中な子どもなんて、果たしてこの令和の時代にどれだけいるのだろうか。

獅子舞の起源はインドと言われており、かつて遊牧民がライオンや霊獣を模して舞ったのが原型だそうだ。それが16世紀の室町時代に中国を経由し日本に伝わり、伊勢の国で飢饉や疫病を追い払うために獅子舞が行われ全国に広がったとのこと。

毎日幾度となく獅子に頭を噛まれている私たちは、この先行きのみえないコロナ禍でもきっと元気に過ごせることだろう。

かくして私の今年の目標は、お囃子を盛り上げるべく篠笛を吹けるようになること!になった。
そして今日もまた我が家のちびっ子獅子舞たちは、ぐねんぐねんと家中を闊歩し元気と笑いをふりまいている。

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