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観終わった後にガシガシ歩ける作品ありますか?

 
寅さんを観続けてもうすぐ20年。たくさんの人に『男はつらいよ』を観てほしいという思いから、依頼いただいた内容をもとに好みや性格をお聞きし、おすすめの3本をご紹介します。


依頼者からコンシェルジュへの希望


 
依頼者プロフィール
ふみかぜさん 点字出版所勤務 60歳女性 寅さん鑑賞経験あり(複数作品鑑賞済み)
 
普段から映画はよく観ており、特に香港映画が好きです。それと、観終わった後にガシガシ歩ける作品が好きです。ガシガシ歩けた作品を一つ挙げるなら、『百円の恋』です。終わった後、無敵な気持ちになれました。
最近、映画好きの息子が『男はつらいよ』を全作観ていたので、感想だけは聞いていて、気になっていました。『男はつらいよ』は子供のころに第1作を観て、櫻という漢字を「二階の女が気にかかる(2つの貝と木と女)」と表現していたのが印象的です。大人になってからもリリー(浅丘ルリ子)がマドンナの回など何作か鑑賞しました。今回のコンシェルジュでは3作品とも違う魅力のマドンナが観てみたいです。そして、観た後にガシガシ歩けたら嬉しいです。
 

無敵感を味わいたい


 
ふみかぜさんはマニアックな映画をよくご存じで、かつ見終わった後にガシガシ歩ける作品をご希望でした。個性的なご依頼で、「ガシガシ歩く」を掘り下げるお話は興味深かったです。『男はつらいよ』の1作目の印象的なポイントも「二階の女が気にかかる」だったので、お子さんの頃から独特な視線をお持ちなんだなと思いました。「ガシガシ歩ける気持ち」は無敵な感覚らしく、コンシェルジュとして映画のラストシーンにそんな感覚がするのではないかという作品を選びました。また、マドンナの魅力が3本とも異なるものにしました。ちなみにリリーの出演作品は、ガシガシ歩ける候補ではありましたが、全て鑑賞済みで記憶にも残っているということで、省いています。
 

エネルギーが湧くラストシーン


※以下、作品の内容を記述します。
 

①  第13作 「男はつらいよ 寅次郎恋やつれ」


公開:1974年 
マドンナ:吉永小百合
ロケ地:島根県津和野
 
あらすじ: 島根県津和野で歌子(吉永小百合)と再会した寅次郎は歌子の現在の状況を聞いて、心配しながらも柴又に帰ります。帰郷後は歌子のことが気になりすぎてやつれ、まるで病人です。とうとう家族と金輪際の別れを決意して、歌子を見守るために津和野に向かうことにした寅次郎ですが、そこに歌子が訪ねてきて・・・。
 
この作品では、ラストシーンで歌子の現在と未来の幸福を予感させます。第9作『男はつらいよ 柴又慕情』と今作2回にわたって描かれてきた歌子の物語は、集大成を迎えます。母を幼いときに亡くし、小説家の父(宮口精二)との関係に悩んでいた引っ込み思案の歌子は第9作で結婚を決意しますが、父との関係は相変わらず悩みの種です。関係を改善し、自分らしく生きることができるのでしょうか。
 

②  第17作 「男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け」

 
公開:1976年 
マドンナ:太地喜和子
ロケ地:兵庫県龍野
 
あらすじ: 一文無しで飲み屋にいた小汚いおじさん(宇野重吉)を寅次郎は、親切に家に泊めてやります。実はそのおじさんは画家で、その場で描いた絵を「売ってきてくれ」と寅次郎に頼みこみます。老画家の絵は売れるのでしょうか・・・。
古き良き町、播州たつのでは、寅さんと芸者ぼたん(太地喜和子)が「所帯を持とう」と言い交わします。たつのでは、老画家の昔の恋人(岡田嘉子)も登場しますが、二人は昔の気持ちを清算できるのでしょうか。
 
この作品のラストシーンは、青観先生とぼたんと寅次郎が織りなす最高のコメディになっています。デリカシーのないおじさんだった青観先生、お金に苦労しながら家族を養うぼたんの様々な面が描かれていき、そこに寅次郎という人間が加わることで、新たな面が現れてきます。青観先生の豊かな人間性とぼたんと寅次郎の軽妙な掛け合いをお楽しみください。
 

③  第19作 「男はつらいよ 寅次郎と殿様」


公開:1977年
マドンナ:真野響子
ロケ地:愛媛県大洲市
 
あらすじ: 寅次郎が愛媛県大洲で出会ったのは、世が世なら伊予の殿様であった老人(嵐寛壽郎)でした。殿様に気に入られた寅次郎は、殿様に無理難題の頼みごとをされ、引き受けてしまいます。その頼み事を寅次郎は果たせるのでしょうか。そして、大洲で出会った美人(真野響子)との再会もあり、寅次郎の恋愛が始まります。
 
この作品のラストシーンは、寅次郎と殿様の関係を象徴しています。寅次郎はその屈託のなさや素直さが決め手となったのか、殿様に気に入られます。殿様は時代に合わず執事には厳しい態度で接し、執事や周りの人物は殿様に気を遣いますが、寅次郎はそうではありません。そんな変わり者の二人のやりとりを楽しみながら、ラストシーンを迎えてください。

コンシェルジュを終えて


ふみかぜさんは「観た後にガシガシあるきたい」と、ある意味具体的である意味抽象的なご希望を出されました。こんな依頼もあるのかと楽しみながらコンシェルジュさせてもらいました。ふみかぜさんは知る人ぞ知るマニアックな映画を鑑賞しておられて、独特の視点で映画を観ておられる気がしています。今回はラストシーンにこだわってコンシェルジュし、上の解説でも各作品の中身についてはあまり書けませんでしたが、もちろん中身も充実しております。上記の3作品でガシガシ歩けるかは半信半疑ですが、中身も含めて無敵感を味わってもらえたら嬉しいです。
ふみかぜさん、ありがとうございました。


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