元アンチ寅さんによる寅さん発掘作業
依頼者からコンシェルジュへの希望
依頼者プロフィール
夏りょうこさん まちライブラリーEndMarkオーナー・映画ソムリエ 50女性 寅さん鑑賞経験あり(第1,4,11,12,17,25,30作)
寅さんシネマコンシェルジュを受けるのは、2回目です。普段から、映画ソムリエとしてたくさんの映画を鑑賞しています。元々、浪花節の雰囲気が好きではなく、山田洋次監督作品や『男はつらいよ』には苦手意識があり、アンチ寅さん派でした。1度目の寅さんシネマコンシェルジュを機に鑑賞し、寅さんシリーズをさらに発掘したいと思っています。シリーズが48作続くことで脚本がパターン化し、旅が地方紹介になっている気がします。なので、『男はつらいよ』に限らず、シリーズものは前半の方がおもしろいのではないでしょうか。今回のリクエストとしては、①寅さん以外の人物にフィーチャーされる作品、②マドンナが「えっ?」と思わせてくれる作品、③王道の出会い方の作品を希望します。全体として、少し変わっているマドンナや作風が観てみたいです。寅さんの映画をいくつか鑑賞してR45指定(45歳未満は観られない)の映画だと思いました。歳をとると、わかります。
2回目のコンシェルジュならではの具体的な希望
夏さんは、元々アンチ寅さん派の映画ソムリエで1度コンシェルジュさせてもらい、その時おすすめした3作を観ていただきました。1度目の記事は下からご覧ください。そこで、さらに『男はつらいよ』を発掘したいとの嬉しいご意見をいだきました。脚本がマンネリ化していないであろうシリーズ前半をご希望でしたので、その中から、具体的な要望3つに合う3作をご紹介しました。なお、「①寅さん以外の人物にフィーチャーされる作品」は、42作目『男はつらいよ 僕の伯父さん』以降、寅次郎(渥美清)の甥の満男(吉岡秀隆)がメインのストーリーとなるため、後半からのご紹介となります。
夏さんの1度目のコンシェルジュ記事
「変わりもの」を求めて
※以下、作品の内容を記述します。
① 第10作 「男はつらいよ 寅次郎夢枕」
公開:1972年
マドンナ:八千草薫
ロケ地:東京都亀戸
あらすじ: 幼馴染の千代(八千草薫)と再会した寅次郎(渥美清)は、昔のように千代をからかいます。千代は、離婚して小学生の息子とは離れて暮らしており、美容院の女主人です。そんな中、とらやの下宿人で変わり者の大学教授・岡倉(米山斉加年)が、千代に一目惚れ。岡倉の恋愛面の不器用さを馬鹿にしていた寅次郎ですが、千代への気持ちは、友情かはたまた愛情か。岡倉先生・千代との三角関係は意外な結末を迎えます。
今作は、「マドンナが『えっ?』と思わせてくれる」作品です。八千草薫さん演じるチャーミングな幼馴染の千代ですが、離れている息子のことで涙する日もありながら、美容院を経営し、辛さに耐える強さも感じさせてくれます。千代は、岡倉先生と寅次郎に好かれることになりますが、どちらかを伴侶に選ぶのでしょうか。終盤、亀戸天神での千代の決断のシーンに注目です。
② 第24作 「男はつらいよ 寅次郎春の夢」
公開:1978年
マドンナ:香川京子
ロケ地:和歌山県和歌山市
あらすじ: とらやにアメリカ人がやってきました。商売が上手くいかないマイケル(ハーブ・エデルマン)をとらやの人々は下宿させてやることにします。そこに寅さん(渥美清)が旅から帰郷し、マイケルを敵視。マイケルも寅さんがとらやの一員とは知らず、売り言葉に買い言葉で・・・。通訳をしてくれる近所の翻訳家・圭子(香川京子)に一目惚れした寅さんの恋は実るのでしょうか。
この作品は、「王道の出会い方」と言えるでしょう。出会ってすぐ一目惚れ、これが寅次郎の恋の王道パターンです。また、ご希望である、少し変わった雰囲気も楽しめます。寅次郎と外国人のやりとりがメインで描かれる作品はこれが唯一です。寅次郎とマイケル、けんかに始まり、最後は同じ運命をたどる似た者同士を見届けてください。
③ 第42作 「男はつらいよ 僕の伯父さん」
公開:1989年
マドンナ:檀ふみ、後藤久美子
ロケ地:佐賀県神埼郡
あらすじ: 寅次郎の甥で浪人生の満男(吉岡秀隆)は、高校の後輩でガールフレンドの及川泉(後藤久美子)が引っ越した佐賀県に会いに行きます。泉は、親が離婚し、水商売をしている母と住んでいましたが、母から逃げるように佐賀県の叔母の家に居候し始めたのです。満男は、佐賀で寅次郎と偶然にも再会。満男の恋愛を指南する寅次郎も、泉の叔母・寿子(檀ふみ)が気になっている様子です。満男は泉の悩みを受け止めきれるのでしょうか。
この作品は、寅次郎以外の人物がフィーチャーされる作品で、甥の満男がメインとなり活躍します。寅次郎役の渥美清さんの体調が良好ではなくなった42作目以降は、満男が主役級で毎回登場しています。その初回となるのが今作です。満男は、気が優しいが、頼りない時もあり、なんとももどかしさを感じさせる人物です。ガールフレンドの泉は、年下ですが、家庭環境が複雑で満男には理解できない悲しみを抱えています。この2人の物語は、42,43,44,45,48作と続きますので気長に見守ってください。
コンシェルジュを終えて
今回、初の同人物の2度目コンシェルジュでした。1度目のコンシェルジュ以降、アンチ寅さんだった夏さんは、「寅さんをもう少し見てみたい!」と言ってくださり、コンシェルジュとしては嬉しい限りです。毎度、少し変わった作品をご希望いただくことが、いつもとは違う引き出しを開ける感覚でおもしろく、夏さんらしい気がします。夏さんは、歳をとったからこそ理解できる感情、哀愁、情景があるという意味で「寅さんはR45指定」と言われました。納得ですが、私は20代でも小学生でも楽しめる部分はあると信じています。幅広いジャンルでたくさんの映画を観られている夏さんに『男はつらいよ』はどう位置付けされるのか、ドキドキです。
夏さん、ありがとうございました。
夏りょうこさん関連のリンク
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