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今日しまむらで、妹がデザインした服を買う

わたしは横浜のセンター南駅の「しまむら」で仁王立ちしている。

安くて便利なファッションセンター「しまむら」。郊外に行けば必ずといっていいほど見かけるファッションセンター「しまむら」。

そんな「しまむら」の前で、いつになくわたしは使命感に燃えていた。

この場所に思い入れがあるのではない。売っている洋服に思い入れがあるのだ。そう。わたしの妹がデザインした服が販売されているのだ!

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その妹とは、わたしの愛する四女、Rちゃんだ。

わたしたちは13歳の年の差があり、高校生の頃に保育園児のRちゃんをよく自転車でお迎えに行ったっけ。

無口でシャイで、ほっぺがぷっくりしてて、笑うとめちゃくちゃかわいい。

でも、わたしはRちゃんに謝りたいと思っている。彼女が母のお腹にいるとき、わたしは反抗期真っ盛りで、母が子どもを産むことをすごく反対していた。高齢出産のため入院が長かったのだが、わたしは一度もお見舞いに行かなかった。

無事に生まれたRちゃんが家にやってきた。ふてくされながら見つめていたのだけれど、赤ちゃんのRちゃんがわたしを見てニコッと笑った。

秒速で彼女を好きになった。

ふてくされた思いなんて、どっかに飛んでった。

「生まれてきてくれて、ありがとう。」そう思った。

だからRちゃんにまず謝りたい。あなたがお腹にいる間、お姉ちゃんは「あなたが生まれてこなければいい」と思っていました。ごめんなさい。そして、お母さん、あの時はつらく当たってホントごめんなさい。

・・・・

それから彼女は大人になった。

「Rちゃんはファッションデザイナーになりたいらしい」

そんな話を母から電話越しに聞いて驚いた。

あのシャイなRちゃんは、もう立派な夢を持っているのだと。

デザインを勉強する専門学校に通ったRちゃんは、メキメキとセンスを磨いていった。

祖母の遺品を整理していて、古いコートを捨てようとしたら、彼女は「まって!捨てないで。わたしがリメイクするから。」と部屋に戻ってミシンをカタカタならして降りてきた。

すごく、いい。
まるでフランスのパリジェンヌが羽織るような、そんなジャケットになっていた。(こんな感じだった)

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出典:「トレゾア」

彼女はいま、地元名古屋のアパレル会社でデザイナーとして勤めている。「しまむら」の女性服のいくつかを担当しているらしい。

名古屋に住む彼女とはなかなか会えない。
コロナの影響で正月も会えるかわからない。

せめて彼女のデザインした服を着て、彼女の奮闘ぶりを噛み締めたかった。

だからわたしは「しまむら」にいる。彼女がデザインしたという服の品番が手掛かりだ。探すのは大変だったよ。さすがファッションセンター。大量の服。服。服。

しかも彼女のデザインした服は人気らしく、すぐ売れてしまうらしい。

その服を見つけたとき、なんだか泣けた。

Rちゃんが母のお腹にいたときの気持ち。初めてRちゃんと目が合ったときの気持ち。保育園のお迎えに行って砂場にいる彼女がわたしを見つけて駆け寄ってきたあの気持ち。そして大人になった彼女がいま、世の中に自分の存在を証明していて、それを遠く離れた横浜で手に取ったこの気持ち……。

「生まれてきてくれて、ありがとう。」

わたしはその服を片手にレジに並んだ。

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