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「なにもしないこと」をする

息子(5歳)は「クマのプーさん」が大好きで、何回も何回も繰り返しよく観ています。私は正直、そんなに興味は無く、ディズニーの黄色いクマのキャラクター。はちみつ好き。程度の知識しか無かったのだけれど、息子と一緒に繰り返し観ていたら、私も大好きになりました。プーさんは、クリストファー・ロビンという息子ぐらいの年齢の男の子の空想の物語なのかなぁ。と息子と一緒になって観ていて初めてw知りました。

かなりクセが強い100エーカーの森の仲間達と繰り広げる、なんて事のない毎日を描いたアニメなのですが、なんて事のない毎日の奥深さが、何度も繰り返し観ているとじわじわきます。観てる人に与える余白の幅が広いのか、色々な受け止め方が出来て、息子と色々なシーンについて話していると「え?そんな風にみていたの?」とか「そこ笑えるツボなの?」とかあって面白いです。息子と私で好きなシーンも違えば見解も全く違います。

私が一番すきなシーンは、クライマックスです。

クリストファー・ロビンが成長して、(多分)学校へ通いだすため、100エーカーの仲間達とお別れしなくてはいけない時が来た時の、プーとクリストファー・ロビンの会話です。

「ぼくがいちばんしたいことは、なにもしないことなんだ」
「なにもしないことをどうやってするの?」プーは聞きました。
「うんとね、出かけて行くときに『クリストファー・ロビン、きみはなにをしにいくんだい?』と聞かれるとするでしょ。そのときに『なんにも』ってこたえて、なにもしないことをしにいくことだよ」
「あぁ。そうか」とプーは言いました。
「ぼくたちがいましているような、なにもしないこと、ってわけさ」
「あぁ。そうか」プーはまたそう言いました。
「つまりね、出かけて行って、きこえない音をきいて、それで、くよくよ考えこんだりしないってことさ」

この、「なにもしないこと」をする。という言葉がすごく好きです。大人になると「なにもしないこと」をするってすごく難しい事だなぁ。と感じます。よく分からない必要に迫られて「何かをしなくちゃ生きていけない」と感じるぐらい脅迫概念をわたしは持ってます。何かをして生活していないと不安だし「なにもしないこと」の穴にストンと落ちるのが怖いとも感じます。どうして怖いし不安だと感じるかはよくわかりません。あとは、もう「なにもしないこと」がつまらなすぎて耐えられないかもしれません。


そう考えると、わたしは「なにもしないこと」ができない大人になっちゃったな。と感じます。毎日の生活をどうにか継続していく。暮らしを平凡に営んでいく事が大事なんだ。と思ったとき、しみじみ、この作品に哀愁とか郷愁みたいなものを感じてしまって胸が詰まります。余白が沢山あったキャンバスが段々、色に埋められていって、何度も何度も絵の具で色を塗り重ねていく。そんな毎日を送っているなぁ。と感じます。

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