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「きみの鳥はうたえる」のような夏の話

6/1、ついについに30歳になりました。
もう30歳だよやばくない!?どうする!?的な会話を何万回も乗り越えてきたので、一周して凪…という感じではいたけど、0時になる瞬間はちょっと緊張して、でも清々しくて、変な感情を味わいました。
独身30歳は肩身狭い瞬間も多いですが、のんびり心地良い状態を保ちながら過ごしたいなと思います。

20代の思い出はありすぎて振り返りきれない

せっかくだし20代の振り返りでも書こうかなと思ったけど、学生から社会人の変化だけでも大きいし色んな人との出会いもあってとても書ききれません。ただ、ちょうどこの前映画「きみの鳥はうたえる」を観て思い出したことがあるので、つらつら綴ってみようと思います。

映画のあらすじ

『この夏が、いつまでも続くような気がした』
函館郊外の書店で働く“僕”と、一緒に暮らす失業中の静雄、“僕”の同僚である佐知子の3人は、夜通し酒を飲み、踊り、笑い合う。微妙なバランスの中で成り立つ彼らの幸福な日々は、いつも終わりの予感とともにあった。

芥川賞候補にもなった佐藤泰志の同名小説の映画化。実力派俳優たちが織りなす青春映画。
監督は三宅唱。出演は柄本佑、石橋静河、染谷将太。

生々しい映画だし、演技なのか素なのかわからなくなるシーンばかりで驚いてしまった。
特にスーパーのレジでの会話や、クラブのシーンは必見。そう!クラブ!!それである夏を思い出した。

「社会人の楽しみ方見出したわ」

今思い返せば何を馬鹿なことを、て感じだけど当時(社会人2年目の夏・24歳)の私と同期は本気でそう口走っていました。

私たちが言う「社会人の楽しみ方」は、仕事をバリバリやりながら、金曜仕事後に社内のお気に入りの先輩たちと朝まで飲みに行くこと
適度な公私混同を裏スローガンとして掲げて、毎日終電まで働く日々はある種の青春でした。(バカだったなぁ)

そんなある日、先輩が青山蜂でDJやるから行こうと誘われました。
クラブ(それもEDMがガンガン流れている出会い目的の人が半分くらい占めてそうなところ)は何度か行ったことある程度だったので、
初めて訪れた蜂は田舎者の私にとって雰囲気から客層からすべてが刺激的でした。都会の人間になった気になりました。

その日は、お互い存在は知っていたけど話したことはない先輩Kさんもいました。
「この人と何が起きそう」と直感が働く相手ってたまにいませんか?
Kさんはまさにそんな存在で、連絡先交換するのも2人で会い始めるにも時間は必要ありませんでした。

でも、明確だったことは関係をはっきりさせる気は無かったということ。
まさに、映画の中の佐知子と"僕"みたいに…

一緒にお酒を飲み明かし、時には朝まで踊り、夏の朝の生温い風を浴びながら2人で自転車に乗って同じ家に帰る。常に曖昧な関係で、その瞬間瞬間に全力で浸りながら「いつかくる終わり」を意識せざるを得ない関係。

当時「エモい」なんて言葉はなかったけど、紛れもなく「エモい」でしかない特別な青春は、きっと期間限定なのが暗黙の了解だからこそ成り立っていたと、今ならわかります。
それが「社会人の楽しみ方」のベストアンサーなのかは疑問だけど、20代の甘酸っぱくもほろ苦くもない思い出の1ページとして刻まれました。

夏が過ぎて、なんとなく距離が生まれて、蜂に行くことも2人で朝方自転車乗ることもなくなり…

結局私はそのままKさんも仲良い社内の別の先輩と付き合うことになりました。そんな流れも含めて「きみの鳥はうたえる」は、半分自分の物語のような気がしてしまう。
Kさん元気かな。知っても仕方ないけども。

夏はどの季節よりも切ない!

私にとって夏は切なさと紐づいています。
それはきっと、物心ついた頃から経験してきた夏休みというシステムのせい。
夏の始まりは終業式、夏の終わりは始業式によって強制的に告げられるため、その間の部活や友達、恋人との時間は心の片隅で「終わりを意識して過ごす」ことになります。
それなのに、セミの鳴き声、夏祭り、花火、お線香など、五感にこびり付く思い出たち。
「期間限定」と強調された夏の切なさを知ってしまってる以上、戻りたいなぁ!にならないのかも。

2020年、30代最初の夏はどうなるかしら

今年は30代のスタートを切る記念すべき夏だから、フェスにキャンプに、夏祭りに花火大会に、いつもよりアクティブに過ごそうと意気込んでいた矢先のこの状況。

夏の風物詩が軒並み中止になり、家にいる時間が長くなりそうな今年の夏は、気付いたら始まって気付いたら終わってた、ということも十分あり得る。
いつもより始まりも終わりも曖昧だから、「終わりを意識して過ごす」瞬間が少なく、今年の夏は切なさを感じにくそうだな。

図らずも、また戻りたいと数年後思い返す貴重な夏になるかもしれない。
どんな夏にしようか今から想像しておこう。


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