Amarido

都内在住のOLです。本を読むのが好きです。主に1000文字程度のショートショートを平日…

Amarido

都内在住のOLです。本を読むのが好きです。主に1000文字程度のショートショートを平日の朝に投稿しています。 よろしくお願いいたします。

マガジン

  • さくっと読みショートショート

    1分くらいで読める、1000文字以内のショートショートをまとめています。気分転換のお供にどうぞ!

  • 読書記録

    読んだ本を記録します。ほぼ個人用です。

記事一覧

固定された記事

夜景【ショートショート635字】

僕はレストランの窓際の席に座って、緊張しながら相手の到着を待っていた。窓の外には新宿の夜景が見える。向かいの空席を見つめながら、僕は今日言うべき台詞を反復する。…

Amarido
3年前
75

働き方【ショートショート857字】

 リモートワークは僕にとって今や夢の働き方である。リモートワークが始まってすぐの頃は、朝7時に起き、朝食を食べて身支度をして、8時50分にはパソコンの前に座っていた…

Amarido
3年前
42

『セレブの誕生 「著名人」の出現と近代社会』 読書記録

セレブの誕生 「著名人」の出現と近代社会 アントワーヌ・リルティ 仕事の関係で「有名人になるとはどういうことか」を考えるようになったので、考える参考になればと思…

Amarido
3年前
36

マウンティング【ショートショート880文字】

「あれー、先輩、その星型のネックレスかわいいですね!」 「えー、これ?彼氏が誕生日に買ってくれてー」  最近、職場の戦いが激化を極めている。女同士の戦い、そう、…

Amarido
3年前
40

路【ショートショート366字】

 「私はどこから来てどこへ行くのか」と、私は立ちつくし、秋晴れの空を見上げながら呟く。空気が澄んだ秋空は驚くほど高く見える。上空をとんびが舞っているのをしみじみ…

Amarido
3年前
45

タクシーにて【ショートショート828字】

「あれっ、お客さん、ドラマに出ている俳優さんじゃない?」  タクシーに乗り込み、しばらく走ったところで、僕は運転手から声を掛けられた。やっぱりきたかと思い、僕は…

Amarido
3年前
35

読書記録【2020年11月前半分】

 前回10月分をやったのですが、ちょっと長くなりすぎた感があったので、前半後半で分けてやろうかなと思います。 2020年11月1~15日に読んだ本 「西荻窪キネマ銀光座」角…

Amarido
3年前
26

謙遜【ショートショート503字】

 ある日本人博士がノーベル化学賞を受賞した。その博士はいつも謙遜した話し方をすることで周りに知られていた。博士は受賞式でインタビューを受けた。 ー受賞おめでとう…

Amarido
3年前
33

100万人のフォロワー【ショートショート1673字】

 それは大規模な社会実験だと説明された。SNSのフォロワー数が一気に100万人増えたら人はどうなるのかー  青年はその募集を見て、即座に応募を決意した。青年はSNSに力…

Amarido
3年前
37

銀杏【エッセイ869字】

 私の通っていた高校の構内には見事なイチョウ並木があった。毎年秋になると、あたり一面は美しい黄色の世界になった。  そう聞くと、そのイチョウ並木は生徒達にさぞ愛…

Amarido
3年前
27

もったいない【ショートショート927字】

 その男の口癖は「もったいない」、好きな言葉は「一石二鳥」である。食事しながらビジネス本を読み、風呂場にスマホを持ち込んで映画を観、仕事中のデスクの下で足上げ腹…

Amarido
3年前
24

読書記録はじめます!【2020年10月分】

 noteでは主にショートショートの投稿をしていたのですが、読んだ本の記録もやろうかなと思います。昔から読書感想文というのは苦手で、あんまりちゃんとしたものが書ける…

Amarido
3年前
48

バンジージャンプ【ショートショート600字】

「おお、高いなぁ!」  彼氏のタクミは私の横で声を上げた。吊橋の上に設置された足場。高さは100mでビル30階分に相当するらしい。タクミはギリギリの場所で足元を覗き込…

Amarido
3年前
25

【いつどこnote】在宅勤務IT企業社員のnote事情

 いつもよくしていただいている秋谷りんこさんからバトンいただきました!反応まで時間がかかってしまいすいません!  秋谷さんは私の大好きなnoterさんの一人で、主に…

Amarido
3年前
39

窓辺にて【ショートショート374字】

 柔らかな光の差し込む精神病棟の窓辺。 ―ここにいらっしゃるのは初めてですか? ―そうですか。勇気を出して来院してくれて良かったですよ。ここ一ヶ月ほど、食欲がな…

Amarido
3年前
29

フタの暗号【ショートショート997字】

 押ボタン式の信号機を見ると思い出すことがある。それは私がまだ高校生の頃の話だ。  高校に入学して少しした、新緑のきれいな季節だった。私は電車通学をしていて、家…

Amarido
3年前
26
固定された記事

夜景【ショートショート635字】

僕はレストランの窓際の席に座って、緊張しながら相手の到着を待っていた。窓の外には新宿の夜景が見える。向かいの空席を見つめながら、僕は今日言うべき台詞を反復する。このタイミング言おうと以前から決めていた。 思い返せばきっかけは大学の学園祭だった。クラス企画を一緒にやることになり、なかなか話がまとまらない中、喧嘩と仲直りを繰り返しながら当日の本番を迎えた。あの日の達成感はまだ在り在りと覚えている。終わった後、二人でハイタッチして成功を喜びあったものだ。 それから僕達は自然と二

働き方【ショートショート857字】

 リモートワークは僕にとって今や夢の働き方である。リモートワークが始まってすぐの頃は、朝7時に起き、朝食を食べて身支度をして、8時50分にはパソコンの前に座っていたものだ。しかし、日を追うごとにだんだんとルーズになっていき、起きる時間も7時から8時、さらにギリギリを攻めて8時55分とどんどん遅くなった。  服装も全身スーツに着替えていたのが、まずは上半身だけスーツで下はジャージになり、上半身もYシャツにジャージになり、最近ではパジャマのまま仕事をしている。  働く場所も変

『セレブの誕生 「著名人」の出現と近代社会』 読書記録

セレブの誕生 「著名人」の出現と近代社会 アントワーヌ・リルティ 仕事の関係で「有名人になるとはどういうことか」を考えるようになったので、考える参考になればと思い読んでみた。近代の事象と対比することで、著名性に対する人々の熱狂や陶酔は、現代に限定されない、人間の本質的な特性なのではと思った。 著名性はその人の本来の活動の評価基準を必ずしも反映するものではなく、マーケティング法や公衆が勝手に抱くイメージに左右される、かなり不安定なもの。その意味で、著名になることが社会的成功

マウンティング【ショートショート880文字】

「あれー、先輩、その星型のネックレスかわいいですね!」 「えー、これ?彼氏が誕生日に買ってくれてー」  最近、職場の戦いが激化を極めている。女同士の戦い、そう、その名はマウンティングである。 「えー、羨ましいですー!私の彼氏は、私には星みたいな派手なのは似合わないとか言って、こんなシンプルなダイヤのネックレスしか買ってくれなくてぇー」  彼女の胸に光るのは大粒ダイヤモンドのティファニーのネックレス。先輩社員の方は「へぇ、ティファニー…」と顔を引きつらせている。  私

路【ショートショート366字】

 「私はどこから来てどこへ行くのか」と、私は立ちつくし、秋晴れの空を見上げながら呟く。空気が澄んだ秋空は驚くほど高く見える。上空をとんびが舞っているのをしみじみと眺める。こんな季節は、最初の質問を自分に問うのには最適だ。  もともと自分に自信はないほうだ。自分で決断するのも苦手。いつも他人が進む方向に進んできた。言うなれば親ガモの後をついていくヒナのように。  でもいつまでもそんなことを言っているわけにはいかない。人には自分で決めなければいけない時がある。もちろん自信はな

タクシーにて【ショートショート828字】

「あれっ、お客さん、ドラマに出ている俳優さんじゃない?」  タクシーに乗り込み、しばらく走ったところで、僕は運転手から声を掛けられた。やっぱりきたかと思い、僕は返事をする。 「あ、わかりますか?」 「わかるよぉ。マスクしててもさ、そのくっきりした目元で一発だね。それにしても男前だなぁ。」  運転手はバックミラーで僕の顔を眺めながら続ける。僕の目元はかなり特徴的らしい。こんな風に言われるのは毎度のことである。「そんなことないですよ。」といつもの台詞を返す。 「なに、ド

読書記録【2020年11月前半分】

 前回10月分をやったのですが、ちょっと長くなりすぎた感があったので、前半後半で分けてやろうかなと思います。 2020年11月1~15日に読んだ本 「西荻窪キネマ銀光座」角田光代・三好銀 映画タイトルごとにエッセイとマンガが載っているという変わった構成。 「歩道橋シネマ」恩田陸 短編集。2ページ程度の短編もあって参考になる。恩田さんぽいなと言う感じ。 「騎士団長殺し 第一部(上)(下)」村上春樹 読む本のストックがなくなってしまって、何度めかの再読。やる気がない時に読む

謙遜【ショートショート503字】

 ある日本人博士がノーベル化学賞を受賞した。その博士はいつも謙遜した話し方をすることで周りに知られていた。博士は受賞式でインタビューを受けた。 ー受賞おめでとうございます。博士は天才と呼び声が高いですが、その声に対してはどうお思いですか。 「いえいえ、私なぞただの凡人ですから、一生懸命やったまでです。」 ―大学生になる息子さんも優秀で、同じ分野の研究者を目指されているということですが。 「いやあ、うちの愚息は頑張ってはいますがね、どうなるかわからないですな。」 ー博

100万人のフォロワー【ショートショート1673字】

 それは大規模な社会実験だと説明された。SNSのフォロワー数が一気に100万人増えたら人はどうなるのかー  青年はその募集を見て、即座に応募を決意した。青年はSNSに力を入れていたが、フォロワー数は数百人。一介の大学生としては多いかもしれないが、100万人というのはさすがに夢の数字だ。  早速応募フォームに必要な情報を記入し、送信すると、数分後に返信のメッセージが来た。どうやら採用されたらしい。予想よりずっとあっけなくて驚く。それによると、以下のような流れになるようだ。

銀杏【エッセイ869字】

 私の通っていた高校の構内には見事なイチョウ並木があった。毎年秋になると、あたり一面は美しい黄色の世界になった。  そう聞くと、そのイチョウ並木は生徒達にさぞ愛されたことだろうと思われるかもしれないが、実はその逆だった。それらのイチョウの木々は大量の実をつけ、それが地面に落ちて踏まれ、あたり一帯は鼻をつままなければ通れないほどの臭気に包まれた。ローファーで踏んでしまったら最後、一日中イチョウ臭に苛まれながら過ごすことになる。私達はあたかも忍者のようなステップで、実を踏まない

もったいない【ショートショート927字】

 その男の口癖は「もったいない」、好きな言葉は「一石二鳥」である。食事しながらビジネス本を読み、風呂場にスマホを持ち込んで映画を観、仕事中のデスクの下で足上げ腹筋をすることを習慣にしていた。とにかく一度にやれることはできるだけ多くやりたい。時間がもったいない。  ある日、YouTubeを見ていると、食事しているところを動画にしている配信者を見つけた。男はこれだと思った。自分の生活の様子を動画で配信すれば、一石二鳥どころか一石三鳥が実現できるじゃないか!  それから男は生活

読書記録はじめます!【2020年10月分】

 noteでは主にショートショートの投稿をしていたのですが、読んだ本の記録もやろうかなと思います。昔から読書感想文というのは苦手で、あんまりちゃんとしたものが書ける気はしないので、個人の記録用という気軽な位置づけで始めたいと思います。 2020年10月に読んだ本「アライバル」ショーン・タン 字なし絵本。不思議な世界の中で移住する男性を中心に描いている。世界は違っても、別の国に行く不安は共通だなと想った。 「横丁と路地を歩く」小林一郎 横丁と路地ってなんだかわくわくする。そ

バンジージャンプ【ショートショート600字】

「おお、高いなぁ!」  彼氏のタクミは私の横で声を上げた。吊橋の上に設置された足場。高さは100mでビル30階分に相当するらしい。タクミはギリギリの場所で足元を覗き込み、はるか下にある川面をこわごわ見ている。高所恐怖症の私には、ちょっとぞっとしない風景だ。  私はタクミを横目に見る。目元はゴーグルでよく見えないが、口元を見るとこの体験に興奮していることが見て取れる。  私はタクミの背後に近づく。彼は紐をつけていない状態だ。私がしようとしていることなど思いもよらないだろう

【いつどこnote】在宅勤務IT企業社員のnote事情

 いつもよくしていただいている秋谷りんこさんからバトンいただきました!反応まで時間がかかってしまいすいません!  秋谷さんは私の大好きなnoterさんの一人で、主に小説を執筆されていますが、最近エッセイも書かれて、それがさらりと「編集部のおすすめ」に掲載されたりという才能あふれる方です!  こちらのエッセイとてもおもしろく、非常に考えさせられる部分も多くて、まだ読んでいない方は是非読んでいただきたいです!  さて、企画内容は以下のとおりです。 いつどこ企画のルールです

窓辺にて【ショートショート374字】

 柔らかな光の差し込む精神病棟の窓辺。 ―ここにいらっしゃるのは初めてですか? ―そうですか。勇気を出して来院してくれて良かったですよ。ここ一ヶ月ほど、食欲がなく、夜も寝つけない、と。お仕事は何を? ―ほう、IT企業に転職したばかり。かなり忙しいんですね。残業はどれくらい? ―なるほど、それは良くないですね。それだけ働いていればかなりストレスが溜まっているはずです。完全に参ってしまう前に、ここは一度仕事から離れて―  その様子を遠巻きに見ていた看護師達は小声で話す。

フタの暗号【ショートショート997字】

 押ボタン式の信号機を見ると思い出すことがある。それは私がまだ高校生の頃の話だ。  高校に入学して少しした、新緑のきれいな季節だった。私は電車通学をしていて、家から駅に向かう途中に押ボタン式の小さな横断歩道があった。私の地元は田舎だから、その横断歩道を利用するのは日に20人もいないくらいだろう。私はテニス部に所属していて、その日も朝練のために眠い目をこすりながら信号が変わるのを待っていた。  すると、小学校高学年くらいの女の子が私の横の黄色い押ボタンに駆け寄ってきた。私が