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新規事業推進室の担当者や役員こそ、多様な体験を~体験資産経営

最近、僕は企業の新規事業推進室、および事業部門で新規事業創出を担う担当者や責任者の方々とご一緒する機会が増えてきました。

新規事業創造の担当者や役員、および新規事業創造を支援する人たちこそ多様な体験をしたほうが良い。その思いと確信を綴ります。


1.固定的な景色や体験から新たな発想は生まれない

きっかけは僕の盟友、原田篤史さんの以下のツイートです。

この話、DXや変革とコンサルタントの関係だけではなく、新規事業創造と推進組織・支援組織の関係においても当てはまるでしょう。

世の中には従来の固定的な働き方にこだわったり、さまざまな体験をしようとしなかったり、さまざまな体験をした人の話に興味・関心を示さず(要は内向き)、他者の話を聴こうともしないモーレツ一辺倒な新規事業推進室の担当者・責任者や新規事業コンサルタントもいます。

僕は思うのです。
多様な行動パターン、多様なライフスタイル、多様な体験をしていない人たち、それらを否定する人たちに世の中を感動させるような新たな事業創造が期待できるのでしょうか? (いや、僕はそうは思わない(反語))

オフィスと自宅を往復するだけ、モーレツに仕事するだけ、同じ組織や業界の中の変わり映えしないメンバーだけで議論していて、新たな着眼点や発想が生まれるでしょうか。
自分たちとは異なる属性や行動パターンの人たちのペイン(痛み)や解決策を発想することができるでしょうか。

「まるで説得力がない」

僕はそう強く思うのです。

2.体験資産が組織のイノベーション基盤を創る

僕は最近、体験資産(経営)なるものを主張し始めています。
個々の多様な体験(フロー)を、組織の体験(ストック)に変えて課題解決力や価値創造力につなげよう。一言で言うとそのような考え方です。

体験資産(経営)

体験資産については以下の記事をご覧ください。

僕が体験資産を着想した当初、人的資本経営の文脈で意味づけしようと考えました。

有山徹さん(一般社団法人 プロティアン・キャリア協会 代表理事)、勝間亮さん(東三河スタートアップ推進協議会/スタートアップガレージ コミュニティマネージャ)ほか、何名かの有識者の皆さんから「むしろイノベーションや新規事業創造と関連付けたほうが良いのでは」とアドバイスをいただき、このブログ記事の発信にも至りました。ありがとうございます。

体験資産はイノベーションマネジメントのエンジン

3.経営陣のマインドシフトも新規事業推進の役割

一方で、新規事業推進の現場の人たち(担当者や担当役員)は体験の多様性やチャレンジの重要性は分かっているが、他の役員などの周りがわからずやで困る。そんな叫びも日々聞こえてきます。

・「目先の成果につながらないから」と却下される
・既存事業の売り上げや利益にどうつながるのかの説明を求められまくる

多様な体験やチャレンジを阻む、役員たちの「あるある」行動

「それを想像したり、一緒に考えたり、道筋を整えるのが役員の仕事でしょ、どあほう」「そもそも「新規」の勝ちパターンを考えるのに、なぜ既存事業との接続にそこまで固執する?」とも言いたくなりますが、そこはグッと堪えつつ(堪えずに誰か言ってやった方が良いかもしれませんが(苦笑))。

もちろん、新たな体験やチャレンジにブレーキを踏みたくなる経営陣の気持ちも分かります。

・株主や投資家に説明しにくい
・失敗したくない
・既存事業の成功体験から脱却できない
・そもそもイメージがわかない。だから反対/否定する

しかしながら、今までとは異なる「新たな勝ちパターン」を生み育てることこそが新規事業やDXの意義です。従来の行動パターンや組織文化さえも変革する覚悟がなければ、なおかつ中長期的な視点で体験や着眼点を変化させながらトライ&ラーンを繰り返すマネジメントに舵きりしていかなければ、新規事業創造もDXも絵に描いた餅一夜限りの打ち上げ花火にしかならないでしょう。

組織として体験資産の形成に投資及び評価することが、イノベーションの基盤を育てる。その合意形成を社内および社会でしやすくするためにも、僕は体験資産(経営)の概念をフレームワーク化し、社会に実装していきたいと思っています。

なんて言いましょうか、目先の成果しか見ようとしない周囲の人たちを説得するための無駄なコミュニケーションコストや労力を下げたい内向きな調整や説明で、新規事業創造担当者が疲弊する景色を解消したいです。

また、体験資産の種類が偏っているか乏しい経営陣や意思決定層の想像力の欠如がイノベーションを阻害している訳で、経営陣や意思決定層の多様な体験を促すためにも(なおかつ体験資産に乏しい人たちを役員や意思決定層に登用しない世論形成をするためにも)、体験資産の考え方を組織のマネジメントにインストールしたいです。
(体験すれば分かる/感じとれるものごとを、言い訳をして体験しなかったり、体験した人の話を聴かなかったり、挙句「俺の分かるように説明しろ!」とだけ恫喝するような役員や部門長は組織のコミュニケーションコストでしかないですから。退いていただくか、アップデート願うほかないでしょう)

自組織や自業界などに体験資産経営を実装したいと思った方、一緒にやりましょう。

4.目先×成果に毒されすぎた組織体質のアップデートを

最近、僕が講演などで良く使用するマトリクスを貼っておきます。第I象限一辺倒のマネジメントではダメ。第II象限、第IV象限を育てて、第III象限に至る。そのプロセスとマネジメントを創っていかないことには、組織はいつまでたっても新規事業創造体質、DX体質になれないでしょう。
(ディスカッションされたい方は『組織変革Lab』にお越しになるか、講演依頼ください)

皆さん、第I象限、すなわち目先の成果だけを出させる/評価するマネジメントやカルチャーに毒されすぎていませんか?

成果と変化の4象限

そもそも、目先の成果しか評価されず、中長期的な変化や成果を生みうる取り組みには興味・関心を持たない、投資も評価もなされない。そのような近視眼的な野暮い組織に、イノベーティブな人、思いある人がモチベートされるでしょうか? 

目先の成果しか見ようとしない組織は、文化度が低い
新規事業創造体質、イノベーション体質、DX体質になっていくためには、私たちは組織や地域の文化度を高めていかなければなりません。
(組織文化に関する書籍は現在鋭意執筆中です。2024年7月頃にお目にかけられる予定です)

北欧などではリフレッシュすることも仕事のうち(高い生産性や発想、集中力を発揮するために必須の行動)ととらえ、業務時間にリフレッシュを取り入れたり、業務時間そのものを長くしない取り組みも行われています。

以下の図の「7」も仕事のうち、中長期的に良いパフォーマンスを出すためのエンジン。その認識を日本でも高めていきましょう。
(僕たちが展開する組織開発も、北欧流のマネジメントやカルチャーに倣っています)

はたらき方のダイバーシティ(『組織変革Lab』講演スライドより)

5.組織の文化度を上げていくために

組織の文化度を上げ、目先の成果のみならず中長期的な変化や成果を生む体質に変わっていくためにはどうしたら良いか? 新規事業が持続的に生まれかつ育つカルチャーを育むにはどうしたら良いか? 
僕は、以下の5つの行動を提唱します。

(1)他者への興味・関心を持ち(越境)
(2)他者の話を聴き(対話)
(3)自己開示をし(対話)
(4)自組織にない新たな着眼点や発想を取り入れ(共創)
(5)他者を信じて任せるマネジメントをする(エンパワーメント)(共創)

そのために何より大事なのは、

まず余白を創る。

余白がなければ、多様な対話も体験をする余裕も生まれません。
そうして目先の仕事で手一杯になり、「この人たちに新規事業創造なんて任せられる気がしない」と思わせてしまう。
その負のスパイラルから脱しましょう。

余白を創る。
そのためには、今までの仕事の仕方、仕事そのもの、マネジメントの仕方、組織のあり方などを振り返り、やめること(慣習も)を決める。もちろん、経営陣を含むマネジメント層のマネジメント能力(というよりマインド)のアップデートも肝です。

今までの話を図にしました↓

健全な組織のバリューサイクル

これらを有機的に機能させるためには、新規事業開発だけをやっていては不十分で、人材開発はもちろん、組織開発も回していかないとうまくいかないのです。本気で新規事業創造に取り組むなら、組織開発にもきちんと投資しましょう。

組織を健全にアップデートし続けるための3つの開発

新規事業推進を担当する(および企業の新規事業創造を支援する)皆さん、あなたの組織を新規事業創造体質に変えるべく、「組織開発」および「体験資産経営」の考え方をインストールしませんか? 目先の成果一辺倒のマネジメントに警鐘を鳴らし、余白を生みつつ「中長期の変化」を育てるマネジメントやカルチャーに対する合意形成を進めませんか? 健全な組織のバリューサイクルを機能させるべく、バリューサイクル・マネジメントを回し始めませんか?

思いある仲間たちと越境・共創で、日本の組織のカルチャーを変えましょう!

沢渡が個人的に注力していきたい3つのテーマ

6.参考書籍・プログラム

▼『バリューサイクル・マネジメント』を組織にインストールするためのプログラム

▼講演や顧問のご依頼などはこちらからお願いします