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格闘技におけるマクラのテクニック。コンセプト、2種類のマクラ、応用、ダメなマクラ(全文無料)

 今日も今日とて柔術は楽しい。今日はマクラの話。マクラは重要な技術です。これを覚えておくと効率よく相手を抑え込んでコントロールできます。


1.マクラのコンセプト

 マクラのコンセプトは

「顔の向きをコントロールする」
「首(頸椎)を制する」

 個人的には「首を制する」よりも「顔の向きをコントロールする」の方がマクラのコンセプトとしてしっくりきます。 

 人は顔(鼻)の向いている方向に力が出ます。顔が相手の方を向かないと横を向いてエビできません。ブリッジする方向を見ないとブリッジできません。マクラで顔の向きをコントロールします。

 これは先生によって言い方が変わります。首の向き、頸椎の向き、顔の向き、目線、鼻の向き、顎の向き、など。どれも言っていることは同じです。個人的には「鼻の向き」を意識するとやりやすいです。

 抑え込みのコンセプトは「背中をマットにつけさせること」(上体をフラットにすること、両肩をマットにつけさせること)です。有効なマクラを使えば相手の背中をマットにつけさせて抑え込むことが可能です。

2.ダメなマクラ

2-1 袈裟固め=スカーフホールド

 相手のファーサイド(遠い側)のマクラを取るのが袈裟固め

 基本的に袈裟固めは使わない方がいいです。絶対ダメとはいわないですが、コントロールが弱くバックを取られやすいです。ファーサイドは脇を差しましょう。(あくまで基本。使い方次第では有効な場合もあります。)

 袈裟固めは相手の顔の向きをコントロールしづらいです。ニアサイドのマクラは相手の顔を反対方向へ向ける(クロスフェイス)ことで力を入れさせないことが可能です。顔(鼻)の向いてる方向に力が出るので相手の顔が反対に向いてると押したりエビされたりしません。袈裟固めだとクロスフェイスすることが難しいです。

2-2 クソマクラ

 自分が勝手に読んでいる呼称です。ニアサイド(近いサイド)のマクラでも全く効果がないクソマクラ

 ただ相手の首の下に手を敷いているだけ。ブリッジもエビもされ放題。後述する2種類のマクラのどちらにも該当しないマクラを自分はクソマクラと呼んでます。

2-3 足のフレームを越えていないマクラ

 「ガードの中にいる=相手との間に足のフレームがある」状態でマクラを取りに行くと腕固め(カッティングアームバー)を食らうので注意。

 具体的にはクローズドの上からのマクラ、ニーシールドに対してマクラ、などやりがちです。その他、足裏やスネが自分の体に当たった状態で不用意にマクラを取りに行くとやられます。

 フレームを突破してサイドについたり、ハーフまで行ったらマクラをとってもOKです。クローズドのトップから脇マクラを取ってサンパウロパスにつなげるのもアリですが、体重をしっかりかけて潰さないと腕固めされます。

2-4 スタンドのマクラ(ヘッドロック)

 柔道家が首投げすることをたまに見ますが、これも袈裟固めと同じでバックを取られやすいです。ちなみに首相撲とヘッドロックは似て非なるものです。首相撲は肘のフレームが入っているので強いです。

3.有効な2種類のマクラ

3-1 クロスフェイス(顔を横に向かせる)

 自分の肩で相手の顔を反対側に向かせるテクニックです。かなり有効です。サイドコントロールでも使えるし、ハーフパスでめちゃくちゃ使えます。パス際に下を向いてカメになる相手にも使えます。あご下にしっかり入れば肩固めの様な絞め技にもなります。

 クロスフェイスで相手の顔を反対側を向かせると体がツイストされて力が入らないのでエビもできないしブリッジもできません。

クロスフェイスのポイント
・体重をかけて肩でプレッシャーをかける
・手は深く差して相手の脇をひっかける、もしくは道着を持つ
・自分の肩で相手のあご下からすり上げるように相手のあごを反らせると強力。これだけで肩固めのようなプレッシャーで落ちることも
・あご下に入らなければほお骨に肩で圧をかけて反対向かせる。

3-2 後頭部を抱くマクラ(顔を下に向かせる)

 マウントで使うことが多いです。ブリッジ封じのマクラ。相手の後頭部(首ではない)を抱えて下を向かせるようにします。下はこれをやられるとブリッジができません。

 後頭部がマットに付かないとブリッジができないです。また、ブリッジは返す方向に顔を向けると力が入ります。それをさせないのがこのマクラです。

 後頭部を抱えて浮かせなくても、マットと相手の後頭部の間に自分の手が入っているだけでも十分です。これが首を抱えてるだけだと後頭部がマットにつくのでブリッジできます。

 あと、ラッソーのパスでこのマクラを取るのも有効です。相手は後頭部が浮いて足を蹴り込めないため、ラッソ―スイープができません。スパイダーパスでこれをやろうとしてもだとたぶん手が届かないです。

4.応用のマクラ

4-1 フロントチョーク

 ハーフやサイド、マウントでフロントを取るとマクラと同じような効果があります。ブリッジもエビもできないうえに極めのプレッシャーもかけられます。ハーフパスでは積極的に狙いたいです。特にノーギは狙いやすいです。

4-2 自分の頭でマクラを取る(トライポッドパス)

 右足を絡まれたハーフパスの場合、相手右肩横のマットに頭をついて手の代わりに頭でクロスフェイスできます。いわゆるトライポッドパス。ただマットに頭を付けるだけではなく自分の頭で右へ圧をかけて、相手の顔を逆に向かせるプレッシャーをかけます

4-3 ギフトラップ

 相手の腕でマクラを取るイメージです。反対側までつながっているのでコントロールが強いです。腕、肩、首、顔を手一本で制するので効率がいいです。抑え込みとしても使えるしバックテイクにもつなげやすいです。

4-4 ラペラ ブラボーチョークの途中の組手

 対角の襟を背中側からマクラしている手に渡す形。さらに手をクロスグリップに持ち変えるとブラボーチョークになります。この形は手一本で、脇(肩)、首、顔を制するので効率がいいです。つないだラペラが脇差しと同じ仕事をしてくれます。

4-5 襟持ちで前腕クロスフェイス

 マクラの手を深く差して肩でプレッシャーをかけるのがクロスフェイスですが、襟を持って前腕で顔にプレッシャーをかけてクロスフェイスをとることも可能です。

 ハーフパスで深く襟を取れないとき、遠い距離のパスで相手が下を向いてカメになってきたときにとても有効です。

 これの大きな利点は「腕固めのカウンターがないこと」「深く腕を差さなくても簡単にエントリーできること」「押すことも引くこともできる(距離を詰めることも離れることもできる)」です。

5.まとめ

 たかがマクラ、されどマクラ。こういったディティールを詰めていくことに柔術の楽しさがありますね。

 サイドやマウントで逃げられてしまう方、ハーフパスでプレッシャーをかけられずパスできない方、パス際にカメで逃げられる方はぜひ本記事のポイントを意識してみてください。ブレイクスルーのきっかけになるかもしれません。

2024/5/13 アンディ

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