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今日ときめいた言葉181ー「自分の意思で受け流すのと受け流さざるを得ないのとは違うから、、、。」

(ヘッダーは「気ままに自営」サイトから転載)

またまたNHKの朝ドラ「虎に翼」からの言葉である。このドラマから発信される言葉が毎回心に刺さる。

このセリフは以下のような背景があって発せられた。

裁判所で支部長を務める主人公の部下の事務官が町の有力者から言われた言葉(彼の触れられたくない心の傷を逆撫でするように繰り返される言葉)に逆上して暴力行為の挙に出てしまった。それを町の弁護士が穏便に済ますよう話をつけてきたからもう解決したと自慢げに言ったことに対して、主人公は法律や規則に則りきちんと処分をすると突っぱね、相手を不快にする。それはなぜなのか、その理由を語る。

主人公の言葉ー全文引用

「この仕事をしている以上どんなことを言われても手を出しては駄目。ひどい相手と同じ次元に落ちて仕返しをしては駄目。

だからしかるべき処分を受けるべきだと思った。穏便に済ませたりして、ああいう人たちに借りなんて作ってほしくないから。

あなたを確実に傷つけて心にできたカサブタをことあるごとに悪気がなく剥がして行くような人たち。

自分の意思で物事を受け流すのと受け流さざるを得ないのとは違うから。私がいなくなった後も、この件にあなたが縛られないように、したいようにできるように、怒りたい時に怒ることができるように。そう思って処分しました」

このシーンは「世間」と「法」のせめぎ合いと見ることもできる。主人公は世間の言う正義に流されず、あくまで法律に基づく正義に則り対応した。

阿部謹也氏は、その著書「世間とは何か」で、日本の構造を以下のように論じている。

「日本での正しさの基準は、結局のところ神でも科学でも法でもなく、世間の風向きである」
(2022年8月26日朝日新聞「世間に人権思想はあるか」神里達博氏の記事から)

だから世間は危うい。世間の風向き一つで正義の基準が変わってしまうのだから。さらに世間は個人の尊厳に基づいていないことで、おうおうにして、人権や自由や正義に対する意識が希薄であり、ないがしろにもされる。

この朝ドラのような事態は、今の我々の日常でも当たり前のように起きている。地方と中央の政治家の関係でも、政治家と官僚の間でも、社内の上司部下の関係でも。自殺にまでいたる陰湿さ。世間の掟に抗いあくまで法律に基づいて対処した主人公の毅然とした姿に襟を正した。昭和27年という時代設定とは言え、十分に今日的問題を扱っていると思わせる。だから我々に訴えるのだと思う。

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