出稼ぎの国・幸福な国
今に始まったことではないけれど、若者に対して冷遇しすぎ。
「このままでは国に殺される」と気が付いた若者は真っ先に海外へ。
さらに数年後、日本経済は悪化し続け、うっかり日本に残っていた若者も、日本よりはるかに高賃金が稼げる国へ出稼ぎ。低賃金でも真面目に働く日本人は世界中で大人気。世界中の低賃金労働は日本人ばかりに。
日本に残ったのは老人ばかり。雀の涙の年金を補うのは出稼ぎ送金。頼りになる若者が身内にいれば生活は安泰だけれど、そんな老人はごくわずか。
食べ物はとりあえず空き地(というか空き家)で自分で作る。とても美味しい有機野菜。
道路も鉄道も修理する人手も金もないから荒れ放題で移動は徒歩のみ。移動できる範囲で生活する。
電気も水道も維持できず、夜は真っ暗で、水は井戸頼り。井戸の周囲にコミュニティができる。井戸端会議の復活。
インターネットも維持できず、海外からの送金も不可能になる。
若者が残していった衣類などを再利用。究極のエコ生活。
100%ギフトエコノミー。
病院も機能しないので入院できないから、みな自宅で最期を迎える。
お役所仕事はAIがやるので(やるのは年金の支払いのみ)、老人たちは自給自足に近い“豊かな”生活を満喫。
幸福度ランキングも世界一位をキープ。ひとびとは「人間らしい生活ができる」「伝統的な日本の暮らしだ」「豊かさは金では買えない」と笑顔を浮かべる。ひとびとの暮らしはドローンで世界中へ紹介されるが、ひとびとが世界中の情報、というよりも徒歩圏以外の情報を知ることはない。
(もちろん人口は減るばかり。日本への定期便もなくなる。文字通りの孤島になる。若者は帰れない故郷へノスタルジーを感じるだけで、実際に帰りたいわけではない)
めでたしめでたし。
(老人が死んでも口座に年金が振り込まれ続ける。振り込む現金がなくなり、AIも停止。これが日本最後の日)