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【日記小説】雪と海

2022.12.30

目を覚ましたのは7:00頃だった。

昨日の計画で、今日早めに出発すれば、観光する場所を増やせるから早く目が覚めたらラッキーだというくらいに考えていて、幸い早く目を覚ましたにも関わらず、昨日の疲れもあるのか起き上がれず、結局ベッドに横になったまま時間だけが過ぎていく。

もしかしたら泊まるかもしれないと考えていたため、必要最低限のものは持参していたが、うっかり下着をリュックに入れ忘れ、今日履く下着を昨日の夜ハンドソープで手洗いし干していたが、当然乾いておらず、ドライヤーで必死に乾かすも、一向に乾かず、かなりの時間を費やしてしまった。

結局9:00過ぎに部屋を出て、下の朝食会場へ向かった。
朝食会場は古いホテルにも関わらず、すでに多くの人がいた。
バイキング形式で、なるべくしっかり食べておきたい反面、金沢駅に向かうバスの時間が差し迫っており、ゆっくりと食べてはいられなかった。
食べるものを全て取り終えて、席に座ろうとするも、ほとんどの席が埋まっていたが、かろうじて1席だけ空いていた。
他の人がゆっくり朝ごはんを満喫している中、朝食をかきこんでいる姿は周りの人の目にはなんとも哀れに映っているだろうと思いながらも仕方なく急ぐ。

朝食を食べ終わり、お腹がいっぱいになったところで、コーヒーの無料サービスがあることを覚えており、コーヒーマシンのあるところへ。
カフェオレを白い紙コップに注ぎ、ちょうどプラスチックの蓋も置かれていたのでフタをし、フロントでチェックアウトした後、外へ飛び出した。
コーヒーを外で飲むということを好んでしたことがなく、少し違和感を感じながら、バス停があることころまで向かった。バスに乗るときにコーヒーが邪魔になったらと取り越し苦労をして信号待ちの時にカフェオレを一気に飲み干してしまった。
バス停のある場所を迷ったりもしながら、なんとかバスに乗ることができ、金沢駅へ向かった。
本当は金沢駅でゆっくりお土産を見たかったが、電車の時間を優先し、IRいしかわ鉄道に乗って、高岡駅で降りる。
そこからJR氷見線に乗り換えるが、氷見線の電車の発車時刻まで時間があり、高岡駅の改札を出て、高岡で少し観光することにした。

高岡駅を出ると、雪が当たり前のように道路の端に積み上がっている。
北陸らしい風景に気持ちが昂るも、初めて踏み入れる地はやはり落ち着かない。
高岡といえば高岡大仏ということで高岡大仏を見に行く。歩いて10分くらいのところに突如として大仏は現れた。鎌倉大仏や奈良の大仏に比べると、ややシュッとしている印象だが、迫力がある。
大仏の中に入れるようで、中に入ると仏教に関する絵巻が展示されており、地獄の図などは脅迫観念にさいなまれやすい自分であるため、あまり見ないようにした。

高岡大仏を後にしてまだ時間に余裕があり、高岡古城公園へ向かった。
高岡古城公園内には射水神社という神社があって、初詣の準備で宮司さんや巫女さんたちが忙しそうだった。

参拝を終え、高岡古城公園をあとにして、高岡駅へ戻る。高岡駅から氷見線に乗ろうとすると、電車が雪で遅延している。
15分くらい待ってようやく電車が到着した。高岡から20分くらいの「雨晴駅」という駅で降りる。
「雨晴駅」は雨晴海岸という海岸に近く、雨晴海岸へは一生に一回は行ってみたいと思っていてまさかこんなに早くに行けるとは思わなかった。
電車の車窓からはいつ見ても雪が積もっている。
雨晴駅に着く手前、海が車窓から見え、乗客が一斉に車窓越しに写真を撮り始めた。
地元の人だと思っていた乗客のほとんどが観光客だったことに、意気消沈する。自分の中で雨晴海岸は知る人ぞ知る名所だと思っていたからだった。   仕方がないと言い聞かせ、電車を降りると、駅から雪と海が広がる雨晴海岸の景色を写真に収めた。

駅から歩いて大体5分の場所にある雨晴海岸にたどり着くと、日本海にしては穏やかな海の姿があった。
今日は天気があまり良くなく、天気の悪い日には立山連峰が見えることはないとネットには書いてあったが、遠くに薄らと見えている。
有名な岩がある近くまで砂浜を歩く。
トンビがたまに鳴き、海に来たという感じがする。
歩いていると霧雨が降り始めた。

その岩のところまでやってくると、観光客がひしめいている。自分はせっかくの景色に自分の姿を埋め込みたいと思い、三脚をカバンから取り出し、カメラをセットする。人が見ている中ではあったが、自分にはもう恥はないと自分に言い聞かせ、濡れた岩をつたい、カメラをbluetoothでつないだスマホの画面で位置を確認しながらベストポジションを探した。
濡れた岩と岩の間をつたっていると、後ろから「あぶない」と自分に対して放たれた言葉なのかわからないが、聞こえた気がする。たしかに滑りそうであぶない。しかしここまで来て撮らないわけにはいかないと食い下がらなかった。
ちょうど良いところまで来て、スマホ画面の遠隔シャッターボタンを押す。
撮れているか撮れていないのか確認する余裕もなく、数回押して、その場を去った。
霧雨が激しさを増す。カメラが濡れることが気がかりだったが、それでも撮りたい、という自分でも恐ろしいほどの写真に対する執着が勝り、カメラを仕舞おうとしない。自分は何がしたいのか、と自責の念が自分の中でぶくぶく肥大化していく。
雨晴駅へ向かう海沿いの雪の道。一人いったい何をしているのだろうか。






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