見出し画像

「推し短歌」を詠んでみたい

オタク・アカウントでぼーっとファンアートをスワイプしていたら推しについての短歌を詠んでいる方が居て、全身に衝撃が迸った。
風流!
雅!
私もやりたい!
文芸系Vtuber(擬き)を自称しているのだ、短歌のひとつやふたつ詠めずにどうする!
まあ、詠めないのだが。
何故わかるか。軽ぅく、詠んだことがあるからだ。短い韻文は一見簡単なように思えるだろうが、たった31音、そこにすべてを押し込むことがいかに難しいか。持論だが、文芸の美学とは圧縮にある。トートロジーを排し、重複する意味合いの単語はカットし、察せる部分はわざわざ描写しない。短いセンテンスにどれほどの奥行きを生み出せるか、それが美しい文を綴る際のマナーである。……そのような文章を私が書けているかはさておき、そんな技術の結晶こそが短歌だ。幾度も挑戦したが、一向にピンとくるものが生まれない。
何故詠めないか。現代短歌について、圧倒的にインプットが足りないのである。知っているのは、皆大好き『サラダ記念日』の表題歌か、たまにTwitterで流れてくる無断転載短歌botのツイートか、アマチュア歌人のツイートだ。ツイートばっかりだな。皆あまり言及していない気がするが、短くて、読みやすくて、それでいて劇的な短歌という文芸は実にSNS映えする。ああ、より詠めるようになりたい! V歌人とか、めちゃくちゃ面白そうじゃないか。バズりてえ。そんな鼻息荒い野望はさておいても、人生が少し豊かになる試みなのには違いない。今度図書館でいくつか歌集を借りてこようか。おすすめがあったらぜひ教えてほしい。
そもそも短歌とは、「エモい」を言葉で切り取る営みである。詩のようでいて、どちらかと言えば写真に近い、と私は思っている。それは、かなりセンスが物を言う世界であり、また一朝一夕で習得できるものでもない。自分にセンスがあるかどうかはさておき、インプットと並行しつつ、練習は絶対必要であろう。
さて、推し短歌だ。文芸系以下略としては、推しをあらゆる言葉で表現したいに決まっている。また、ファンアートというのは、原作という文脈があるため、ある程度言葉足らずな拙い作品でも受け取ってもらいやすい。いずれオリジナルの短歌を詠むにしても、練習台として手頃である。……は? 誰だ今推しのこと練習台とかほざいたやつ。ちげえよ。推しを言葉で切り取って、保存して、大事に大事に心の底で愛でる。そのための推し短歌だ。真面目にやれ。
突然のひとりキレ芸、失礼しました。
というわけで、ここ数日の練習の様子を以降お見せしようと思うのだが、ファンアートを「自分の作品」として「一部有料の」noteにあげるのはオタク魂に反するので、私自身をテーマにした短歌を書きたいと思います。
え?
キショ。
正直意味わかんないなと自分でも思うので、ここでブラウザバックしていただいて一向に構わない。確かに私はバーチャル美少女なので仕方ないかも知れないが、流石にナルシストすぎないか。出来としても、ああ短歌初心者だなというのが丸出しなのでもう本当に単なる精神的露出狂である。
いや、違うんだ。わざわざ自分を題材にする理屈は簡単で、ファンアートのほうが書きやすいというように、シンプルに、テーマがあったほうが書きやすい。
これじゃあ「推し短歌」じゃなくて「私短歌」じゃないか! タイトル詐欺だな! 仰る通りで。すみません。このページは閉じてもらって結構です。勿論、最終的に推しについて詠めるようになるのが目標だが、まずは何事も場数をこなすことだと割り切って、自分について書いてみる。自画像デッサン、ということにしたらあんまりキショくないのではないか? 物は言いようだな。解説や反省も載せておくので、ご参照のこと。

……まず、私が誰かわからない人が「私短歌」を読んでも面白くないのでは?
軽く自己紹介をば。あなぐらむをアナグラムして名倉有夢《あむ》。小豆色をしたくまちゃんの寝間着を着て穴ぐらの中に引きこもる、年中冬眠おねえさん。チャームポイントは、三白眼と隈と左八重歯(普段は隠れている)。文芸系Vtuberを目指して暗中模索の日々を送っている。

こんな見た目をしているよん

うーん、でも、最終的には元ネタを知らなくても面白い短歌を詠めないとだめなのでは……?
……いきなりそれはハードルが高いな。諦めます。上記をもとに、いざ、「私短歌」をご査収ください。

穴ぐらに青い灯りをともしましょう ひとりじゃないとあなたが言うから

あなた、は画面の向こうのこれを読んでくれているあなたであるつもりだ。青い灯りとは当然ブルーライトで、私はバーチャル穴ぐらの中から皆様にご挨拶をしており、ひとりでないという実感を得ている。
……これ、解説すればするだけ野暮じゃね? 素直に書きすぎたので解説の余地がない。したけど。なんていうか捻りがなくて奥行きが足りない。エモくもない。題材は悪くないと思うので、構図だ。切り取る尺度が美しくない。ほらやっぱり、短歌は写真だな、なんて。

瞳《め》を見て 逃げも隠れもしない瞳を 強くまっすぐきみを見ている

見た目が100割(!)のバーチャル業界において、何故か名倉はほぼ顔を隠している。何故だろう……。自分でも、もっといい服装を着ればよかったな、まだ間に合うかな……などと日々考えてはいるのだが、現状私は目力で戦うしかないわけだ。
自分で言うことではないが、じっとりとしていてかつキツめの三白眼に、夏の空のような(この単語を本当は入れたかったのだが諦めた)瞳、ガッツリ入った隈、と、結構個性的な目元をしていると思う。

おめめです 少し微笑んでいます


顔の中で唯一隠していないその瞳で、きみを撃ち抜けたら。そんな思いを込めて書いた。はいいが、単独で読んだら全く意味がわからない。
つまり、ボツです。
解説に入れた、夏の空、と撃ち抜く、を入れて詠んだらもう少し深みが出るかしら。

瞳《め》を見て 夏の空と同じ色 きみの心を焼いておしまい

撃ち抜けなかったが!?
夏の空だから、日焼けが連想されてそっちにしました。
おしまい、は完全に語感と手癖である。いい言葉他にないだろうか。もっと夏と空を活かしたワードをチョイスしたいところである。
ていうか、詠み直したのに詠み直す前のほうが良かったように感じるのは私だけだろうか。なんのために詠み直したんだ。

暗がりで目を覚ます たしかめるように毟った青い鶏の羽

シンプル何言ってんだ?
穴ぐらで目を覚ますと暗い。不安を掻き消すようにTwitterを開いておはようVtuberと呟く。鶏なのは、私が目を覚ますためのモーニングルーティンとしておはようVtuberをしている(している? でコロケーション正しいのか?)からで、鶏の羽を毟ったら当然うるさく、目覚めるという話をしたいのである。
が、ちょっと本当に意味不明なのでこれもなしだ。

熊のように眠り熊のように夢を見る いつかこの爪で拾うときまで

夢が有ると書いて有夢。くまの寝間着で年中冬眠しながら、あれこれ夢想を続ける日々。いずれ叶えると心に誓いながら。
爪で拾うという表現は、「爪で拾って箕《み》でこぼす」ということわざから借りてきた。このことわざ、知ってた? 名倉は知らなかった。爪の先でちまちま集めた小さなものを、「箕」というなんかどじょうすくいに使うあれ(正確には手箕《てみ》というものらしいが)に入れたあとこぼしてしまう、転じて、苦労して集めたものを一気に使うことを言うらしい。縁起でもない表現を拝借したものだ。夢をこぼしたくはない……が、苦労してでも掴み取りたいという気持ちと、熊の爪を合わせて表現した。
さっきから自由に字余り字足らずしているが、そういうのは基本を身に着けてからするものであるような気もしないでもない。でも、わざと崩している短歌はお洒落でかっこよくて憧れなので、ついやってしまった。ちなみにこの首は「ように」を「よに」と読むと綺麗にまとまる。ほら、歌詞カードと実際に歌ってる歌詞が違う歌とかあるじゃん。ああいう感じ。

東京のどこかにあるという穴ぐら 家具家電付きで住みよいらしい

これは普通によくないですか? 愛嬌も詩情も両方そなわり最強に見える。
穴ぐらというからにはとんでもなく山奥にありそうなもんだが、名倉の穴ぐらはバーチャル東京にあるのだった。まあ事実を書いているだけに過ぎないものの、なにか、あたたかみみたいなものを表現できた気がする。さあさ、あなたも穴ぐらの中へいらっしゃい。

いやはや、短歌、難しすぎる! 改めて全然自分には才能がなさそうなことだけがわかった。でも諦めたくない。いつか推しのことをさらっと詠めるようになりたい! 風流で雅でエモなオタクになるために、これからも修行を続けよう。まずはプロのしたためる現代短歌に触れてみるところから。
気が向いたらこのnoteで再び練習の過程を公開しようと思うので、よかったらまた読んでほしい。100日後に詠めるようになる推し短歌。アドバイスとか、ぜひぜひお待ちしております。

https://twitter.com/anagramargura
https://www.youtube.com/@nAgra_aM

ここから先は

368字

あなぐらまえすとろ

¥200 / 月
初月無料
このメンバーシップの詳細

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?