私本藤原範頼 西行の章3
なんと盛綱は土地の者を、浅瀬を教えてくれた気のいい若者を、その手で殺めていたのであった。
平氏に通報されそうになったとかでもなんでもない。
同じ源氏の御旗の者に、一切武勲を譲らぬためだったというのだ。
呆れた。
呆れてものが言えなかった。
唾棄したいほどの苦い感情。
それでも!
それでもこの勝利は我らにとり、本当にありがたい一勝ではあったのだ。
残った平氏は逃げ散って、讃岐は屋島の方向へ、落ちて逃れていったという。
屋島こそは瀬戸内平氏の本陣であり最終拠点。
仮の御所さえ在る