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【制作過程】 AmPm - Pink Lemonade feat.The Attireが出来るまで

2020年7月29日にPink Lemonadeという楽曲をリリースしました。今回のボーカルはニューヨーク出身の二人組、The Attireというアーティスト。
初夏を感じさせるトラックに、The Attireの甘い声が入り、Pink Lemonadeという楽曲タイトルらしい楽曲に仕上がったと思います。
せっかくnoteを始めたので、この楽曲ができるまでの背景などを書いていこうと思います。どうしてもメディアの方々に書いていただくインタビューだと、カットされる部分も多数あるので、寄り道多めの文章になりますが、それも含めてこのPink Lemonadeができるまでの背景だと思うので、ありのままに書いていこうかと思います。

| 2018年6月

2017年3月にBest Part of Usという楽曲をいわゆるインディーズという立場でリリースをし、自分たちも驚くスピードで、Spotifyを中心に世界中の方々に聴かれる状態になりました。その間に国内外の色んなレーベルから声をかけていただくなど、デビュー時には想像しなかったようなことが次々起こります。
2018年の3月から4月にかけては、世界的ダンスイベント Ultra Music Dance Festivalに出演するためにマイアミに飛び、常夏陽気のマイアミを満喫し、そのまま雪が残るニューヨークに飛び、いくつかのミーティングと初めての単独ライブをニューヨークで開催するという、まるで売れっ子のような体験をしました。ニューヨークの中心にそびえ立つビルに入居しているようなレーベルに行ったり、移転したばかりのSpotifyのオフィスに行ったりと色々あり過ぎて、自分のgoogleカレンダーを見返しても記憶が曖昧な程です。
デビュー時から国内は意識せず、世界を目標に...というわけではないですが、世界中で聴いてもらえればいいなくらいの気持ちでいましたが、この一連のアメリカでの出来事が、改めて海外と勝負しなければいけない、勝負したいという気持ちが芽生えたのは確かです。一方で、これまでぼんやりしていた世界との壁の厚みや高さ、具体的な課題も見え始めたのもこの頃でした。
こうした課題を解決する一つとして、海外で楽曲制作をしようという話になり、帰国後すぐに段取りを組んで、6月に再びアメリカに飛びます。今度はロサンゼルスです。今でも変わりませんが、私たちはアーティスト活動以外にも色々な仕事をしていますので、この間も幾つもの仕事を抱えていました。ロサンゼルスへは、AmPmの片方(通称:AmPm左)が、他のプロジェクトの都合でどうしても行くことができず、AmPmの一人(通称:AmPm右)と私たちの楽曲をたくさん手がけてくれるChocoholicとレーベルのA&R、マネージャーの4人でロサンゼルスに向かいます。前置きが長くなりましたが、このロサンゼルスで制作した楽曲が、今回リリースしたPink Lemonadeになります。

| 1週間で5曲

特に納期が決まっていたわけではありませんが、滞在期間が約1週間という非常に短いなか、楽曲制作だけでなく、出版社やレーベル等ともミーティングをこなしながらの滞在でした。事前にChocoholicさんには、楽曲のラフを作ってきてもらい、それを元に現地で合流したアーティスト達と楽曲を作り上げていきます。事前にAirbnbで予約をしておいた、大きな一軒家をLA滞在時の拠点としながら、日中はスタジオに向かい、夜になったら拠点でも各々作業をするという日々が続きます。いわゆる制作合宿です。しばらく時間が経過したこともありますが、この拠点での思い出があまり浮かびません(笑)

| 1曲目 All For You / V6

最初に入ったスタジオは、コンテナを積み重ねて作られたような、数人入ったら身動きが取れないような小さなスタジオ。いわゆる歌唱部分のトップラインを手がけるArnerと編曲家のBaneと共に制作を開始。
事前に持ってきたいくつかのラフを彼らに聴いてもらい、どのラフを使って曲を作っていく?という感じで制作を進めます。この時に私たちに与えられた時間は、約半日(たぶん)。談笑を交えながら、Arnerが歌詞を書きながら、トップラインも手がけ、それに対してBaneがアレンジを加えていく。順調に進んでいたように見えましたが、制作がある程度進んだところで、壁にぶつかります。Chocoholicを中心にどのように打開するか議論が始まります。
そんな中、時間が迫られている中、プレッシャーもあってか上手く進みません。詳しくは書きませんが、Arnerがフォローに入りながら作業は完全に中断。結果的に、なんとなく楽曲は形になりましたが、完成には至らず。
この時に制作した楽曲は、デモ曲としてしばらく持っていましたが、ある日V6の担当者から連絡が入り、楽曲提供の話をいただいたのですが、いくつかのデモ曲を聴いていただいた中から、この時に制作した楽曲を軸に進めることになり、結果的にはV6さんへのご提供曲“All For You”という形で世に飛び出していきました。当然、制作時には想像もつかない結果に。どうなるか分からないですよね。
(ちなみに、Arner達とは2stepの楽曲さらに1曲作っていて、こちらは引き続きお蔵入りとなっています。個人的には結構気に入っていますが、タイミングですかね)

| 2曲目 You Won't / AmPm feat.Wednesday

次に入ったスタジオは、Los Angelesの中心から少し離れた住宅街にあるスタジオ。外見は実にロサンゼルス的な住宅でしたが、中に入るとグランドピアノがある部屋があったり、大規模なミキシングコンソールがある部屋や、ボーカルだけでなく、バンド一式で収録できる部屋があったりと、完全なるスタジオ。ここでは、女性シンガーソングライターの“Wednesday”と、今回のPink Lemonadeに参加した“The Attire”と一緒に制作を進めることに。2組ともアメリカの同じレーベルメイトになる予定だったので、2組デビュー前にAmPmのボーカリストとして参加してもらいつつ、それぞれ単独でデビューしていくという計画。結果的には、そのレーベルが消滅したので、計画そのものは白紙になり...ここから海外戦略の歯車が色々噛み合わなくなってくるのですが、この話はそのうち。
このスタジオの滞在時間は2日間。この2日間に、2曲制作することに。最初に入ったスタジオ同様に、こちらがラフで持ってきた音源を聴きながら、それぞれ選び、各々制作に。Wednesdayは、ピアノを弾きながら、トップラインを考え歌詞を書き...
The Attire達は、ギターを弾きながらトップラインを作り、歌詞を書き...それぞれボーカル収録をしてみて、楽曲に合わせて、微調整、微調整。
現在では、多くの楽曲が歌唱部分をピッチ調整という形で、DAWソフト上で音程調整をします。しかし、この楽曲についてはWednesdayの歌唱力が素晴らしく、かつ彼女らしさを最大限出すために、ピッチ調整は一切していません。その結果、楽曲に臨場感が出て、これまでのAmPmとは一味違う楽曲に仕上がったと思っています。そのような背景からも、MVもシンプルなものに。コンテンポラリーダンサー“山本 裕”さんを起用し、楽曲の世界観を全身で表現。照明も天井と、背面の2灯のみと極限までシンプルにして、制作しています。楽曲を作ったスタジオ時も、日本に戻りMVを撮影したスタジオでも、そこにいた全員が「いいもの出来たね」と満足度の高い作品が出来たと思っています。
(もっと、色んな人に聴いて & 観てほしい楽曲の一つです)

| 3曲目Pink Lemonade / AmPm feat.The Attire

今回リリースした楽曲です。まずは、「リリースできて良かった」というのが率直な感想です。ここまで読んでいただた通り、最初に制作したのは2018年6月ですので、リリースまでに約2年要しました。途中経過は異なりますが、楽曲を作ってからリリースまでに時間を要したのは、デビュー曲“Best Part of Us”以来ではないでしょうか。
こちらの楽曲も“You Won't”と同じスタジオで制作。普段はニューヨーク在住のThe Attire達も、契約するレーベルメイト達とLAで楽曲制作できる!ということで、テンション高め。彼らはアメリカ人ではあるものの、LAには初めてきたようで、とにかく「LAは最高だなぁ」と彼ら本来のノリの良さに拍車がかかり、「LAっぽい曲作ろうぜ」という流れで、この楽曲が作られました。これまでのAmPm曲とは違う感じの、意識的に“分かりやすさ”を重視した楽曲を作るという目標の下、制作は進みます。短い時間でしたが、こちらの楽曲もスタジオ滞在期間中に、ある程度出来上がります。
どのタイミングで出たアイデアなのかは、うる覚えですが、LAと言っても色んな顔があるので、この楽曲を“AM(午前) ver”と“PM(午後)ver”を作ろうということになり、日本に戻ってから別verの制作を始めます。これが結果的に、リリースまでに相当時間を費やした要因になるわけですが、2ver作ることで、色々と足りない部分、あるいは要望が増えていきます。いずれにせよ“夏っぽい”雰囲気の楽曲なので、8月にはリリースしたかったのですが、どうにも納得のいく着地が出来ず、2018年の秋を迎えることに。こうなると、楽曲の雰囲気と季節が合わないということで、来年に先送りしようと、引き続き制作のブラッシュアップが続きます。途中で、他の制作、リリースもあったので途中経過はもはや誰も覚えていない...という状態ですが、とにかくAmPmの歴代楽曲で一番修正回数を重ねた楽曲になりました。
(過去の修正データは全て残してあります)
様々な過程を経て、2verでのリリースは取りやめて、1本化。2019年3月にようやく完成まで辿り着きます。そうなると、2019年夏にリリースすれば良かったのですが、このアメリカに帯同していたレーベルのスタッフさんが、他のアーティストを担当することになり、AmPmから離れたり、まぁ色々あったり、なんとなく気分じゃないとか、色んな理由があり、気がつくと2019年の夏はあっという間に過ぎ去っていきます。こうして、リリース時期を再び逃します。2020年に入り、いくつかの楽曲をリリースしていく中で、「次はどうしようか」と、トレンドや自分たちの気分と照らし合わせながら、これまでの制作過程の中で溜まったデモ曲を聴き直します。そんな中、世の中的に大きな変革が起こり、予定していた計画はもちろん、色んな多くのことを見直さなければいけない状況になります。そんな状況下の中、Pink Lemonadeを聴いているうちに、「リリースするなら、今だなと」感覚でしかないですが、一気にリリースに向けて舵を切りました。
2020年の今年の夏は、私たちはもちろんですが、世界中の誰もが“いつもと違う夏”を過ごすと思うんですよね。この曲を聴いていると、ロサンゼルスで制作した、青い空や爽やかな空気感。どこか楽しげな雰囲気が浮かんできました。この楽曲も、本来の楽しい夏に合わせた、夏らしい楽曲としてリリースするはずでしたが、それよりも制約の多い、いつもと違う夏に聴く、“楽しい夏を想像する楽曲”の方が、収まりが良いような気がしました。この楽曲を聴くことで、“やっぱり夏って楽しいこと多いよね”とか、“早くこれまでのような夏が来るといいな”とか、聴く人それぞれ色んな感想を持つと思うのですが、そうした夏の想像を掻き立てるきっかけに、この楽曲がそういう存在になれば良いなと思っています。爽やかさや疾走感、甘美な雰囲気もありながらも、Pink Lemonadeというちょっとおバカなタイトルの楽曲。歌詞も読んでもらえれば分かるかと思いますが、怒っている女性に向けて男性が謝る。その謝罪文を歌詞にしているわけですが、どう考えても怒っている人に投げかける言葉ではないセリフが続きます。普通なら、“ふざけないで!”と怒りに拍車がかかりそうな内容です。いわゆる“チャラ男”が言いそうな歌詞になっていますが、そうした軽さやノリも、いつもと違う夏だからこそ、少し重たくなった気分を軽くできるかなと。
長く書いた割には、大したこと言ってませんが、リリースまでに覚えてないけど、たくさん紆余曲折があり、根拠はないけど感覚的に“今だな”と思った楽曲がリリースです。
リリースの度に、みなさんにどんな印象を持ってもらえるのか。心配や不安があります。一方で、純粋にたくさんの人に聴いてもらえて、気に入ってくれるといいなとも思います。今回の新曲も例外なく、気持ちは同様ですが、私自身はリリースされた楽曲は、普段の日常生活で聴きまくりますので(AmPm曲を一番聴いているのは、AmPm自身だと自負できるくらい聴きます)、自分の楽曲ではあるものの、このPink Lemonadeを聴きながら、いつもと違う夏を楽しめたらいいなと思います。

| 4曲目 Who do you love? / AmPm feat.Gloria Kim

先ほどのPink Lemonadeのパートでオチのような文章を書いてしまいましたが、まだ続きます。
続いては、約半日限りの短期間で、Tommy Brownというプロデューサーのスタジオ兼自宅へ。彼は、分かりやすく説明するとAriana Grandeのプロデューサー。Arianaのあれも、それもTommy Brownが手がけた楽曲。世界的トッププロデューサーの一人で、彼と一緒に楽曲が作れるということで楽しみにしていました。場所は、前回とシチュエーションが似ておりLAの中心地から離れた住宅街に彼のスタジオ兼自宅があります。大きめの住宅ではありますが、外観は普通。中に入ると、グランドピアノがあり、その周りには彼がこれまで受賞した盾がたくさん!!中庭を抜けると、バスケットボールコートもあり、「作曲家として成功するとこうなるのか」とワクワクすることばかり。彼のスタジオ兼自宅は“Social House”と名付けられており、何名かの若いクリエイター達と共同生活をしているようです。到着してすぐに、談笑をしながら制作に入ることに。例外なく、時間がない状況下でしたが、みんなで談笑したり、アイス食べたりとなかなか制作に進みません。そんな中、途中から犬を連れてやってきたのが、結果的にボーカルでも参加することになったGloria。2Fにある小さな部屋で、Gloriaが歌詞を書き、ボーカル録りが始まる。このあと書きますが、もう1曲の制作を一階にあるTommyの部屋で制作を進める。Tommyは一階と二階を行ったりきたり。私たちも行ったりきたり。途中で、Gloriaが「集中するから、一人にさせて!」と二階に籠ること、約1時間。あっという間に出来上がったのか、この楽曲です。あまりにあっという間だったので、この楽曲に関する背景とかプロセスみたいなものが正直あまり覚えてないんですよね。それくらい、高速で出来上がった楽曲。それにも関わらず、凄く好みの楽曲でしたし、軸となるトラックを手がけたChocoholicらしさもあり、言うことなし。恐らく、AmPm史上最短で出来た楽曲かもしれません。この曲のリリース後に、Gloriaが日本に来る用事があり、たまたまライブのリハーサルをしていた時に遊びにきてくれました。見た目の通りキュートで、フレンドリー感満載のGloriaの魅力が詰まった楽曲。また、一緒にプロジェクトが出来たらいいな。

| 5曲目 Little  Bit More / AmPm feat.Ayden

Tommy Brownのスタジオで制作した楽曲の一つ。Gloriaと同じようにスタジオにいた女の子、Aydenがボーカルで参加してくれるということで、彼女も交えて制作を進めます。このAydenですが、Yellow Claw / Till It Hurtsにボーカルで参加しているAydenです。Gloria同様に、歌っている時は凄くカッコいいのに、普段は愛くるしい感じの、お茶目な雰囲気。制作過程としては、Tommyがデモトラックに対して、アレンジを加えていくのですが、そのスピードが尋常じゃなく早い。このアメリカ滞在時に出会ったアーティスト全員共通ですが、作業が異様に早く、DAWのソフトの中にある音色、機能が完全に完璧に頭に入っているようで、一切の迷いがない。Tommyの一連の作業風景を見て確信に変わったのは、「グローバルで戦うには、圧倒的な知識量、スキルを駆使して、スピード感ある判断をすること」をしないと戦えないなと痛感したことを今でも鮮明に覚えています。後に、色んな国の様々なポディションの人と仕事をしても、同様に思います。
とにかく、制作が早く、作業にどの位時間がかかったのかという感覚はなく、アイスを食べ終わる頃には終わってた。くらいの勢いでした。そのトラックに対して、Aydenのボーカルを入れていく。制作が進めば進むほど、「こういう楽曲やりたかったんだよね」とAmPmチームのワクワクが高まるばかり。とにかく、あっという間に願っていた楽曲が出来上がりです。
ちなみに、この時に、アイスを持ってきてくれたり、何かと気にかけてくれる男性2人がいたのですが、後にAriana Grandeと楽曲をリリースし、コーチェラにも出演した二人組のラッパー“Social House”でした。制作が終わったあと、みんなでボーリング行くけど来る?って誘われてたのですが、翌日日本に戻らなければならずで、断ってしまったのですが、行っておけば良かったなと後悔してます(笑)

| アメリカでの制作合宿を終えて

約1週間の短期間に制作した楽曲が、結果的に5曲リリースすることになりました。今回リリースのPink Lemonadeは早い段階で出来上がっていただけに、この楽曲のリリースをもってして、このアメリカでの制作合宿に一区切りつけられるなと思っていたので、合宿全体のことを書きました。
セルフインタビューという形で文章を書き始めるつもりでしたが、楽曲の世界観を語るような内容ではなく、その制作過程についての内容が多くを占めることに。
実際にここで書いた楽曲は、この内容に限らず、日本に戻ってからもChocoholicを中心に幾つもの手を加えてリリースしています。楽曲の世界観自体は、楽曲が存在している限り忘れることはありませんが、制作過程については、どうしても記憶が薄れてしまったり、本来はあまり表向きに語ることのないパートだからこそ、備忘録的な意味も含めてこのような内容になりました。
今回は、楽曲リリースもあったので、アメリカでの制作合宿について書きましたが、デビューから短い期間の中でも、AmPmを通じて色んな国で様々な人たちと会い、たくさんの経験を積みました。また、何かの機会があればそれらについても書いていこうかなと思います。

このような状況下になったからこそ、これまでの経緯を振り返ろうと思いましたし、今一度これから何をしなくてはいけないのか考えなければなりません。夏の間に、状況は良くなるかもしれないし、悪くなるかもしれない。

次に海外に行けるのはいつかな。そして、どこの国に行けるかな。

Pink Lemonadeのパートでも書きましたが、いつもとは違う夏。この曲を聴いて、少しでも“楽しい夏”を想起するきっかけになればと思っています。
私たちにとって、リリースは制作の一区切りではなく、スタート地点です。
そして、グローバルで戦うための準備として望んだアメリカでの制作合宿の成果を発表する場。
このPink Lemonadeが、世界の多くの人に聴いてもらえると嬉しいです。


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