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黒心

ときどき 人を殺す
頭の中で 人を殺す

夏は 人を殺すには
ふさわしい季節
腕に吸いついてくる蚊を
安易に退治するみたく
その勢いのままに
軽々しく 人を殺す

たいがい イスを振りかぶって
そいつの頭に 叩きつける
そいつは それきり 動かなくなる

横からいくときもある
そいつの頭を 横から イスで

そいつは
体ごと 持っていかれるときもある
頭だけが もげるときもある
頭だけ なんていうのは
数えるほどしかないのだけど

イスの薄い背のとこで
そいつの首を 後ろから
ゴスッ 突くこともある
距離を 十分に取って
助走をつけて

そうすると そいつは
テーブルに 突っ伏すことになる
目の前に 後頭部をさらされ
イスを振り下ろさないわけには いかなくなる
そうやって わざわざ
手間をかけさせてくるから
あんまり やらなくなった

ホームセンターで刃物を購入して とか
どこかから拳銃を入手して とか
飲みものに毒物を入れちゃって とか
殺し屋に依頼して とか
そういったのが まったくなくて
座っていたイスを 両手で 強く 握りしめて
というのが たいがいのお決まり

自覚になかったのだけど
わたしってば 案外 短絡的なのね

だから そいつに イスを振り下ろして
そいつの動きが止まって
わたしは その先に
まったく 進めなくなる

精々 そいつの頭を踏みつけて
あーあ イスが傷ついちゃったなあ
もう座れないじゃん
なんて 口にするくらい

夜 暗い中 人を殺すと
ビクッ となって
グワッ となって
お布団から
飛び起きそうになる

だから 人を殺すんなら 授業中
つまんない話になったとき
窓の外を眺めながら
まったく いい天気だなあ
なんて表情で
軽々しく 人を殺す

あれだけ 殺してあげてるのに
アイツは わたしに対して
相変わらずな態度

あれだけ 頭の中で 殺してあげてるんだ
そろそろ 現実でも 実行できるかな

あれだけ 頭の中で 殺してるんだ
きっと 大丈夫だよね

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