まともじゃなくても生きていきたい『コミュニケーション不全症候群/中島梓』
まともって何だ。
中学生ぐらいから今まで漠然と考えてきたことだ。
まともとは社会に適応できていることだと思う。そう考えるならば、私は社会に適応できていない、まともではない人間だ。
小説家でもある中島梓さんが書いた評論だ。30年前に刊行されたが、現在の社会や人間のことを思うと作中でまるで予言していたかのような言説も見受けられる。
おタク趣味やダイエット、BL作品を好む少女。これらはいまの社会へ「過剰に適応」した結果だと中島さんは書いている。そして「過剰に適応」することが、なぜおタク趣味、ダイエット、BL作品の愛好につながるかも書いている。
ここまで読んでいて不安に思った方へ断っておきたいのが、中島さんはおタク趣味やBL作品を好むことについて「そんなのおかしい」と非難しているわけではない。むしろ今の社会において、そうなってしまうほうが当然なのでは?とすら言っている。
一方で「ダイエット」については警鐘を鳴らしている。それは明確に健康を害し、命の危険も迫ることだからだ。
なぜ「ダイエット」をこんなにもやらなきゃ、と思う人が多いのか。また刊行当時は女性が「ダイエット」をしている風景が多いときだが中島さんは男性も「ダイエット」をするようになってきた。するようになるとも書いている。
「ダイエット」というのは数値的に健康の心配があるからすることではなく、美容目的の「ダイエット」ということだ。少女(女性)を巡る「ダイエット」のあれこれも「過剰な適応」である。
少年や少女をここまで追い詰めるものの正体は何なのか。
そしてその病巣である社会と向き合っていくためには。自分の病をしっかりと知ることと、知らないままでいるとどのようになってしまうのか。
目次の最後の章にある『コミュニケーション不全症候群のための処方箋』で、それまで述べたことへの処方箋が出される。
この章は中島さんが少年や少女に、そしてかつて少年や少女だったあなたへ向けてのやさしいく厳しく、たしかなメッセージを記してくれている。
まともじゃなくたって生きてい期待!そう考えるあなたへの一冊。
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