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パンケーキの価値は?

2021年8月3日、映画「パンケーキを毒見する」を見てきました。
前回の記事も、映画で得た情報をもとに書かれています。
今回の記事では、きちんとした映画評を書きたいと思います。
一部ネタバレを含みますので、まだ見ていない方で、これから見る予定のある方は、注意が必要です。

まず序文代わりに、映画.COMに載っている解説を、そのまま引用してみます。

「新聞記者」「i 新聞記者ドキュメント」などの社会派作品を送り出してきた映画プロデューサーの河村光庸が企画・製作・エグゼクティブプロデューサーを務め、第99代内閣総理大臣・菅義偉の素顔に迫った政治ドキュメンタリー。ブラックユーモアを交えながらシニカルな視点で日本政治の現在を捉えた。秋田県のイチゴ農家出身で、上京してダンボール工場で働いたのちに国会議員の秘書となり、横浜市議会議員を経て衆議院議員となった菅氏。世襲議員ではない叩き上げの首相として誕生した菅政権は、携帯料金の値下げ要請など一般受けする政策を行う一方で、学術会議の任命拒否や中小企業改革を断行した。映画では、石破茂氏、江田憲司氏らの政治家や元官僚、ジャーナリストや各界の専門家に話を聞き、菅義偉という人物について、そして菅政権が何を目指し、日本がどこへ向かうのかを語る。さらに菅首相のこれまでの国会答弁を徹底的に検証し、ポーカーフェイスの裏に隠された本心を探る。



1.菅義偉は「値下げの政治家」

菅氏は、「値下げの政治家」の異名をとるそうです。東京湾アクアラインの料金を値下げした実績があり、携帯電話料金の値下げに取り組んだのも記憶に新しいところです。また、ふるさと納税の創設に大きく関わったのも菅氏です。大衆受けする政治を好む傾向があるようです。

で、僕が映画を見た後に考えたのが、

 値下げ=値引き=ディスカウント→dis→ディスる

という、名付けて「菅義偉、値下げの方程式」です。


2.菅義偉は「値引き」の政治家

「値下げ」は、言い換えれば「値引き」になるかと思います。菅義偉は「値引きの政治家」でもあるのです。

ところで、心理学の理論のひとつ、交流分析(TA)の用語に「値引き」があります。自分の価値や、相手の価値や、場の価値や、コミュニケーション(ストローク)の価値などを、軽視する、あるいは無視する。意味としては、そんなところでしょうか。

この心理学用語の意味においても、彼は「値引きの政治家」なのです。彼はいろいろな値引きが得意です。自分を値引きし、他人を値引きし、国会を値引きし、答弁や報道記者への言葉を値引きし、コロナウイルスを値引きする。ですから、これほど彼のことを的確にディスっている表現は見当たらないかと思います。

3.必殺 ごはん論法

彼の値引き能力が如実に表れているのが、いわゆる「ごはん論法」です。「朝ごはんは食べたのか?」と聞かれて、「(朝食べたのはパンだったから)ごはんは食べていない。」と答えるヤツです。括弧内を省略してしまえば、質問に対して逆の答えをすることができます。後から「嘘じゃないか」ととがめられても、括弧内のことを説明して「だから嘘ではない」と正当化することもできます。もちろん誠実さのカケラもありません。自分の価値、相手の価値を値引きし、コミュニケーション自体を値引きするからこそできるワザです。

彼はこのワザを使って国会答弁を乗り切るのです。野党の厳しい追及にも耐えることができます。政治記者からの質問に答える際にもこのワザは有効です。相手は呆れ果て、言葉を失い、やがて諦めてしまいます。

そういう「ディスコミュニケーション」は、おそらく子どものころから得意(?)だったのでしょう。官房長官として安倍政権を支える際にもとても役にたちました。そして今、この必殺技をひっさげて(!)、総理大臣としての仕事をこなしているのです。何度も言いますが、誠実さはみじんもありませんよ。相手の価値を下げるだけでなく、自分の価値をも下げる。自分への評価を下げながら、「なぜあいつが?」と思われながらも、彼は政治の世界をうまく渡ってきたのです。

4.菅義偉はバクチ打ち(勝つとは言っていない)

彼にはバクチ打ちとしての側面がある、ということはこちらの記事にも書きました。

そして今日も彼はバクチを打ち、そしてまた負けようとしているのです。

5.官僚の値引き マスコミの値引き 有権者の値引き

そして、値引きはまるでコロナウイルスのように相手に感染します。彼を囲む官僚たちは、彼のことをいいと思っていなくても、彼に反発することなく彼の言いなりになります。自分の仕事能力を値引きしてしまっているのです。一部の官僚は反発しましたが、そういった官僚には彼は容赦なく圧力をかけて干してしまいます。

マスコミも重度の値引き患者です。甘いパンケーキでもてなしを受けた記者たちは、政権にとって甘い情報しか発しなくなります。体制にすり寄り反対することをしなくなるのです。やはりジャーナリストとしての能力を値引きしてしまっています。

そして値引きの影響は有権者にも及びます。政権を支持していなくても、有権者は「どうせ自分の力では政治を変えられない」と、政治に関わらなくなり、投票しなくなってしまいます。値引きによる「自分の生活は変えられない」という無力感にとらわれているのです。現状を変えて未来を切り開く自己の能力を値引きしてしまっているのです。

こうして菅政権は、無能だと思い込む官僚たちに支えられ、批判精神を忘れたマスコミに支えられ、有権者の低い投票率(!?)に支えられて、今日も生き延びているのです。

6.パンケーキの価値は?

映画タイトルにもなっているパンケーキは、甘くておいしいですが、中身はスカスカです。ほとんど糖質だけですからね。食べ過ぎると太りますし、依存症にもなります。パンケーキだけ食べていては、いつかは健康を損なって、深刻な状態になるでしょう。一度毒見をするとやめられなくなるかもしれません。

政治家は、官僚は、マスコミは、有権者は、そしてあなたは、パンケーキ依存から脱することができるでしょうか?

7.希望の光 ivote

この映画の最後にivoteという学生団体が登場します。「若者と政治のキョリを近づける」ことを目標として活動しているそうです。いつの時代も若者が希望の光なんですね。

果たして彼らはこの国の暗黒を照らして、幸せをつかむことができるでしょうか?そして没落してしまった我々に、再び夜明けのときはくるのでしょうか?


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