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創作の源泉、私の原点

もう戻れない日々。君が指さした雲の形。ふたりでつけた硝子指輪。あの日この眼に焼き付けた、君の横顔。
記憶から溢れていくそれらを、形に残したいと思った。
むかし誰かが言っていた。「人は何か大切なことを経験するたびに、思い出としてそれらを記憶の箱に詰めていく。でもその箱には沢山の穴が開いていて。一人では到底塞ぎきれない大量の穴から、絶え間なく思い出は溢れていく。誰かの笑顔や誰かの声、触れた感触、誰かとの日々」
ああ、今でも一言一句覚えている。
「自分でも気づかないほど容易くそれらは溢れていく。だから私達は、それを塞ぐことはできなくても、受け止めて、形にしなければならない。本当に忘れたくないと願うなら、溢れたそれらをインクに、言葉を綴らなければいけない。形に残さなければならない」
言葉ごときに頼るしかないけれど、消えてなくなるよりはずっとマシだ。
そう思って、まだ大学生だった私はペンを取った。
そして。
一部の人間にしか見せなかったそれを、誰かに見てほしいと思った。
「あらゆる芸術の士は人の世を長閑にし、人の心を豊かにするが故に尊い」夏目漱石、”草枕”。
「人生が芸術を模倣する」これはオスカー・ワイルドだったか。
それらの言葉通りの価値が、私の芸術にも宿っていてほしい。
そう願って、これから綴っていこうと思う。


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