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元旦、「ファイナル・ファンタジー14」で冒険者になる

「つぎ右。そっちじゃない。左!」

アバターを操るわたしの横で、夫がツッコミをいれる。ゲームの世界で夫に監督される2021年、元旦。

夫はゲーム・オタクだ。彼には年齢や国籍が異なる様々なオンライン仲間がいて、夜な夜な英語や韓国語を交えた楽しそうな笑い声が聞こえてくる。

わたしだって、オンライン上のゲーム友達がほしい!そんな想いから、元旦早々「ファイナル・ファンタジー14」に挑戦することになった。

ところが大きな問題がひとつある。
わたしは、ゲームが下手っぴだ。

あれは中学生のとき、「NARUTOーナルトー疾風伝」というバトルゲームにハマったことがある。当時自分は強いと思っていたが、小2の妹、三女Yちゃんにボロ負けした。

「所詮子ども、遊んでやるか」くらいに思っていたのに、完全なる敗北。(その後、Yちゃんは同ゲームのジュニアコンテストで準優勝したので、負けて当然だったのだが)

まるで引導を渡されたような気持ちになり、わたしはコントローラーをそっと置き、ゲームを卒業した。

・・・・・

それから、20年ほど歳月が経った。

中学生で止まったゲームの知識は、もはや過去の産物。知らないことが多すぎるので、夫から指南を受けることになった。

「今はパソコンで遊べるよ。キーボードとマウスで動かすんだ」

夫のキーボードはゲームで使うボタンだけ剥げている。どれだけ強く連打するんだよ……。

夫に勧められたのは「ファイナル・ファンタジー14」。1~13をすっ飛ばして、14に挑戦するなんて大丈夫だろうか。

予備知識もないまま、イントロのムービーが流れ始めた。何だ、このぬるぬる動く動画は?ゲームに見えない。実写映画なの?進化しすぎてついてけなかった。

キャラクターの作成画面になった。目の色、唇の色、髪のメッシュまで、種類が多すぎて小一時間かかる。秋葉原のコスプレイヤーのような猫耳ガールができあがった。

いざ、冒険の旅へ。キーボードとマウスで操作するもうまく動かせず、障害物にぶつかりまくる。夫に助けを求めた。

あ「た、助けてっ。全然キャラクターを動かせない」

夫「それなら前買ったコントローラーを使ってみたら?」

あ「え、パソコンにコントローラーを繋げられるの!?」

夫「コントローラーはUSB端子になってるから使えるよ」

早く言ってよ……と心でつぶやきつつ、コントローラーを持ち、パソコンにスタンバイ。再度冒険に挑む。

猫耳ガールは町の人から様々な雑用を頼まれた。チラシを目立つところに貼ってほしいとか、小銭落としたから探してほしいとか。おいおい、頼みすぎだ。人間界なら引き受けないぞ?

あ「ねぇ、このゲームって、人の頼み事をこなすのがメインテーマなの?」

夫「うーん、まぁ、そうかも。RPGだからね」

誰かのためにがんばるほど、装備やレベルが上がるとは。贈与の世界だ。

この世界で友達ができるだろうか?いつか夫と、クエストに挑む日が来るだろうか?

そんな思いに耽っていたら、小さな男の子がわたしにお辞儀をした。

「ほら、挨拶してるよ。お辞儀を返して」

慌ててボタンを探す。

「もう!コントローラー貸して」

夫にコントローラーを渡すと、華麗にカーソルを動かして猫耳ガールがお辞儀した。一人前の冒険者になるのは、まだまだ時間がかかりそうだ。

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