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たまに受ける質問「絵本は毎日読んだ方がいいですか?」

神経発達症/発達障害のお子さん(未診断含む)を対象に評価や療育、相談の仕事をしています。

ご家族からたま~に受ける質問を紹介し、自分なりの考えを書いていきます。自分なりなので、参考までにとどめてください。

自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠陥多動症(ADHD)な子の親から…
「絵本は毎日読んだ方がいいですか?」

子どもが楽しみにしているのであれば読むといいと思います!
親子の気分や興味によっては、毎日必ず読めというものではないと思います。

絵本の読み聞かせが、就寝前の日課になっている未就学児対象であれば、続ける努力はしてほしい。子どもにとっては、生活パターンを変えない方が日々の安心につながるので。
読まなくて良い例としては、
●もうすぐ23時…
「今日は遅くに帰ってきて絵本を読むより、早く寝た方がいい。絵本は明日読もう」と省略して睡眠時間を確保した方が良い。
いつも通りを求める傾向が強い子に対しては、短い本をササッと読み切ってしまうのはアリ。
●読みあげる側の親が疲れている
「今日は疲れているから絵本は読めない、代わりに歌うね!」と読めない理由+謝罪+代替案くらい提示して、諦めてもらう。
親として罪悪感を抱く方もいるかもしれないが、些細な変化に対応することを子どもに経験してもらうのは悪いことではないと割り切りましょう。
親は機械ではなく人間なので、日々多少なりの変化は伴う。
同一性を好む子どもにとっては苦痛かもしれないが、我慢できないほどではない程度の変化を故意にもたらすことは、柔軟に対応する力をつけるためにも必要だ。
●子どもがそもそも絵本に興味がない、好きではない
絵本の読み聞かせは知育に良いというウワサは昔からあるが、子どもが興味を持っていないものを毎日しつこく誘うのはうっとうしいと思うので、一旦やめた方がいい。
発達途上でいずれ本を好きになる時期がくるかもしれない。子が絵本にハマったタイミングに合わせて、適切な絵本を部屋に準備したり子の読み聞かせ要求に応えたりすることがベストだと思う。
子が本を好きにならなかったとしても、知識や語彙は絵本だけに限らず他の媒体からも吸収できるので、気にしないで良い。

そもそも絵本が知育に良いとされる理由は、
①心の安定…親とスキンシップをとりながら、親と同じ物を見ながら、親の声を聴きながら過ごすことで、安心感があるのだろう。
②言語能力の向上…日常生活では言わなかったり聞かなかったりするようなワードが出てくるため、新規語彙の獲得チャンスとなる。
③ ②同様に、絵本の内容から新規の知識を獲得したり、文字の存在を知ったりする。
④想像力が育つ
⑤感情の疑似体験
⑥集中力が高まる
⑦他者のペースに合わせる経験
このようなメリットがある上に、手ごろな値段で棚に置いておきやすいので、絵本は手っ取り早く知育に使いやすいということだ。

それでは、絵本が好きではない子にどうするか。
上記のメリットは絵本だけではなく代替できるので、それで良いのでは?
①心の安定は、読み聞かせにこだわらなくていい。
親が子どもを抱っこしながら、「高い高い~」「低い低い~」と声をかけながら上下に揺らしてみるとか、手を繋いで散歩する際に「あっアリさんがいるね~」と話したりするのも同じような効果が得られると考えられる。
②③であれば、今どきYouTubeといった動画視聴でも得られる。子どもの興味や関心を強く惹きつける媒体なので、動画の方が習得機会が多く速い可能性もある。
動画視聴に抵抗がある場合でも、旅行やイベント等で普段の生活では使わないようなボキャブラリーを言い聞かせようと親が意識していれば良いと思う。また、遠方にいる祖父母や親せきに久しぶりに会うイベントでは、子どもにとっては初めて聞くことばに出会えることが多いのではないだろうか。生活スタイルが異なる人と触れ合うと、普段使うことばも違うことが多い。
④想像力は、人形遊びやレンジャーごっこでも良いし、粘土や廃材を使った工作、描画、音楽でも育まれる。
⑤感情の疑似体験についても、ごっこ遊びでダイレクトに経験できる。
⑥パズルやブロックなど他の遊びでも集中する機会は設けることができる。
⑦子どもは親の絵本を読みあげるスピードに合わせる、一方親は子どもの集中度合いや飽き具合、理解度に合わせて読み聞かせる際の工夫をする…これを他者に合わせる経験と私は捉えている。これまた、手を繋いで歩くことも互いに徒歩スピードを合わせる必要があるため、他者に合わせる経験だ。手遊び歌や普段の会話だって、互いに合わしているから成立するのだ。
ということで、絵本の読み聞かせによるメリットは他の活動で代替できるので、子または親が絵本好きじゃなくても問題なし!!!

ちなみに、子どもを親の膝の上にのせて読むスタイル
私は子育て中、このスタイルに固執しなかった。
なぜなら、子どもの表情見えないから。
飽きてきているな~ 眠くなってきているな~
そんな小さいイラストも見ているんだ~
気になるとこ、そこなの!!?
など、子どもの視線の先や表情から分かることはいっぱいある。
対面で読み聞かせをおこなうと、笑かす場面では笑顔でアイコンタクトがとれるところも好きだ。
良さげなことを書いたが、単純に膝の上に子どもがいると、自分の足がしびれるし、子の頭がジャマで文字を辿りにくいしといった理由も強い。

脱線ついでに、思い出したエピソードを一つ紹介する。
療育担当児の親より、「絵本を読む子になってほしいんです」
と相談?お願い?されたことがある。
療育担当児においては、絵本の選定や読み方について助言できることはいくつかある。
子どもの好きなもの/集中や意欲に合わせて台詞カット/繰り返しの台詞がある絵本をセレクト/ページをめくるタイミング/読み聞かせ声の調整(声量や抑揚)などなど。
絵本を読む子に育ってほしいと言われても、療育者は神様ではないので…。
まず、親も本を読んでいますか?読んでいるすがたを見せていますか?
自閉スペクトラムの特性があるお子さんでしたが、模倣が得意ではないからといって、より良いと思うヒトのすがたを手本として見せるに越したことはないと思います。
なんて、当時20代の私が40代の親に伝えられず…。

絵本好きな子といえば、一般的にはストーリーを楽しめることが前提であるが、発達障害特性が強い子の中には、
●ペラペラとページをめくる感覚遊びとして、絵本そのものが好きな子
●自分が指さしたイラストの名前を大人に言ってもらいたいといった、返答のこだわりを持つ子。これを指させば絶対に「うさぎ、ぴょんぴょん」と親が言うから安心という意味を持つ子もいる。
ページが破れてしまうから、“この名前を言え言え”としつこい要求がうるさいからと絵本を子の目に入らないところに片付けてしまわれる方がいらっしゃいますが、少し時期が経てば元の遊び場に戻してくれるといいなと思います。この時期も、絵本キライにならないように関わることが大事ですよね。

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