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『大丈夫』という言葉

私たちが日常でよく使う言葉として『大丈夫』という言葉がある。

誰かがこけたとき、しんどい時、課題に追われているとき、私たちは決まってこう尋ねる。「大丈夫?」と。そして相手もたいていの場合「大丈夫」と膝から血を流しながら答えてくれる。

それは大丈夫ではない。

誰かに「大丈夫?」と尋ねながら「まったく大丈夫ではないよな~、膝から血が出ていて大丈夫なわけあるか!」と思いつつ、私は懲りずに「大丈夫?」と尋ねるのだ。

逆もある。私がおなかが痛いとき、友人が「大丈夫?」と心配してくれる。その時私は「大丈夫・・・」と痛いおなかを抱えながら答えるのだ。大丈夫なわけがない。なぜなら『大丈夫』の意味は

あぶなげがなく安心できるさま。強くてしっかりしているさま。(コトバンク)

・・・私は今すぐ暖かくして横になりたいの!!よって私は大丈夫ではないことがわかる。素直に「大丈夫じゃない。横になりたい」という旨を伝えたらよかったのだ。強がる必要はない。(強がっているわけではない。周りの人に心配をかけぬようにとする優しさだ。きっと。)

これには聞く側にも問題がある。大丈夫ではない人に「大丈夫?」と尋ねるのは、壊れている橋を目の前にして「この橋渡れますか?」と聞くようなものだ。ではどうしたらいいのか。私はこの問題を解決するべくひそかに実行していることがある。しんどそうな人には「ちょっと休憩する?」、おなかが痛い人には「それは胃の痛み?腸?なんにせよお腹あたためよう」等。これは先回り作戦である。相手が求めていそうなことを先に私が提案する。もちろん相手に「大丈夫だよ」と言われることは多々あるが、ぶしつけに「大丈夫?」と聞くより、断然いい気がする。

ほかにも『大丈夫問題』はある。例えば本屋さん。会計の時にお店の人は「カバーおかけしましょうか?」と聞いてくれる。カバーいらないな、と思ったとき「大丈夫です」と答える私。しかしこの『大丈夫』、二通りの受け取り方があるのだ。

・「大丈夫です」=このままの状態でいいです。結構です。

・「大丈夫です」=(カバーをかけてくれることに対して)こちらは全然オッケーです。お願いします!

ンーーー。紛らわしい!

たいていの場合前者の意味で使うことが多いが、紛らわしいので「お願いします」や、「いりません」に変更だ。

そろそろ『大丈夫』がゲシュタルト崩壊しそうになってきた。呼吸をするように大丈夫を連呼する日々。本当は大丈夫ではなかったり、本当に大丈夫だったりと、『大丈夫』は実に紛らわしい使い方をされている。本当に大丈夫な時こそが『大丈夫』の出番だ。強くしっかりと「大丈夫!」と言いたい。



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