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『魅力度』とかいう

 昨日、都道府県魅力度ランキングというものが発表された。茨城が最下位を脱出したということで、喜ぶ人もいれば、最下位の座に居座り続けたことがアイデンティティで逆説的に誇りだっただけに悲しいという人もいて賛否両論だ。

 私は秋田に住む前、幼少期はつくば市に住んでいて、再開発によって土地としても余裕があって過ごしやすく、夏休みには『つくばちびっこ博士』という、多くの研究機関が一般公開されて子どもたちが見学できるようになるイベントもある。首都圏にも電車一本でアクセスできて、子どもの頃は茨城県民という自覚よりもつくば市民という意識の方が強く、今でも「昔茨城に住んでいた」ということが自分の中で腑に落ちない。

 そもそもつくば市は、筑波研究学園都市として、首都圏にあった国の試験研究機関等を計画的に移転することにより首都圏の過密緩和を図るとともに、高水準の研究と教育を行うための拠点を形成するために再開発された街である。東京の施設がどんどん移転されていき、全くの新しい街を形成私のイメージし、首都圏への入り口としての役割を持つつくばは、茨城とは独立した雰囲気を醸し出しているように感じた。私のイメージする茨城というのは大きく二つある。徳川御三家の一角・水戸藩の流れを汲む歴史的な城下町のイメージと、大洗周辺でガールズパンツァーをきっかけに大ブレイクした港町の二つだ。あとは梅干しだとか、近郊農業だとか、めちゃくちゃ甘いサツマイモが穫れるだとか。昨年茨城国体に出場した時も、それらの文化や名産を推していてつくばは軽く触れられる程度な印象を受けた。

 話を本題に戻すが、『魅力度』ってなんだろうか。
 辞書的に『魅力』の意味は、辞書的には「人のこころをよく引きつけるもの」だそうだ。人それぞれ、人の心を引きつけるものは違うので、そもそも自治体ごとに「どれが魅力的か」と比べる自体に違和感を感じる。北海道と沖縄を比較しても、それぞれの風土に大きく違いがあって、それぞれのメリットとデメリットがあるから比較ができない。都会と田舎、それぞれ違う魅力があるが、それを番付で評価に高低が出てしまうことにも納得いかない。

 そういえば、私の彼女は愛犬を溺愛しているのだが、ある日私が「俺と犬どっちが好き?」と訊いたら彼女は困惑した。そもそも比べる対象ではない。

 正直に言うと、私の大学に入るまで住んでいた東北の小都会は、文化的には有名なものが多く魅力的だが、夏は暑いくせに冬は雪が降って生活は不便になるし、そもそも自治体が大き過ぎて他の街への行き来がプチ旅行になってしまう。暮らしやすさとのバランスを考えたら、前述した茨城の方がまだ世間一般の『魅力度』なるものは高くなるのではないかと考えてしまう。もちろん、私の住んでいた秋田は好きだし、誇りを持っていることを前提に話していて、私の主観で秋田と茨城、どっちが魅力的か比較することは出来かねる。データを取るためのアンケートも一応多角的に質問が用意されているようだが、結局そこが魅力的か否かなんてものはそこに住む人にしかわからず、評価基準があまりに主観的である。
 そもそも同じつくばと水戸のように、同じ県の中でさえ風土が違ってくるのに、都道府県ごとに評価するのもあまりに包括的ではないか。

 この番付が単なる一生徒の自由研究なら面白いが、一企業が発表したものをマスメディアは大きく取り上げ、都道府県ごとの評価が左右される。不思議な世の中ですよ。

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