見出し画像

空白小説大賞「#吾輩は猫であるで始まり名前はまだないで終わる物語 」 投稿作一覧 +α

空白小説大賞

「吾輩は猫である」と「名前はまだない」の間の空白を埋めて掌編小説を作ろうというコンテストに参加しました。概要は下記。

これは自分の得意な分野だと考えたこと、かなり自由ではあるものの掌編では特に重要な「落とし方」についてどうしても発想が限定されてくること、この二点から「先手必勝」なタイプのコンテストと判断。集中してアイデア出しをし、最終的には14作を投稿しました。
自分としてはなかなか面白いものが揃えられたと満足しています。
なお、作ってみたものの、投稿するのはやめておこうと判断した幻の1作も実はありまして、それについても最後に取り上げます。

投稿した自作一覧

No.1

「自由な猫として」

最初にパッと思いついたアイデア。絶対に被るだろうから早く書いて出しちゃえとパパッと投稿したら、そもそも例題と被り気味だったという。
ベタなネタだけど、ベタゆえにギャップを出そうと、全体的に格調高めな感じを意識しました。

No.2

「フリップ芸」

アイデア出しをしていたら、「吾輩は猫である」のもじりフレーズも副産物的に多数出てきたため、せっかくだから活用しようというネタ。
はじめはバカリズムの「トツギーノ」みたいにフレーズだけガンガン並べていこうかなと思ったのだけど、そこまで数を揃えられなかったのと、ひとことコメント付けたほうが緩急が付いて面白くなるかなーと考え、この形に。「うっせえわ」を入れたかっただけ、という噂もある。

No.3

「猫、復活①」

個体が一体だけなら名前は不要だよね、というところから作ったSF。「新型ネコロニャーウイルス」は、構想だけ練ってお蔵入りした別の話から、せっかく思いついたフレーズだけ勿体ないなーとサルベージしてきたもの。

No.4

「猫、復活②」

これも未来に猫という種族を復活させる話。筋は一緒だけど、差別化を図るためにも、さらっと火星に移住したことになっています。
こちらの落とし方のほうが、題材である漱石をリスペクトした感があって、気が利いているんじゃないかなと。

No.5

「パパと息子」

「飼い主の名前のほうが『まだない』というのはどうだろう」という思い付きから、ここらでシリアスな話も書いておこうという動機と合わさり、戦争孤児を育てる猫、という話に落ち着いた。「吾輩」という一人称は、気取った感じがツンデレ的なギャップを醸すのに相性がいいなあと。なかなかこういうお題でないと活用する場面はないんですけれども。

No.6

「猫は見ていた」

このコンテスト形式で「推理小説」を書こうとする人は他にいないんじゃないか、書いたら目立てるのでは、という不純な動機から考えてみた話。結果的には推理小説と言うより昼ドラかサスペンスになったけど、まあそれはそれで。

No.7

「再考されたし」

十二支に猫がいないネタは絶対に、星座に猫がいないネタ(※「やまねこ座」ならある)はもしかしたら、そのうち誰か出すだろう。そう考えて、せっかくなのでハイブリッド版にしてみました。
流れとしてはやや強引だけど、まあ寓話として許容範囲かなというのと、たぶん初見ではほとんど誰もミスリードだと気が付かないだろうというくらい、仕掛けがしやすかったです。

No.8

「殺し屋・黒猫」

コードネームが猫、というのもおそらく多数書かれるだろうと見越し、差別化を図るためにひっくり返しまくってみたもの。ひとつひとつはありがちなのだけど、組み合わせるとテンポもいいし読みごたえにもなるし、話の完成度で言うとこれが一番高いのではないでしょうか。

No.9

「ネコ科」

拗ねちゃって可愛さアピールをするライオンの話。話自体はそこまで捻ったものじゃないくてクスッとしてもらえればくらいのお話ですが、一人称「吾輩」なのがライオンと合ってるし、外連味があって楽しい。

No.10

「隠された名前」

決まっている最後の一文だけど、『。』か『」』かを選ぶくらいのために与えられた一文字分自由に入力できるスペースに、他の何かを入れられないか……あれこれ考えた結果、当初のアイデア出しでネタのひとつとしてメモしておいた「縦読み」要素を組み合わせようという試みに。
しかし、いばらの道でした。なかなかうまいこと組み立てられない。仕方ないので、じっくり時間をかけて構成と言葉と文章を選んでいき、二週間くらいかけて構築していきました。今回一番の労作。

No.11

「殉死」

「シリアスな話をもうひとつくらい書こう」と「『初期化orリセット』による『名前はまだない』」といいうアイデアを組み合わせたもの。できるだけデータを失うこと=バッドエンドという印象にならないように気をつけました。失わない奇跡が起こるよりも、意志をもってして失うことが美しいということもあると思うので。
一か所誤字があるけど、これ直すの大変なんだよなあ。そのうち差し替えなければ。

No12

「漱石マッシュアップ」

夏目漱石の著作から、一作ごとにワンフレーズを抜き出して組み立てた、言うなれば「コラージュ小説」。これも、できるだけ印象深いフレーズを抜き出してくるのと組み合わせるのが大変でした。だいぶ時間かかった。
主だった著作は網羅できたはず。あと「月がきれいですね」も入れたかったけど断念。

No.13

「山月記マッシュアップ」

こちらはNo.9のライオンとやや被りつつの中島敦「山月記」の文章を再構成したマッシュアップ。これは一作だけなので構築していくのはそこまで大変じゃなかったんですけど、これだとほぼ要約なので、『猫じゃらし』みたいな遊び心をもう少し入れたかったなと。

No.14

「田舎っぺ探偵」

なまっている、というしょーもないオチ。でもオチありきで登場させたとはいえ「田舎っぺ探偵」はだいぶキャラが強くて、本当に書いてもちょっと面白そう。いや書かないけども。

欠番

猫に名前は付いており、「その名前よりふさわしい名前は(他に)まだない」的なオチはどうだろう、というアイデアを思いついたのだけど、考えれば考えるほど、BUMP OF CHICKENの「K」を超える「ふさわしい猫の名前」なんて思いつかないな、ってところに落ち着いてしまいまして。

なので、No.12・No13のように、空白小説フォーマットで歌詞マッシュアップで書いてみて、一応、完成はしたのです。ただ、投稿するには少々ためらいが。
自分としてはリスペクト以外の何物でもないし、「ふさわしい名前はない」オチも面白いと思う、けど、やっぱり著作権のあるものだし、公開するのはリスクがあるよなあと。コンテストには投稿しないで終わったら出そうかなとも考えたのだけど、こうやって経過を書けばどんなものかは実物を出さなくてもだいたい察してもらえると思われるので、公開はしないことにしました。

とにかく、伝えたいのは、「K」は(多感な時期に聴いて衝撃を受けた、ってひいき目はあるにしろ)今聴いても名曲だなあということだけです。

そんなわけで、14作+αの紹介でした。
読んでいただいた方、どうもありがとうございます。あなたのお気に入りはどれですか?


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?