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(エッセイ)努力では手に入れられないもの
今年の夏の甲子園は早くもベスト8が出揃った。
僕の高校時代はとうの昔に終わりを告げ、テレビに映る高校球児を見て若くて眩しいと思えるくらいには歳をとった。
そんな僕も小さい頃は野球少年であり、毎日白球を追いかけていた。小学3年生からは近所の少年野球クラブに入部し、本格的に野球を始めた。
少年野球は12歳までのため、小学校を卒業するタイミングで少年野球クラブも卒業し、中学でも僕はまた野球部を選んだ。
中学の野球部には、僕を含めて同級生が13人も入部した。
皆さんご存知の通り、野球のレギュラーは9人。ということは、最低でも必ず4人はレギュラーにはなれない。
13人のうちの半数以上が野球経験者だったが、中には中学校から野球を始める子もいた。
「どうせやるならレギュラーになって試合にたくさん出れた方がいいし、野球初心者に負けるのは僕のプライドが許さない!」と思って僕はそれなりに真面目に練習に取り組んだ。
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小学生の頃から、守備はそこそこ上手い自信があった僕は、内野の花形であるショートのレギュラーを勝ち取った。
しかし、問題はバッティングである。今もそうだが、身長の割に体が細く、食べても食べても太らない体質の僕にはパワーが足りない。(中学3年生になる頃には170センチを超えていたが、体重は45キロほどだったと思う。)
バッドにボールは当たるが、なかなかヒットにはならない。打順はいつも9番。良くて8番だった。
しかし、そんな僕であったが、中学2年の後期から覚醒した。一個上の先輩が卒業して初めての公式戦。9番セカンドで出場した僕は、面白いようにヒットを重ね、あと数センチでホームランとなる当たりも放った。
僕はずっと自分が打てないのは、自分に筋力が足りない性だと考えていた。
しかし、違った。僕に足りないのは筋力ではなかった。
その証拠に、僕はあるものを身につけることで、生まれ変わった。
そのある物とは何か。
「メガネ」である。
小学生6年性頃から目が悪くなり始め、中学校に上がると同時にメガネを買った。授業中は常にメガネをかけていたが、部活動ではかけたことがなかった。
しかし、ある日たまたまメガネをかけて練習に参加するとボールが今までの数倍よく見えることに驚いた。
ボールがしっかり見えるようになった僕は、バットの芯でボールを捉えられるようになり、打てるようになった。
この世の中には残酷な物で、いくら努力をしても自分の力だけでは、手に入れりないものがある。
そう。それは、「視力」である。
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