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40過ぎてからの起業・僕じゃなくて妻の話

「この先、どうしようか」

鰹風味出汁の顆粒だけで作ったスープに魚の白身の破片しか入っていない雑煮を二人で食いながらため息ついていた。

あれは今年の元旦のことでした。

重々しい空気の中で小一時間話し合いました結果。

他人の会社のために頑張って他人様の蓄財を助けるために奴隷になるよりは、自分で出来る事でビジネス立ち上げた方が精神衛生的美人になる上に心が富貴だ。

「絵描きになりたかったんだな。どうせ真面目に仕事しても、ポルトガルでは詐欺みたいな出版会社しか雇い手がいない。貰う金も香典程度でスズメの涙。失うものは何も無いんだし、いっそのこと自分で起業してしまえ。却って明るい天地に出るかもしれないぜ。」

奥さんはマイ出版社を起業することにした。

っていうか、夫の俺がここで「大丈夫だよ。お金のことは僕がなんとかするから、君は何もしないで、ずっとゆっくりして良いんだよ」って責任の無い見栄でもはって点数稼いどくタイミングだと言う考え方もあるかもしれない。

しかしながら、男女平等のこのご時世。明治時代じゃあるまいし、女性だからと言って、家事育児洗濯だけに専念するだなんて勿体無い。

どうせならば、仕事も趣味も家事も楽しく二人で一緒に楽しくやってた方が、これから生まれてくるであろう子供の教育に良いはずだ。たぶん。

「重くなるとも持つ手は二人 傘に降れ降れ夜の雪」なんて都々逸が昔からあるようですが、重荷は二人で分散すればリスクも半減。景気良いときは家族で分かち合う。そうすりゃ家族全体への無駄なストレスも減るってもんです。

俺が落ち目の時、奥さん上がり目。奥さんが落ち目のとき、もしかしたら俺が上がり目になるかもしれない。そうやって敢えてずらした波を作っておけば、どちらかが必ずやってくる停滞期に堕ちていても、良い感じになんとか補えるはず。そういった目論見もございます。

さてさて、肝心のサービス内容は、本作るとか、イラスト描くとか。他にも考えられることはなんでもサービスメニューに追加。SNSプロモ、Wixなどのウエブサービスを使ったサイト制作支援、他に何がありましたっけ。

当面は、去年、控えめに言って無垢で純真、つまり白痴で馬鹿なわたくしどもに関わってしまったばっかりに痛い目にあわれてしまった、可哀想な被害者、、、いえ、例の破産しているポルトガル人詐欺師から、滞っていた給金として事ある毎に少しづつ渋々支払っていただいた総計約10万円と数人の得意先を引き抜かさせて頂いているからなんとかなるとして、独自に新規顧客を開拓しないと先が続かない。というわけで、

思い立った日が創業元年・資本金元手ゼロ円起業

商売は、まずは集客しないと始まらない。友達・知人に手当たり次第尋ねても「誰かいたら連絡する」とだけ言ってくれるだけありがたい。その後の音沙汰全然なし。世の中そんなもんです。

金ないでしょ。コネも無い。知恵や才能もなければ美貌も無い。どうしたら良いんだって言うんで、足しても引いてもどう考えても足りない頭をなんとかして使う。SNSやるしか無い。

今の時代、起業するのにインスタ抜きは考えられない

奥さんは、直ちに自分の会社のロゴを作ってインスタグラム始めました。元々、趣味のBBSサイト運営とか、ロゴ制作とか、その手の事で器用みたいなんです。奥さんはそこ辺りの強みを生かしてどんどんやってます。暇がある日は欠かさず何かを投稿し続けてます。イラスト描いてるところの動画とか、過去のイラスト作品とか、提供するサービス内容の宣伝などなど。

俺はっていうと、まあ、なんですか、奥さんが仕事やってる側でウロウロしながら、ああだこうだ、思いつくままに好き放題アイディア言い放って、ハグハグするくらいで、飽きたら何もいわずにどっかに行く。猫よりタチが悪い。

まずはじめにウエブサイトを作るだなんてもう古い

今の時代はフェースブックページかインスタグラムやった方が宣伝が簡単だし、何しろ興味ある人がすぐにでも見にきてくれる。興味があったら「良いね!」押してくれて、投稿したら即座に反応がわかる。どうりで僕のウエブ業が干上がっているのも仕方が無いです。

奥さんは、他のイラスト仕事の合間にこつこつインスタグラムのフォロワーを増やしていきました。三ヶ月たった今、現在のフォロワーが約400人。結構良い感じの育ち方です。

そんなこんなで、なんと、先日、インスタを通して一人目のお客様を獲得しました。

でもやっぱり足使った営業はいまだに鉄板だった

他にもやった事は名刺配りでした。

恥ずかしがって躊躇する奥さんの手を引っ張って、近所のお店に入って名刺配り。

カフェや飲食店では、まずは客になってからセールスすると心証がよくなるらしい。せめてビールやジュースを注文して暫く数分でも良いから客になってから、名刺を渡すのが礼儀ってもんです。

あれから一ヶ月。忘れた頃になって、突然レストランのオーナーからフェースブック経由で連絡があった。「SNSのプロモーションを手伝ってくれないか?もちろんお金は払うから。」

地元の飲食店向けのSNSプロモーション事業

いま、ポルトガルは観光地としての人気が急上昇中。というわけで、主な観光地であるリスボンの宿泊施設が逼迫する中、周辺の都市にまで観光客が流れてきています。

最近は、夏になると外国人の家族や若者のグループをよく見かけるようになりました。9月にはリスボンでウエブサミットが開催されますので、違った雰囲気の方を多く見かけるようになります。

この街にはホテルと言える施設がなく、普通のアパートを改装したのが一件あるだけなので、おそらくは殆どがAirbnbの利用者ではないだろうかと。

便利が良いリスボンから離れたところに位置しているということで、当然ながら宿泊先とは別に食事処が必要となります。

リスボンの郊外にあるこの街は元来20世紀までは工場などが立ち並んでいた工業地帯で、今では第二次産業の衰退により活気が全くなくなってしまっていて特徴に乏しい。地元のレストランは観光客にとっては入りづらく、数もそれほど多くは無い。

となると、ピークシーズンにはかなりの潜在客を見込める事となります。

外国人観光客がどうやって現地で飲食店などを調べるのか。数十年前までは、ロンリープラネットとか地球の歩き方みたいなガイドブック本を頼りに海外旅行をしていたものですが、今ではスマホ一択。ネットに情報載せるか載せないかで命運が決まってしまいます。グーグルで見つからなかったら、この世に存在しない事と同じ。

今年の客が旅行計画をたて始めるのは、早くて来月の4月辺りから。現地についてから情報をスマホで調べる潜在顧客を掴むためにもSNSにも写真やレビューなどのコンテンツをある程度集積する必要がある。SEOの必要もあるし。全て整えるには数ヶ月掛かる。今は始めるのにちょうど良い時期だ。

「旦那、もしかするとワンチャンありますぜ」

実は、今回依頼を受けたレストランの立地。これまでにも誰かが店を開いては半年以内に潰しているのを繰り返しているという、曰く付きのロケーションであります。

風水が悪いのか家相が悪いのか、よく分かりませんが、なぜかよく潰れてしまう。現オーナーは店を開いてから暫くするまで知らなかったそうです。

いまやSNSプロモが鍵握ってるのは当然。曰く付き立地でも、もしかしたらソーシャルネットワークできちんと宣伝して、内装外装も手抜かりなくしたら客は見込める。

奥さんは、早速インスタグラム、フェースブック、ツイッター開設し、グーグルマップ、ゾマト、イエルプ、トリップアドバイザーに写真付きでお店のプロファイルを作成しました。ググったら、登録3日目には依頼を受けたレストランが検索結果に出てきてる。

SNSサイトなどにアップロードする写真は、やはり安価なスマホやタブレットより、安いカメラの方が見栄えが良い。奥さんの友達に借りた安いカメラで、奥さんと交代しながら料理写真を撮影しました。

お店のプロモーション動画も作った(俺の趣味のため)

僕の趣味で、プロモーションビデオも作りました。今年は、カメラ使って何か仕事つくりたかったので。

音楽はAIでランダムに作ってくれるjukedeckを使用。借りたカメラにはマイクを接続できません。録音したインタビューが聞き取りづらいので、オーナーが喋っているポルトガル語をテキストにするのは奥さんに頼みました。編集時間は開始から字幕入れして書き出すまで30分。できたらすぐに奥さんが早速SNSへ投稿。

動画に無駄な閃光の特殊効果みたいなのが見受けられますが、特別に洒落た事をしたわけでなく、あれはカメラの性能によるものです。色がなんだかアレですが、これもカメラのせいです。特に綺麗でもなくアマチュア丸出しです。技術面と機材面は今後の課題ということで。

今後の展望

食い扶持ってのは、見つからないときは本当に見つからない。

調子が良いときは頼んでいないのに向こうからやってきて、代金を送るのは少し待ってくれと言うほど景気が良いときもある。

ただ言えるのは、どんな職業であれ定収入に胡座かいて何もしていないと、きっとそのうち低収入。少しづつ墜ちていって、じきに本当に梲が上がらなくなってくる。人間、使わない自由でもいざ使えなくなると、本当にストレスとなります。ストレスたまると余計物事がうまくいかなくなり悪循環。

普段から趣味でもなんでも色々とやっておいて後に繋げた方が、結句楽だと思います。