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ファーストセット 第3のリベロ Vol.40

駅のベンチに腰掛け、構内のセブンイレブンで買った枝豆とひじきの豆腐バーの真空パックを剥がす。夜も10時を過ぎれば電車の間隔は開き始め、接続の悪いときは乗り換えの合間に食べきれる。ウィダーinゼリーの日もあれば、同じ豆腐バーでも「おから」にした日もあった。新たな配属先での暮らしもひと月近くが経ち、忙しさのあまり旺盛な食欲も無くなったいま、こんな粗末な夕食も何度目か。

大幅に制限された余暇の時間。貧弱な頭は疲弊して、読書する余力を失った。クドカンの「季節のない街」も、WOWOWオリジナルドラマ「TOKYO VICE」のシーズン2も、録り溜めたままになっている。後半途中からの視聴を強いられたU23アジアカップの日韓戦は、終盤のセットプレーから日本が決勝点を与えた瞬間を、寝落ち寸前に追いやられた耳目で確認するのが精一杯だった。

暗闇のなか、長い道のりを低速で進まなければならない。現在の状況を例えるなら、そんなところか。仕事が特にしんどいのは、右も左もわからず、ゴールへの道筋が見当もつかないときだと思うが、出来の悪い人間が未経験の仕事に向き合えば、絶えずそんな状態に陥る。後期高齢者になった母の負担を軽減できればと、夕食は済ませて帰る日が増えたが、行ってみたかった洋食屋のハンバーグは生ぬるく、久しぶりの老舗の中華も悲しいくらい味が落ちて、憂さ晴らしとはいかなかった。

いろいろ積み重なった先週半ば、急きょ仕事を休んでしまった。とても休んでいる場合ではないのは承知のうえで、疲労がこじれないうちに一息つかせてもらった。仕事に疲れ、生活が疎かになる。何より避けたかったことが、日常になりつつある。このひと月あまり、ヴィッセルとチャンピオンズリーグ以外に愉しめたものはあったろうか。こんな日々で、私の生活における「ファーストセット」があぶり出されているのかもしれない。このnoteを綴るひとときも、そのなかにとどめておきたいものだ。


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