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The Planet Magazine Wombat

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ライアル・ワトソン博士によるとWombatとは世界で一番役立たずの動物だそうです。20世紀に4冊だけ丸い地球のプラネットマガジンWombatは雑誌として講談社から刊行されました。…
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2019年8月の記事一覧

貨幣に対する考えを私たちは変えられるか。それが社会に関する究極的な問いである

「究極的な問題は、貨幣を私的に所有可能な力とみなしがちな私たちの思想を変革できるかどうかなのである。古代のギリシア語で貨幣を表す「ノミスマ」と言う言葉は、本来制度を意味していた。そして、貨幣とは長らく金が象徴してきたような神秘的呪物ではなく、法のような制度であるとするならば、貨幣の力は近代法と同様に、自由、平等、公正の民主主義の原則に従って行使されなければならない。このことを認め得るかどうかに、私

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ポスト資本主義の希望、日本

「現在の日本の位置、世界の歴史のただなかでその位置はどう考えたら良いのでしょうか。資本主義の隠れていた問題が表面化してきます。今日ではこの問題が極限にまで深刻化しています。科学的知識の資本化は、資源と環境の危機によって人類の種としての存続を危うくしています。第二に、昔の暴君や征服者の暴力とは次元が異なる、貨幣の抽象的構造的な暴力があります。第3に、競争的個人主義につきまとう心因性精神疾患の問題です

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明治維新の評価とは日本の現在をどう評価するかという問題

「薩長はクーデターの大義名分として王政復古を掲げました。しかし19世紀の世界に古代祭祀国家を復活させると言う時代錯誤の試みは早々に破綻し、それに代わる近代天皇制の構築は容易ではなく明治時代いっぱいかかりました。妄想に基づいてクーデターを強行し、権力を奪取した後で引っ込みがつかなくなってしまったと言う点では、薩長はボルシェビキに似ているのです。そしてこの事情が、近代日本国家にソ連と似たような歪みと脆

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明治政府の洗脳

「開国と維新について大半の日本人は根本的に間違ったことをいまだに信じています。明治政府による洗脳が解けていないのです。まず、第一に開国があったから維新が起きたと言うように開国と維新に因果関係があったかのように思い込んでいる。実際は、開国による日本の一時的混乱にこれ幸いとつけ込んで薩長が武力クーデターをやっただけです。薩長は、外様の雄藩として関ヶ原の幕府に対する積年の恨みを晴らしたかっただけです。大

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江戸と幕府の先進性と禊の必要性

「ここ30年ほどで日本人の歴史意識に生じた最大の変化は、江戸時代についての評価が様変わりしたことだと思うのですね。江戸時代に対する肯定的ないし公正な評価がむしろ主流になってきている。これは、江戸時代は武士が庶民を虐げていた停滞した時代と言う明治国家のプロパガンダの呪縛から日本人が解放されたと言うことだと思います」

「江戸時代の成果に西欧文明の使える部分を適切に追加し補足する。そういう近代化はあり

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女文化と日本語の唯一性

「さらに日本文明をユニークにしたもの、それは平安朝の女文化だと思います。世界の主要な文明国の中で、女性の感性に支配された一時期を持った国は日本だけです。しかし、女性の感性の支配は、そのまま女性の社会的地位につながるものではない。武家社会の家父長制は、女性から人格の自由を奪いました。その点で、日本の遊女の歴史を省みると複雑な思いに囚われます。彼女たちは平安の女文化の誇り高い継承者であると同時に、家父

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日本文化のユニークさ

「日本史の2元性、生成で良しとする態度、それに加えて、もう一つ日本史のダイナミズムとして指摘できるのが、神仏習合です。これは日本史のダイナミズムそのもので、日本には進歩とか革命とかで、文明の形がごっそり入れ替わることがなかった。新旧が交代することがなく、古層がずっと残存する。その上に新しいものが追加や補足として重なっていくと。これが日本史なのではないか。その典型が神仏習合で、神道が仏教に抵抗したわ

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政治的目覚めの先へ

「ヨーロッパや中国では、権力者はこの部族のオーラルの伝承から文字による国家神学へと言う変遷を意図的、計画的に推進しました。それは民衆が馴染んできた伝承や習俗をキリスト教や儒教による強化で絶滅させ、制度宗教で民衆を思想的に統制すると言う形をとりました」「

中国でもヨーロッパでも他の文明では、権力の課題は体系的国家神学による民衆の教化、思想統制です。思想の統一が国家の統一に不可欠な条件になります。ヨ

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電子マネーの政治性とベーシックインカムの政治性に目覚める

「銀行の破綻がさらに深まれば預金封鎖の事態もあり得ます。これは1930年代の大恐慌の際に銀行を守るためにとられた政策です。しかし今日の権力エリートは、もっとひどいことを考えています。それは、通貨を全て電子マネーにして現金を廃止すると言うものです。リーマンショック以降、世界のメガバンクは事実上全て破産しています。破産の実情を通貨の大増刷、いわゆる量的緩和で取り繕っているのですが、そういう中でメガバン

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議会制国家は法秩序ではなく銀行が管理している通貨秩序に従属している

「19世紀以降の大衆民主主義、マスデモクラシーは、能動的な市民と言うリベラルエリートの虚構を解体させ、人々を受動的で制度によって調教された大衆、マスに変えるものでした。この人々のマスの調教には、普通選挙権と義務教育、マスコミが決定的な役割を果たしました。この政治の大衆化はあたかも民主化であるかのように見せかけられましたが、実際にはこれはエリートが人々を工業化に動員するための戦略でした」

「18世

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生産の時代は終わり、富の公正な分配が時代の課題になってきた

「生産から分配へと言うダグラスの議論は、時代にマッチした適切なものになってきている。資源と環境の危機で成長の限界にぶつかった資本主義の問題、特に金融資本が成長の限界を無視してきた結果、銀行への負債だけが増える負の成長の中で分配の不平等が極端になっています。生産の時代は終わり、富の公正な分配が時代の課題になってきたのです」

「環境の破壊と資源の枯渇は今や文明の存続を脅かしています。経済が成長するか

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経済的デモクラシー

「社会信用論は、銀行経済を廃止して政府が通貨を発行することとベーシックインカムの実施を主張しますが、ダグラスはこれを「経済的デモクラシー」と呼んでいるわけです。この政策によって資本が広く社会全般に分散し、国民全てが経済力を持つことになる。そうなると、商品を買うといった庶民の経済活動自体が選挙で投票するのと同じような意義を持つようになる。経済活動生活そのものがデモクラシーの表現になる。一方に経済があ

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精神的文化と物質経済の統合へ

「ダグラスは単にマクロ経済的合理性の視点でベーシックインカムを提示をしたのではありません。彼は雇用による所得、働かざるもの食うべからずという思想を正当化している人間観、労働観からの転換を主張しました。これが大変面白いユニークなものです。彼は技術者として生産と労働の現場を直に体験し、よく知っていました。そして自分の体験を踏まえて、生産はほとんど道具とプロセスの問題で、人間の個々の労働が生産に果たす役

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ダグラスのシステム欠陥是正のための3つの政策提言

「ダグラスは単に構造分析をしただけでなく、エンジニアらしく、どうしたら企業会計と銀行金融のシステムの構造的欠陥を是正できるかということで、具体的な政策提言を行っています。その提言は3つあります。まず、第一に銀行の私的信用創造が経済の歪みや不均衡の根本原因なので、政府が公益事業として通貨を発行して、利子なしで社会や企業に供給すべきであるとしています。一国の生産と消費を均衡させるに必要な通貨の量という

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