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今日ときめいた言葉12ー「勝てないけど負けないを目指す」覚悟が問われる時代

(2023年1月1日付 朝日新聞「『覚悟』の時代に」宗教学者 山折哲雄氏の言葉)

日本人が覚悟を求められるときに使う言葉 ー「死ぬ覚悟で」

「死」と「覚悟」が結びついたのはなぜか?
戦のなくなった世の中で武士が主君にどのように忠誠を尽くせばよいのかを強調するために、死が注目されたと山折氏は言う。さらに転機になったのは「葉隠」で「観念的に過激化させた思想」が、

「武士道というは死ぬ事と見つけたり」

である。しかし、「葉隠」には、勇ましい形で死の覚悟を促す生き方の他に、もう一つの生き方が示されていると言う。

「浮世から何里あろうか山桜」

これは武士が武士の理想を実現できない状況に置かれた時に、このように山里で花鳥諷詠の文化を心の支えにしながら生きて行くという生き方である。

「閉塞感の中で思想を過激化させたのが『死ぬことと見付けたり』だったとすれば、価値ある死を選ぶという誘惑を退けて、『勝てないけど負けない』」覚悟の生き方も葉隠は示しているのだと。

実際、日本は明治になる前の千年をそのように生きてきたと言う。

「圧倒的な中国文明のもと、ずっと日本は『従属せざるを得ない状況下で、いかに自立をするか』を探ってきました。従属と自立という矛盾を前に、両者のジレンマの中で千年間、我慢しながら耐え抜いていたのです。そこには『勝てないけれど負けない』を目指す、現実的な姿勢がありました」


深い言葉だと思う。「葉隠」に、このもう一つの生き方が示されていたことはつゆ知らずであった。現代を生きる私たちの心情に強く訴える言葉ではないだろうか。

「勝てない」は一見全てを諦めた敗者の弁のように聞こえるが、それに続く「負けない」という言葉には強い意志を持って生き抜くとの決意あるいは覚悟がある。

日本の国の進むべき道もここにあるように思うのだが・・・。

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