ずっこけ盆踊り放浪記⑥


盆踊りの保存会の活動は、イベントなどに呼ばれて演者として出演するものと、夏祭りなどで地域の方々と一緒に踊るものとで分かれている。
個人的には楽しい方は後者で、前者はできる事ならあまり出たくない。
大勢で楽しみながら踊るのが醍醐味なのに、なんで舞台で披露しなあかんねん、と内心思いながら踊っている。そしてできれば目立ちたくない。
けれど盆踊りイコール年配者の踊りというイメージを、なんとか払拭したい。

8月某日
日中は子供のラグビースクール夏合宿の練習へ参加。高速を飛ばしてとんぼ返り、非常に「効きそうな」疲労回復ゼリーを喉に流し込み、夕方から四条へ向かった。
四条大橋から三条大橋の下に、ずらっとご当地ものの出店が並び、各団体が披露できる舞台が設置される鴨川納涼。
到着するとすでに大勢の見物客で賑わいを見せている。浴衣姿の方や、外国人観光客も多い。
やはり日本人は和服が一番似合うなあ、としみじみ思うのである。たまたま舞踊を習ってるので浴衣くらいは自分で着付けできるようになったけれど、もし習っていなかったら浴衣を着てどこか出かける発想は皆無だ。
着たいとも思ったことはなかったので、人生とは面白いものである。


一番最後の出番なので、お客さんも少ないのだろうなあと出ていったら、思いの外多く、拍手と景気の良い掛け声で盛り上げてくださる。
とにかく楽しく踊ることだけを心がけた。じっさいに楽しかった。
上手くいかなかった部分もあったけれど、終わりよければ全てよし、だった。
晴れやかな思いで舞台を降り、出店の飲み物で保存会のお姉さんたちと祝杯をあげていると、外国人の若者が声をかけてきたのである。
「さっきみんなの踊り見たで、めっちゃ良かったで!」というような内容。
同じ日本人から直接言われることはあまりないが、外国人はストレートに気持ちを伝えてくれるので大変有難い。
みんな笑顔だった。

舞台に立つのは好きではないが、少しでもいろんな方に知ってもらえる機会になれば、との思いと、自分のような40代の中年でも若手の域なので、盆踊り年配の人じゃなくても踊ってるんや、と思ってもらえたらいいのだ。
放っておいてもすぐに年をとるのだから、動けるうちにたくさん出向いて踊りたい。
踊りの先生は84歳だが、誰よりも背中がしゃんとして、元気だ。
「リズムを感じてほしいねん、若い人はもっとバウンドしてほしい。わてが若かったらもっとバウンドしてたけど、もう無理でっせ!」と豪快に笑い飛ばす。
どこからそんなエナジーが?と毎度びっくりするのだが、それは踊っているからに違いない。


この記事が参加している募集

夏の思い出

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?