Morning relay.
-------------
蝉はまだ鳴かないのに 鈴虫の音が聞こえる。
日中は溶けそうになりながらも、朝方はまだ涼しい。
足元に溜まった柔らかな布団を目を閉じたまま手繰り寄せ、首元まですっぽり入ってみては、それはそれで暑くて体のあちこちを少しだけ出してみる。
青い絵の具を水に落とした時のような色をして、空が少しずつこちらにやってくる。
新しい世界を独り占めするようなこの瞬間が好きだ。
部屋中の窓を開け、顔を洗い、まだ薄いブルーの空気に飛び込む。
伸びをして、今日を呟く。
鈴虫と代わって 小鳥が朝を歌う。
薬缶の蓋がカタカタと 神経質な音を立てるから、蓋を取り、魔法のランプのように飛び出した蒸気を吸い込むと、わたしの身体の真ん中が起きてきた。
おはよう。
今日のわたしが 朝を迎えた。
-------------
はじめまして。
早起きは苦手だけど、朝の空気が好きです。
朝の、しんとした空気に触れると、小学生の時に国語の授業で読んだ 谷川俊太郎さんの「朝のリレー」という詩を思い出します。
自分の見ている世界の外に、違う時空を過ごす人々がいることに、とても心がわくわくしたのを鮮明に覚えています。
この青い空気の先に、違う国の違う文化の中にいる誰かに触れられるような気持ちになり、不思議な感覚になります。
ひとりでもひとりじゃないような
だから朝が好きなんだと思います。
熊本に来て、もうすぐ一年が経とうとしています。きっともうすぐ自慢の家が見つかる頃。
引越しが多い我が家は、いつも越してからこのくらいの時間が経つと、住みたい家がみつかります。
だから、そろそろ。
家が見つかったら、小さな小さなプラベートホテルを作ります。
一年でいちばん陽の長い一日が過ぎ、数日経ちました。
ちょうど新月と同じ日のことでした。
何かをはじめようと、ここで言葉を繋げることにします。
小さな宿に込めたい気持ちを。
心地よい言葉を一つずつ紡ぐように、大切にしたいことを日々重ねて、心地よい場所を作っていこう。
きっと、遊びにきてくださいね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?