気持ちを言葉にする①
昨年7月に私は約半年間に渡る抗がん剤治療をカナダのモントリオールで終えた。辛い治療であったが、その後は楽に過ごせるだろうと私は高をくくっていた。
しばらくは食べたいものを食べ、抗がん剤治療ですっかり衰えてしまった体を元に戻すためにヨガや筋トレやウォーキングなどに精を出していた。また抗がん剤治療の副作用である手足のしびれも、少しづつ治っていくだろうと思っていた。
しかし食欲は元に戻ったものの、しびれは一向に良くならずかえって悪化しているように感じられた。朝ベッドから起きるために足を床につくと、長時間正座をした後のように足はしびれ、ひどいときは足を床につくのが辛くなった。
ウォーキングをしても足の裏にたくさんの針が刺さっているような痛みがあり、まるで剣山の上を歩いているようで日に日に歩くのが憂鬱になっていった。手もしびれにより感覚が鈍くなり、洗濯物が湿っているか乾いているか判断できなくなってしまった。
しばらくは気づかないふりをして我慢していた。自分でそれを認めるのが怖かったからだ。でも段々我慢ができなくなってきて、とうとうネットでガンのしびれについて詳しく日本語で書いてあるサイトを検索するようになった。いろいろ検索していくうちに、しびれに対しては人それぞれ副作用の出方が異なることがわかった。ある人は、抗がん剤治療が終わるとすぐにしびれは収まったという。別の人は治るのに2~3年かかったといい、また7~8年かかったという人もいて、ずっと続いていてあまり良くなっていないという人もいた。
私はとても不安になり夫と共に病院に電話をした。でも抗がん剤治療が終わってしまった私に対する看護師の対応はさっぱりしたもので、「しびれが急に治る奇跡の薬なんかは存在しない(時間をかけて治っていくものだから)」と言われてしまった。私は絶望的な気持ちになった。せめて医師に会って、ゆっくりだけど治っていくから心配するなとか定期的に様子を見ましょうとか言って欲しかった。
私はもう抗がん剤治療の科では診察してもらうことはできないようで、代わりにペイン(痛みを専門とする)クリニックの予約を取っておくといわれた。私はなんだか今まで親切に対応してくださっていた医師や看護師から一気に見放された気がして、怒りと悲しみでいっぱいになった。
(つづく)
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