濱本恵美の日記【18歳高校生】

制服を着崩している生徒は私の学校にはいない。県内屈指の進学校、の一つ下のランクの高校に通っている。

広い目で見れば進学校と称されるのかもしれないが、在校生は偏差値60にあと少し届かないこの高校に在籍していることを少しコンプレックスに思っている。全校生徒が思っているわけではないが、私の所属している吹奏楽部、もっと細かく言うと私の所属している吹奏楽部の低音パートの人はみんなそう思っていた。

私のアンケート調査によれば10人中9人がコンプレックスに思っていた。もうこれは全校生徒の9割がコンプレックスに思っていると認識してなんの遜色もないだろう。しかし、10人中1人はコンプレックスに思っていなかった。その理由を彼女に聞くと「私の学力は県内屈指の進学校に通っている一番馬鹿な奴よりかは良いから負けていると思ってない。」

カッコ良すぎる。

そう答えたのは私の同級生、加藤まり子。吹奏楽部の副部長だ。彼女は定期試験では必ず上位5位以内に入る優等生。彼女の意見は強がりとかではなく、事実に基づくものだった。

ちなみに私、濱本恵美は中の中。普通街道まっしぐらだ。


そんな私と加藤まり子、そして小山優奈は進路が決まっているから、2月受験生(同級生)が連日のテストでヒーヒー言わせている中、部活に来ている。それは来たる2月23日の定期演奏会の練習で連日、受験生(同級生)とは違う意味でヒーヒー言わせている。

「なんで3年も参加なの?うちら老害でしょ?」と優奈は訝しげな表情を浮かべて言ってきた。

「毎年進路決まった3年は参加してるからね」と私は言った。

すると優奈が「だからってなんで加藤ちゃんが仕切ってんの?」

「確かに。」それに関しては私も否定できず同情した。


2年生主体となって初めての定期演奏会で、2年生的には「やっと天下だ」と思っているに違いない。しかしそんなことはお構いなしで仕切るまり子「大野32小節目主張しすぎ!低音はあくまで縁の下の力持ちじゃないといけないの!わかる?!下で支えるの!」

「すいません」と新しく低音パートリーダーとなった大野さんは頭が上がらない様子。

「あれ絶対、練習後のパーリー会議で愚痴るよ」と優奈が私の耳元で言ってきた。

「優奈もピッチ早くなってるところあるから!雑談してる場合じゃないよ!」とまり子の声が飛ぶ。

「はーい、元副部長ー」と嫌味に返す優奈であった。


私たちの方が受験生(同級生)よりキツイかも。流石にそれはないか。



つづく。

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